《不死の子供たち【書籍販売中】》642 前哨基地
地上の発掘現場まで行き、必要な資を手したあと、地下に戻って前哨基地の設営に取り掛かる。ある程度、區畫の安全が確保されていたので今回はジュジュたちも同行することになった。もちろん、暗闇で迷子になってしまわないように、すべての個に位置報が把握できるタグがり付けられることになった。
それに加え、ハクの糸で繋がれることになり、勝手に遠くに行ってしまわないように対策が取られた。カグヤの偵察ドローンも監視に當たるので、余程のことがない限り、ジュジュたちと離れ離れになってしまうことはないだろう。
そこまで気を使わなければいけないのなら、ジュジュたちを連れていかなければいいとも思うかもしれないが、ハクの周りで楽しそうに遊んでいる姿を見てしまうと、どうしてもが湧いてしまうのかもしれない。いずれにせよ、ジュジュたちが危険な目に遭わないように注意しなければいけないだろう。
アタッシュケースのようにも見える攜行型の〈鋼材製造機〉は、手軽に持ち運べるようになっているので、そのまま前哨基地まで運び、バリケードフェンスの作製に使用することになった。材料になるのは、ムスカの変異から回収していた未知の鉱だ。
裝置を起させると、素材の挿口から謎めいた青いが発生するのが見えた。フェンスの材料となる球狀のを所定の位置にセットすると、青いが照され、未知のエネルギーによって生鉱が徐々に融解していくのが見えた。ソレは見る見るうちに金屬のような質に変わり、裝置に取り込まれていくのが見えた。
ホログラムで投影されていたディスプレイに、カグヤが力した報が表示されると、裝置の部で未知の合金が生されていく。その合金は生鉱の特異な質をけ継ぎつつ、人間の技によって強化され、我々が慣れ親しんでいる〈舊文明の鋼材〉に変化していく。
その工程には謎が多く、部機構が完全にブラックボックス化されているため、まだ解明されていないこともあった。
というより、なにも分かっていない。とにかく、生鉱の融解によって製造される合金は、異常な度を持ちながら剛を備え、驚異的なほど軽い素材でもあった。これは通常の金屬加工技では製造不可能な素材とされ、小さな生鉱から得られる鋼材も膨大な量になる。
その鋼材の準備ができると、裝置が変形して展開したプリンターヘッドが(なめ)らかにきながら、巧なパターンでバリケードフェンスを出力していくのが確認できた。それはしずつ形されながら、完璧な形に整えられていく。
赤熱していた合金は徐々に鮮やかな赤から深い紺に変わり、照明をけて輝くように見えた。鋼材のしさに目を奪われながらも、フェンスの強度を確かめていく。これが前哨基地における防衛手段になるので、気を抜くことなく検査する必要があった。
ジュジュたちも見よう見まねで検査を手伝ってくれたが、自分たちが何をしていたのかも分かっていなかったと思う。
それが終わると、輸送機で運んできてもらっていたセントリーガンを設置しにいく。カグヤがシミュレーションしてくれた報をもとに、敵生の侵経路を確認して、倒壊していた瓦礫(がれき)に飛び乗ると〈収納空間〉から取り出したセントリーガンを設置していく。
ソレは腰ほどの高さがあり、複數の銃がついた回転式のガトリングガンとも形容できる外見をしている。舊文明の軽くて度のある薄い裝甲に覆(おお)われているが、攻撃されることを想定していないので、それは最低限のモノだった。
裝置の上部には検知機能を備えた円盤型のレーダーが取り付けられていて、部に高度なセンサアレイを搭載していた。それはゆっくりと回転しながら、接近するモノのきを正確に捉(とら)える役割を果たしている。
セントリーガンは高度な知能回路を備えており、人工知能による自律的な運用が可能だった。接近する敵生のきを分析し、適切な対応方法を選択する能力がある。そのため、脅威をいち早く察知して迎撃を行うことができる。結果的に前哨基地を守るだけでなく、敵を迅速かつ効率的に撃退する能力が備わっているのだ。
またセントリーガンには、レーザーを出するためエネルギーパックが備えられていて、弾倉が空になっても攻撃を続けることが可能になっていた。ソレは裝置の背面に取り付けられていて、いつでも簡単に充電、あるいは裝填できるようになっていた。
そのエネルギーパックは〈超小型核融合電池〉を蔵したモノなので、手も高く、コストを気にせず使用できることも利點だった。
安定した撃を可能にするため、銃架(じゅうか)から頑丈な杭が地面に打ち込まれ、セントリーガンがしっかりと固定される。それを確認したあと、作畫面に表示されたインターフェースを使ってシステムを起する。
『まずは初期化して――』と、カグヤの聲が耳に聞こえる。『それから私たちの生報を登録して標的から除外。ヨルの報も登録しておくね。これで彼が攻撃されることはなくなる』
ジャンナを含め発掘調査隊の人間も登録されるので、攻撃対象になるのは人擬きやムスカといった人間の脅威になる生だけになる。
システムを設定してくれたカグヤに謝したあと、機械人形に集めてもらっていた死骸を焼卻しに行く。さすがにジュジュたちを連れていくのは危険だったので、ハクと一緒に前哨基地で待ってもらうことにした。
暗闇のなか、高く積み上げられていた骨の山が見えてくると、アサルトロイドたちが一箇所に集めてくれていた人擬きの死骸を焼卻する準備を進める。焼夷手榴弾を使うことも考えたが、積み上げられたグロテスクな死骸を見て、いつものように火炎放で焼卻することに決めた。
ライフルから青い炎が放され、人擬きの死骸――というより、殘骸は瞬く間に炎に包まれ燃え上がる。黒煙が立ち昇り深い闇のなかに消えていく。建に潛む他の人擬きの餌にならないように、時間をかけてじっくりと焼卻していく。
ひどい悪臭が立ち込めているのだろう。拡張現実で無數の警告が表示されるが、ハガネのマスクを裝著していたので気にすることなく作業を続ける。
焼卻がひと段落つくと、作業を手伝ってくれたアサルトロイドたちに謝して、それから前哨基地の警備を頼むことにした。區畫全を警備できれば良かったのだが、広大な領域をカバーできるだけの數が揃っていないので、前哨基地周辺だけの警備を優先する必要があった。
そこで〈サイバネティクス〉を販売していた店のことをふと思い出して、〈パラセール〉と多腳車両(ヴィードル)に取りつける〈AIコア〉を回収しにいくことにした。
在庫置場にある大量のは、すべて〈収納空間〉に放り込んで地上まで運ぶことになる。そのあと、調査員たちに手伝ってもらいながら能ごとに仕分けたあと、一時的に倉庫に保管されることになる。
在庫置場が空になったことを確認したあと、要人専用エリアに保管されていた貴重なインプラントも回収しにいく。〈収納空間〉の容量が足りなくなると心配していたが、それは杞憂に終わる。
前哨基地に戻ったあと、殘りの作業を機械人形に任せて地上に向かう。ちなみにジュジュたちは、エレベーターシャフトに備え付けられていたカゴに乗せて地上まで行くことになる。
それは地下で回収したを地上まで運ぶためのシンプルな車エレベーターで、ロープを作することで重いモノを簡単に運べる裝置だった。カゴに數のジュジュを乗せたあと、ロープを使ってジュジュたちが乗ったカゴを持ち上げていく。それは楽しい験だったのか、ハクの背に乗っていたジュジュたちは羨ましそうに鳴いていた。
記憶や験を共有できる集合神とはいっても、自分自で験するのとでは得られる経験が異なるのかもしれない。ジュジュたちが殘っていないことを確認したあと、私もグラップリングフックを使って上階に向かう。
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