《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》

気がつけば、さっきから沙先輩がチラチラとこちらを見ている。

まるで僕の様子を伺っているかのように。

なにかあったのかな?

もしかして、不相応な格好だったとか?

デート用とはいかないけれど、沙先輩と買いに行くためにそれなりの服裝で來たんだけどな。

だからといって僕から訊くのは、ちょっと気が引けるし……。

そんなことを考えていると、沙先輩の方から口を開いた。

「ねぇ、楓君」

「なに?」

この瞬間、ドキリとしてしまう。

沙先輩になにか失禮なことをしてしまったんじゃないかという気持ちになったからだ。

もしかしてこの服裝は不相応だったとか。

「今日のことなんだけど……。香奈ちゃんから何か言われなかった?」

沙先輩は、なぜか恐る恐るといったじでそう訊いてきた。

途端、僕が抱いていた張が解れる。

僕の服裝のことじゃなかったのかという安堵でいっぱいになった。

それにしても香奈姉ちゃんから何か言われたりって……。

特になにもなかったような。

僕は平靜を裝い、微笑を浮かべて言う。

「別に何も言われてないけど」

「そっか。それならいいんだ」

沙先輩は、努めて笑顔でそう返す。

これは、あきらかに何かあった顔だ。

沙先輩は? 何か言われたりしたの?」

もしかしてメールで何かのやりとりでもやったのかな。

「別に何も…て、言っても、絶対信じないよね?」

沙先輩のその顔を見たら……。何もなかったようには……」

正直、沙先輩のその何かを誤魔化すような笑顔を見たら、とても何もなかったようには見えない。

香奈姉ちゃんのことだ。メールで沙先輩に何か言ったに違いない。

こんな極端な沙先輩を見るのは初めてだ。

これじゃ、いつもの沙先輩じゃない。

「やっぱり楓君には、わかっちゃうか……。ダメだな。私って──」

「香奈姉ちゃんは、なんて言ってたの?」

「う~ん。大した事は言われてないような気がするけど…なんとなく手を出すな的なことが書かれていたような」

そう言って沙先輩は、自のスマホを見せてくる。

容を見るつもりはなかったが、見せてくる以上、見なきゃいけないだろう。

香奈姉ちゃんが沙先輩に送ったメールは、どんな容なのかな。

人様のスマホを見るのは、かなり気が引けるけど……。

『デートだからって、弟くんに変なことをしたらダメだよ』

容を確認するに、なんとなく察してしまう。

これはあきらかに沙先輩に対して注意をしている。

読まなきゃよかったかな。これって──

でも沙先輩が見せてきたのだから、どうにもならないか。

「うん……。これはあきらかにそうだよね」

さすがの僕もそう解釈するしかなかった。

沙先輩が、僕に対してなにかをするようには見えないんだけど。

「そうだよね? 香奈ちゃんだけ楓君とイチャイチャしまくっててずるいっていうか……。しは私のことも考えてほしいよね!」

「あー、うん。そうだね。でも沙先輩なら安心かな」

「安心なんだ? そっか。それならこうしても許してくれるよね」

沙先輩は、そう言うと僕の腕を摑み、そのまま引っ張って歩いていく。

その顔を見る限りでは、上機嫌な様子だ。

「あ……。ちょっと……」

さすがに強引かなって思い、僕はそう言ってしまう。

別に嫌というわけではない。きっと──

やはりと言うべきか、沙先輩は不服そうな表になる。

「なに? 私だって1人のの子なんだから、このくらいは良いでしょ?」

「うん。いいけど……」

僕は、不承不承そう答える。

それを不思議に思ったのか、沙先輩は思案げな顔をしていた。

「なにかあったの?」

「ううん。別に……。いきなりだったから、ちょっとびっくりしただけ……。もう大丈夫だよ」

僕がそう言うと、沙先輩はギュッと僕の腕にしがみついてくる。

「それならいいけど……。遠慮なんかしちゃダメだからね。今日は私とのデートなんだから、たくさん楽しもうよ」

そうしてくるあたり、なんだかとても嬉しそうだ。

「デートなの? 僕はてっきり、普通に買いに行くもんだと思って普段著で來たんだけど──」

僕自、ホントにデートだと思ってなかったので普段著よりもちょっとお灑落なくらいの服裝で來たのだが……。

沙先輩の態度を見る限りでは、僕の服裝などはまったく気にならないみたいだ。

「なによそれ? 私とのデートはお斷りって言いたいの?」

「そんなことは……。沙先輩はいいのかなって……。僕なんかとデートっていうのは──」

「大丈夫だよ。むしろ楓君とのデートは嬉しいくらいだよ。楓君は、とってもかっこいいから──」

そこでフォローをれられてもな。

沙先輩の服裝を見たら、普段とはあきらかに違うもので來ているのに気付かされる。

いつもの活発な印象の服裝とは違い、の子らしい服裝だった。

沙先輩がミニスカートを穿いているのは、ちょっとレアだ。しかし──

「そうなのかな。僕には全然わからないや」

僕は、いかにも困った様子を面に出してそう言った。

あまり、そんなところをジロジロ見るのはマナー違反だろう。

しかし微風で揺らいでいるスカートは、もうしで中が見えてしまいそうだ。

「だからの子に聲をかけられちゃうんだぞ。そこは、気をつけないと」

「う、うん。気をつけてはいるんだけど……。の人って、よくわからなくて」

そういえば、前にたちから聲をかけられたことがあったな。

その時は香奈姉ちゃんがその場にいたからスルーできたんだけど。

いなかったら、さらに言い寄られていたかもしれない。

たぶん斷ってはいたと思うけど。やっぱりの人って怖いな。

僕の場合は、このままの方がいいんだろうか。

「わからなくていいよ。楓君は、そのままが一番だから」

沙先輩はそう言って、僕のことをグイグイと引っ張っていく。

今は沙先輩がいるから、なんの心配もしてないが。

これじゃ、1人で街を歩くなんてことはできそうもない。

とりあえず今は、沙先輩の買いに付き合ってあげよう。

約束してた事とはいえ、やっぱりこうして一緒に歩いていると、デートに見えなくもない。

僕的には、香奈姉ちゃんの友達の買いに付き合ってあげてるだけなんだけど。

こうして見ると、沙先輩も充分に可い。

だからこそなのか遠巻きにして見てる男の人たちの視線が痛いわけで──

「どうしたの? 私の顔になにかついてる?」

沙先輩は、思案げな様子でそう訊いてくる。

どうやら僕は沙先輩の顔をガン見してたみたいだ。

僕は、慌てて沙先輩から視線を逸らす。

「ううん、なんでもない」

「ふ~ん。そっか。まぁ、そういうことにしといてあげるよ」

沙先輩はなにかを察したのかそう言った。

でも僕の腕にはしがみついたままだ。

離すつもりはないらしい。

香奈姉ちゃんが見たら、絶対に怒るようなシチュエーションだ。

どこかで見ていませんように──って、祈るばかりである。

    人が読んでいる<僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください