《ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく》449話「戦力増強と下僕化」

「ご主人様。ご主人様にお願いしたきことがございます」

「なんだ」

俺の前に立ち塞がったエルダークイーンアルラウネが、改まった態度でそう告げてくる。何か嫌な予がしたが、彼の口から出てきた言葉は意外なものだった。

「私に名前を付けてくださいませ」

「名前?」

そう言われて、改めて思い返すと今まで呼んでいた【アルラウネ】という呼び方は、固有名詞というよりかは人間界で呼ばれている通り名的なものであるということに思い至った。それと同じく【オクトパス】も【マンティコア】も同じようなものではあるが、この二の場合個の絶対數がないため、今まで固有の呼び方をしなくてもり立っていた。

だが、アルラウネという呼び方だと彼以外にもアルラウネというモンスターがいる以上、呼び方としてはややこしい。まあ、俺がアルラウネと呼ぶアルラウネは彼だけなのだが……。

信賞必罰という言葉に従うのならば、今まで頑張ってきた三には何かしらの褒を與えねばならないだろう。それが名付けであるならば、安いものである。

「ならば、今日からお前はマンドラとする」

「あ、ありがたき幸せでございます! このマンドラより一層ご主人様のために盡くす所存にございます!! ……ふっ」

「ちぃ」

俺が名前を付けると、優雅に一禮をする。頭を上げると、何やら含みのある笑いをイリネベラに向けており、それを見たイリネベラが悔しそうな舌打ちをしている。何となくどういったやり取りがあったのかは予想できるが、あまり首を突っ込んでも実りのないことだと判斷し、特に言及は避けた。

ちなみに、マンドラの名前の元にしたのは【マンドラゴラ】という言葉で、前世の記憶が正しければ、マンドラゴラという言葉をドイツ語に翻訳したものがアルラウネだったからである。

それから、マンティコアとオクトパスも同様に何か褒を與える運びとなったが、マンドラと同じく名前がしいということであったため、マンティコアにはライオンを元にした【レオ】という名を、オクトパスにはクラーケンを元にした【クラーク】という名前をそれぞれ與えた。

「うっ!」

「こ、これは!」

「な、なんと!」

「どうしたっ!?」

異世界ファンタジーものの語においてモンスターを使役する際、名付けというものは特別なものであることが多い。そして、この世界においてもその法則は適用されるらしく、今まで名前を付けていなかったが、名前をもらったことで召喚獣たちが強化されたようだ。

調べてみると、平均パラメータがSSC-辺りだったのだが、先ほどの名付けによってSSS-にまで能力が跳ね上がった様子だ。俺の今のパラメータがオールSSS+であることを考えればかなりの強化となる。

「どうやら、名前を付けたことで強化されたみたいだな」

「そのようですね」

「ご主人様ぁ~、ズルいですよ! 私も名前を付けてください!!」

「でも、お前には既にイリネベラという名前があるじゃないか? お前の名前は【イリネベラ】だ」

「ハッハァ~、來ました來ました來ましたよぉ~!!」

他の召喚獣たちが強化したことに抗議するイリネベラだったが、俺が改めて彼の名を宣言したことで、それが名付け判定として承認されたらしく、イリネベラも強化された。元々、潛在能力があったのか、パラメータ上限突破のスキルレベルが上昇し、レオたちと同じくSSSクラスの能力を得ることができたようだ。

「くっ、これでは能力差がないじゃない」

「アンタだけ抜け駆けしようたって、そうはいかないんだから」

まるで宿命のライバルが如くいがみ合うイリネベラとマンドラに対し、突然の能力変化に前足を振ったり手をかしたりしての狀態をチェックするレオとクラークという実に対照的な構図ができあがってしまう。

思いがけないサプライズだったが、戦力強化ができたと考えれば、決して悪いことではないので、特に気にすることなく予定通りイリネベラを伴って窟へと向かうことにした。

窟に辿り著くと、そこにはぽっかりと大きなの開いたり口があり、まるで巨大なモンスターが口を開けているかのような見た目をしていた。

「よし、行くぞ」

「はいっ」

俺の聲にイリネベラが嬉しそうに答える。何をそんなに喜んでいるのかは謎だが、特に余計なこともしていないので、黙ってに侵する。は意外にも明るく、おそらくはに自生している苔のようなものがを放っているらしく、それが松明代わりとして機能している様子だった。

そのまま進んで行くと、ゾンビやスケルトンなどのモンスターがちらほらと徘徊しており、こちらに気付いた様子だったが、レオたちとの話し合いがついているようで、俺たちを襲ってくることはなかった。

そのまま道なりに進んで行くと、一際大きな空をしたエリアが目に飛び込んでくる。そこには、さらに多くのアンデッド系モンスターが徘徊しており、さらにその最深部には巖でできた玉座に腳を組んで座っている人がいた。そのは青白くとても普通の人間ではないことは明白だ。

「貴様が、あのマンティコアが言っていた人間か。我が縄張りに何の用だ」

「新しく仲間になったイリネベラだ。今日はこいつの紹介に來た」

「初めまして、そしてさようなら」

「っ!? ちぃ」

すぐさま相手のことを解析すると【アークヴァンパイア】というヴァンパイア族の上位種だということがわかった。能力自はSランク相當ということもあり、強化される以前の召喚獣たちよりも數段劣るものの、持っているスキルが軒並み上位スキルであるため、それを駆使すれば勝てないまでも逃げることくらいはできるほどの能力を有していた。

俺とイリネベラは事前に打ち合わせをして、窟を支配しているというモンスターを彼の配下にできないか話し合った。その時のイリネベラが「まあ、なんとかしますよ~」という軽いものであったため、何か明確な自信でもあるのだろうかと彼の言を止めはしなかった。だが、俺が彼を紹介した瞬間、まさかの相手に向かって襲い掛かっていった。

突然居を突かれた形となったアークヴァンパイアだったが、イリネベラの攻撃を紙一重で躱し、臨戦態勢を取る。だが、圧倒的能力差によって再び懐にられたアークヴァンパイアになすすべなどなく、イリネベラの幻攻撃にすぐさま陥落してしまった。

「あなた様に忠誠を誓います。誓いますので、どうか……どうかそのしいおみ足で、この卑しい私めを踏みつけてくださいませ!!」

「いい子ね~。素直な子は好きよ~。じゃあ、素直になったご褒に。おみ通り褒を與えてあ・げ・る」

「あはっ~、あ、ありがとう、ござ、いま、すぅ~!!」

イリネベラの幻によって、完全に下僕化してしまったアークヴァンパイアと彼のやり取りを見せられてしまったが、予定通り窟を支配していたモンスターを彼の支配下に置くことに功する。

そのあと、にある鉱石を採掘する仕事をイリネベラに指示を出すと、俺は一度ティタンザニアの屋敷へと瞬間移した。

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