《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》7話 結構多い馬好きたちのこと
結構多い馬好きたちのこと
どんな風の吹き回しか、俺達をけれてくれた馬2頭を連れて高柳運送に帰ることとなった。
もちろん手綱なんかは付いていないのでどうしようかと思ったが・・・その心配はなかった。
母馬・・・ヴィルヴァルゲは、そんなものがなくても靜かに俺たちの橫を歩いてくる。
そして・・・
「懐かれたのう、やっぱりおまーを連れてきたんは正解じゃったわ」
「酢昆布的な意味で好かれてんじゃないですか?これ」
仔馬の方はというと、俺の左手をひたすらしゃぶりながら歩いている。
正確には手を丸々口の中にれて舐めまわしているじ。
くすぐったいし、何より手が涎でドロドロなんだが・・・
「ひひん」
當の仔馬はご機嫌なので手をどけるのもためらわれる。
とりあえず移しなきゃならんしなあ。
「・・・俺の手からなんか飼い葉的な匂い質でも分泌されてるんだろうか・・・」
いや、サクラとかもよく甘噛みしてくるから飼い葉じゃないな?
真面目に考えるのがアホらしくなってきた。
便利でいいねえ!(學名・思考停止)
「おっきいねえ・・・」「かっこいい~」「でもよこのあかちゃん、かわいいねえ」
高柳運送まですぐに著き、門を開けると駐車場には住人が勢ぞろいしていた。
皆・・・特に子供たちはお馬さんに興味津々らしい。
「はわぁあ~~~!近くで見るとやっぱり綺麗!蕓品ですっ!人類の至寶ですっ!!」
「むぎゅう」
・・・さんが一番興味津々だな。
そして葵ちゃんはすっかりぬいぐるみ扱いされている。
嫌がってはいないようだからいいか。
「先輩、それでどうしますか?」
「まずは倉庫の左半分を空ける。馬たちはここにいてもらうけぇ、面倒みとってくれ」
七塚原先輩はそう言うと、ヴィルヴァルゲの首を掌で軽く叩いた。
「立派な家を作るけぇのう、まちーと待っとってくれや」
その聲に、彼は軽く嘶いて頭を下げた。
・・・言葉わかってそうだな。
賢いな、馬って。
「子供らぁも、小さい荷運ぶ手伝いしてくれぇや。みんなで寢床を作ってやろうで」
「「「はーい!!!!」」」
先輩の指示に、子供たちは楽しそうに両手を上げて答える。
うーん、まるで保育園の行事みたいな雰囲気だな。
・・・七塚原先輩は園長先生っていうより傭兵さんってじだが。
「・・・わふん」
「お、ただいまサクラ・・・どうしたお前」
作業に移る人員を見ていると、社屋から出てきたサクラがこっちへ來た。
來たが・・・いつも振り回される尾は下に引っ込んでいる。
あ、なるほど。
この子、馬見るの初めてだもんな。
そりゃビックリするだろ。
ヴィルヴァルゲはもとより、仔馬でも余裕でサクラの何倍もあるしな。
「サークラ、新しい家族だぞ~。馬っていうんだ、おとなしくて優しいから怖くないぞ~」
「わふ・・・」
『それマジ?どこ報よ?』みたいなじの顔で恐る恐るサクラが近付いてくる。
あ、今なーちゃんも社屋から出てきた。
あっちは・・・うん、むっちゃ走ってきたな。
尾のじを見るに気後れはしてなさそうだ。
「ひん」
俺の手をしゃぶり倒していた仔馬は、近付いてくる2匹に気付いたようだ。
マイアームはやっと解放された・・・
「わふ」
「バウ」
「ひぃん」
・・・
なんか挨拶でもしてるみたいだな。
仔馬は、サクラと追いついてきたなーちゃんにゆっくり顔を近づける。
その目はさっきのように好奇心でキラキラしていた。
仔馬がその鼻面をまずサクラに押し付けた。
匂いでも嗅いでいるんだろうか。
サクラはくすぐったそうにしながら、その鼻面をひと舐め。
続いてなーちゃんが當たりでもするようにを寄せ、やっぱり仔馬の顔をひと舐めする。
しばらく3匹はそうしてじゃれあっていたが、なーちゃんが軽く吠えてを翻すと、まずサクラが楽しそうに吠えて後を追う。
仔馬は行きたそうな雰囲気を出しつつ、ヴィルヴァルゲに振り向く。
母親からアイコンタクトで許しが出たのか、仔馬は嬉しそうに嘶くと2匹を追って走り出した。
さっきまでしまわれていたサクラの尾は、追いかけてくる仔馬を見ても大回転している。
どうやら仲良くなれたようだ。
「おかあちゃん、あの子たちはウチの家族なんだ。いい子だから安心してくれよ」
追いかけっこに勤しむサクラたちを見つつひっきりなしに耳をかしていたヴィルヴァルゲは、俺の方へ優し気な視線を向けた。
ふう、大丈夫そうだな。
・・・そういえば牧場には牧羊犬とかもいるだろうし、犬くらい見たことあるだろう。
馬からすれば、子犬やちょっと大きいくらいのワンちゃんは脅威に値しないということもあるだろうが。
この國には狼とかいないし。
「お帰りイチロー、隨分なを連れて帰ってきたんだな」
ライフルを持ったアニーさんがやってきた。
ヴィルヴァルゲがそれを見て一瞬剣呑な雰囲気を出したが、アニーさんはすかさず両手を軽く上げて振る。
「おっと・・・馬を食わねばならんほど困窮はしていないよ、レディ」
その聲の調子と表に、ヴィルヴァルゲは警戒を解いたようだ。
何歳か知らないが、賢いな。
馬ってみんなこうなのかな?
「いい馬だ・・・本國でもそうそうお目にかかれるものじゃないな、これほどの牝馬は」
「へえ、アニーさんって馬に詳しいんですか?」
「親戚が牧場を経営していてね、麗しい時代にはよく手伝いをしたものだよ」
自分で麗しいとか言うのね・・・まあ、今がこれだけ人なんだからそりゃあ綺麗なの子だったんだろうけども。
しかし牧場経験者か、ありがたい。
世話のことなんか1ミリもわからん俺からしたら救世主だ。
「ワオ!ベッピンサン!『日本の有名な競走馬ね!映像では見たことあるけど・・・うーん、これならまだ第一線で走れるんじゃない?』」
なんかエマさんも來た。
彼は目を輝かせてヴィルヴァルゲに見っている。
・・・スルーしてたけどなんでパッと見でメスだってわかるのこの人たち。
俺は仔馬が一緒にいないとわからんかったぞ。
この子むっちゃデカいし。
七塚原先輩はヴィルヴァルゲが牝馬にしては規格外のガタイだって言ってたし。
「おや、私よりもよほど役に立つ助っ人が來たな。イチロー、エマの実家は牧場だ」
・・・マジで!?
牧場関係者多すぎじゃない!?
「そちらのお國、牧場多すぎでは?」
「まあ、我々はそういう地域の出だからな。キャシディは西海岸だから違うがね」
あー・・・なんか南の方?
でっかい畑とかでっかい牧場とかがいっぱいあるあたりか。
「ちなみに私とエマは同じ州出だが距離は600キロは離れているがね」
「スケールがデカ過ぎる・・・」
そうだった。
アニーさんたちの國は我が國が何個も詰め込めるくらいデカいんだった。
ひたすらひろーい荒野もいいよなあ。
こっちは山ばっかりで狹いもん。
両方にメリットデメリットはあるけどさ。
「ハロー?『初めまして、黒い貴婦人さん。いい艶ねえ・・・大事にお世話されてたのね?』」
エマさんがゆっくり近付いてヴィルヴァルゲの肩?や背中をでている。
なんというか・・・慣れてるじ!
さすが実家が牧場。
でられているヴィルヴァルゲは悠然と構えている。
周囲の人間が自分に危害を加えないと認識しつつあるのだろう。
だが、目だけは定期的にサクラたちと遊んでいる仔馬の方へ向けられている。
「うーむ、彼は本當に素晴らしい馬だな。エマは知っているようだが、そこらの有象無象ではないだろう」
え、エマさん知ってんの?
日本の競馬までチェックしてるとは中々のマニアですな。
「えーっと、ヴィルヴァルゲっていうむっちゃ凄い馬だって先輩が言ってたんですけどうおっ!?」
「ソレホント!?『今ヴィルヴァルゲって言ったわよね!?言ったわよね!?』」
さっきまで馬をでていたエマさんが俺の目前に!?
名前に反応してたな、やっぱ知ってるのか?
やめてください!そんなに抱きしめなくても話はできますから!!
「ほ、ほんとです・・・ええっと『本當です、知ってるんですか?』」
「ワオ!『あの並み・・・あの馬!やっぱりあの子の娘なのね!!こんな所で會えるなんて・・・!!』」
エマさんは極まったように目を潤ませている。
そして俺を抱きしめる力がどんどん強くなっている。
ぼ、母に、母に殺される・・・!
「『おい落ち著け。イチローを谷間で絞め殺す気か・・・変な癖でも湧いたらどうする』」
「『あら、男は皆が大好きでしょ?』」
「『いや・・・私が見た所コイツは派だな、うん』」
アニーさんが何を言ったのか、やっと俺は解放された。
し、死ぬかと思った・・・死に方としては上位にるかもしれんが、まだ死にたくはない。
「ブルル」
「あで」
ヴィルヴァルゲが鼻面を顔にぶつけてきた。
あんまり痛くはないがビックリするじゃないか。
「なんだ?腹減ったのか?」
そう聞くも、彼は頭をフルフルとかしてまた軽く頭をぶつけてきた。
なんだよもう・・・まあ、嫌われてるじじゃないからいいか。
初めは気を張っている様子だったが、安全地帯に到著して安心したのだろうか。
仔馬がいるからな・・・ずっと1人、いや1頭でよく生きてたよなあ。
「ま、同居人・・・同居馬になったからには心安らかに過ごしてくれよ。レースに出ろとか言わないからさ」
「ブル」
わかっているのかいないのか、彼はまたも頭をぶつけてきた。
うーん、アレか?
貓が頭をこすりつけてくるのと同じようなもんかな?
近に馬がいなかったからわからん。
「イチロー」
おっと、アニーさんがエマさんに事を聞いたようだ。
「彼が言うには、このお嬢さんは本國で有名な馬の統らしいよ。それで知っていたとか」
「へえ・・・さすがブラッドスポーツですね」
馬ってのは人間以上に筋が重視されるってどこかで聞いたな、先輩に言われたんだっけ?
先輩があれほど必死になったのはそういうことか。
筋を繋いでいくってことは、何かあって斷絶したら一大事だもんなあ。
「『うーん!いい子いい子!アナタ、いい男に拾われたんだからね~幸運よ~!さすがダービー馬!!』」
「ヒヒン」
當のアニーさんは夢中でヴィルヴァルゲをで回している。
本當に馬が好きなんだなあ・・・
で回されている方はちょっとめんどくさそうにしている気がするが。
「ちわーっす、三河屋で~・・・馬だ!馬がいる!!」
び聲に振り向くと、詩谷から帰ったらしい大木くんの姿があった。
荷を置かずにそのまま來たのか、バイクの荷臺には撮影機材らしきものがそのまま殘っている。
「青鹿に・・・あの流星・・・まままままさか!?」
かと思えば小刻みに振を始めた。
どうした急に。
「たったたたた田中野さん!!田中野さん!!あのカッコいい馬の名前って知ってますか!?!?」
「・・・ヴィルヴァルゲ」
そう返すと、大木くんは力なく地面に膝を突いた。
本當にどうした急に。
「・・・う、ううう・・・うう、う」
前のめりになった大木くんは、先程にも増して高速で振を始める。
えっなにこれこわい。
「ウワーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!名牝ッ!!!生きててよかったァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
そしてそのまま地面でブレイクダンスめいた挙を取り始める。
意外と幹が強いなコイツ・・・申し訳ないが死にかけのセミみたいで超気持ち悪い。
アニーさんたちも普段見たことのない生きの出現にドン引きしている。
子供たち?とっくに大木くんの奇行には慣れっこなので放置して片付けしてるよ。
あの子たちの順応は俺より高い。
「お、思いれがありそうだな・・・大木くんよ」
「単勝11倍を僕にくれた天使・・・いや神ですよ!!あの時はほんっとにありがとうヴィルヴァルゲ!!おかげで220萬の大黒字だったよおおおおおおおおお!!!!!」
11倍で220萬ってーと・・・コイツ20萬も馬券にぶち込んだのか!?
先輩とは違って、大木くんは競馬も馬も好きそうだ。
「その金でいいバイク揃えられたんですよ!!ヴィルヴァルゲちゃんには足を向けて寢れませんよォ!!!」
「お、おう・・・」
當の神は『何この生き・・・こわ』みたいなじで明らかに引いているが大丈夫か?
いや、誰だってそう思うがな。
しばらく地面をのたうち回っていた大木くんは、急に落ち著くとスッと立ち上がった。
なんだそのイケメン顔は。
清々しい顔しやがって。
「・・・落ち著きました」
ほんとにぃ?
信用ならんでござるな?
「僕も馬房の整備手伝いますよ。不世出の名牝のためならいっくらでも・・・」
何故か腕まくりをした大木くんは、駐車場のある部分を見てきを止めた。
そこには、犬たちと楽しそうに走り回る仔馬の姿が!!
・・・だけど、それが何か?
「イマスネ、コウマ」
「なんで急に片言になってんのキミ」
「コウマ、イマスネ」
「なんで繰り返すのキミ」
大木くんの目に今まで見たことのないが宿っている。
なんだろう。
爛々とり輝いている。
こわ。
「・・・ヴィルヴァルゲの子供・・・あの付きなら間違いなく生後1年未満・・・タイミングと牧場通信からして・・・間違いなく・・・間違いなく・・・!!!」
かと思えば、急に大木くんは盛大に涙を流し始めた。
本當に、本當にどうしたお前!?
「ああああ・・・いき、いきててよがっだあああ・・・ぼぐも、うまもォ・・・いぎででえがっだあああ・・・!!!!」
大木くんはどこからか取り出したでっかいバスタオルを顔に押し當てて地面に座り込んだ。
緒ぶっ壊れてるじゃん・・・今までで一番の振れ幅がでっかいじゃん。
「あの、田中野さん・・・お、大木さんはどうされたんですか?」
神崎さんが倉庫の手伝いを切り上げてこっちへ來た。
さすがに急事態だと思ったんだろう。
「俺にも皆目見當がつきません、あの仔馬を見てからこうなって・・・神崎さんは馬に詳しいですか?」
「いえ、ギャンブルには興味がありませんでしたから。馬は綺麗だと思いますけれど・・・」
たしかに、神崎さんがギャンブルにのめり込むイメージわかないもんな。
先輩がいればいいんだが・・・殘念ながら分解したプールを運ぶ途中なので手が離せなそうだ。
っていうかいくら小分けにできるっていっても1人で持つなよ・・・最低でも30キロくらいはあると思うんだけど・・・
「落ち著きました」
「ほんとにぃい!?」
目を真っ赤にした大木くんがすっくと立ちあがった。
立ち直りが早すぎるぞオイ。
「僕は・・・田中野さんたちに出會えてほんとによかったです・・・」
「オイ死亡フラグみたいな発言止めろ縁起でもない」
これから弾抱えて特攻しますって面しやがって。
そんなにあの仔馬が好きか。
「田中野さんは知らないでしょうけど、あの仔馬の父は僕がこの世で一番好きな馬なんです」
「マジで?オヤジさんも有名なんだ」
「當たり前でしょう!?ヴィルヴァルゲに種付けするんですよ!?そこらへんの一般オス馬を付けれるわけないでしょ!?!?」
うわぁ!?急に興するなよ心臓に悪いなぁ!
大聲を出して落ち著いたのか、大木くんは深呼吸して話し始めた。
「・・・生涯戦績50戦7勝、獲得賞金7億6000萬円・・・稀代の癖馬にして、稀代のトリックスター」
急にいい聲で語り出すじゃん・・・CMかな?
その顔は、まるで年のようにキラキラ輝いていた。
・・・よく考えたら年は競馬でキラキラしねえな。
「シルバーコレクターにして、さずにはいられない名馬・・・『シュターレバイター』」
名前カッコいいなオイ。
名馬ってカッコいい名前しかいないのか?
しかし7億円も稼いでんのか・・・ヴィルヴァルゲの2桁には及ばないが、そこら辺のサラリーマンの生涯年収より多いじゃないか。
競馬ってすげえんだなあ。
「本來は『シュターレヴァイター』が正式な発音なんですけど、競走馬の名前は9文字じゃないと駄目って制限があるんでそうなりました」
また1つ明日に使えない豆知識を得てしまった。
「を壊さずに50戦を駆け抜けて、最後の最後・・・引退レースでG1を勝ち取った最高の馬ですよ」
よく知らんけど50回もレースって出れるもんなの?
アレ1回でも死ぬほど疲れそうなんだが。
「その口調を聞く限り、かなりの人気馬ってじ?」
「ですよ!!特に引退レース中継なんか、報を正確に伝えないといけないはずのアナウンサーが最終直線でただの競馬おじさんになってるくらいですからね!!」
それは・・・アナウンサーとしてどうなの?
ラジオ聞いてる人からクレームとからなかったんだろうか。
「『シュターレバイター、シュターレバイター!!差しきれ!!!』ってね!いやあ・・・思い出すだけでも、なみ、涙がで、出そうですよ・・・」
「出てる出てる」
追加の涙がボロボロ出てるよオイ。
馬含めて皆さんドン引きしてらっしゃるぞ。
「とまあ、あそこの仔馬はその馬のラストクロップなんです」
「らすとくろっぷ?」
「種牡馬が殘した最後の仔馬世代のことですよ。シュターレバイターは去年亡くなりましたからね・・・15歳、早すぎますよ・・・」
そしてまた泣くし。
15歳で早いってことは・・・馬は30年前後の壽命ってことか?
結構長生きさんだなあ。
これは腰を據えて面倒を見なければならんぞ。
「よし!おが屑集めてきます!!馬房に必要でしょうから!!」
大木くんは赤い目のままバイクへダッシュしていった。
「おーい、詩谷から帰ったばっかでそんなに急がなくても―――」
「ヴィルヴァルゲとシュターレバイターの子ですよ!?なんとしても守らなきゃいけんでしょうが!!!正気ですか田中野さん!?!?」
「アッハイ」
心配したら正気を疑われた件について。
彼にとってあの仔馬はかなり思いれがあるということだな、うん。
もう任せてしまおう。
何故か木材屋の場所も知ってるみたいだし。
そして大木くんはものすごいスピードで出て行った。
「ブルル」
「おう・・・なんか、キミの旦那さんの大ファンなんだとさ」
呆気に取られていたヴィルヴァルゲが寄ってきた。
相當驚いたのか、大木くんの去った方向をじっと見つめている。
首をでると、ちょっと汗をかいているようだ。
そうか、馬って汗かくんだなあ。
「なんにせよすげえな、おかあちゃん。現役時代のファンがそこら中にいそうだなあ」
「ヒン」
多くの人を魅了した稀代の名馬、か。
こりゃ、とんでもない住人が増えたもんだ。
「なあイチロー、さっきの彼がんでいた名前を覚えているか?エマが知りたいらしい」
アニーさんが尋ねてきた。
「えっと、たしかシュターレバイターとかなんとか・・・」
このじはジャガイモが名産の國の言葉だろうか。
響きがカッコいいよな。
「『シュターレヴァイターってことは・・・ワオ!やっぱりそうじゃない!!』」
それを聞いてエマさんは仔馬の方へ走って行った。
ヴィルヴァルゲは一瞬反応したが、危険はないと判斷したのか追おうともしなかった。
「『おチビちゃん!!あなたルイガーゾンタークの孫なのね!!こんな島國で會えるなんて素敵よ!!素敵!!!』」
そして何事か興しながら仔馬に抱き著いた。
仔馬の方はビックリしたものの、しばらくすると嬉しそうにその顔をべろんべろん舐め始めた。
「・・・お爺ちゃんまで有名なんですねえ」
「ブラッドスポーツだからな。ちなみに祖父はルイガーゾンタークという馬だぞ?」
「爺ちゃんも名前かっけえな・・・」
「故國でのレース績も凄まじいが、かの馬は種付け馬として特に有名だ。・・・男として憧れるか?イチロー?」
「のない種付けに興味はありませんね、ええ」
何が悲しくて好きでもない相手にDNAだけ提供せにゃならんのか。
「ほう・・・のある種付けには興味があるということだな・・・?」
アニーさんが急にしなだれかかってきた。
畜生!!馬に気を取られてうかつな発言を・・・!!
「ウワーッ!?藪蛇だ!!ハメられた!?」
「ハメるのはキミだよ、うふふ」
「たすけて!誰か!誰かの人呼んでえええええええええええ!!」
俺のシャツに手を突っ込もうとするアニーさんからひたすら逃げ回る羽目になった。
神崎さんとヴィルヴァルゲが止めてくれなければ即死だった・・・いや、ヴィルヴァルゲの方は『うるせえ黙れ』ってじだったけど。
しかし、ありがとうヴィルヴァルゲ!今日で一気にファンになったよ!!
「わしらぁが働いとる間に隨分とまあ楽しそうじゃったのう」
「返す言葉もございません、ハイ」
倉庫の半分を綺麗にした七塚原先輩に怒られている。
ぐうの音も出ない。
作業が一段落してがらんどうになった倉庫の前では、子供たちが仔馬をでたりしている。
ヴィルヴァルゲにはエマさんが付きっ切りで汗を拭いたりしているが、子供たちは大きい馬がちょっと怖いらしく腰が引き気味だ。
璃子ちゃんと葵ちゃん、それに朝霞だけが怖じせずにでている。
馬2頭は嫌がっている風ではないので、まあ安心か。
なんとかここでもやっていけそうだな。
「まあええわい。大木がおが屑集めてくれるんじゃったら、わしらも出かけるで」
「ああ、飼い葉でも回収するんですか?」
「うんにゃ、それだけじゃなあ。他にも回収したいもんもあるし、調べたいこともある」
結構いろんな所に行くみたいだな。
この時間からだと結構遅くなりそうだ。
「了解でーす。軽トラ出しますか?」
「ここの中型トラックがええじゃろう。あるだけ持ってくるけえ」
・・・何を回収するか知らんが、結構な大荷だな。
「武はしっかり用意せえよ、できりゃあ神崎さんにも來てもらいたい所じゃのう」
「マジすか、それじゃ早速頼んで・・・」
「問題ありません、いつでも出撃可能です」
神崎さんの準備が早ァい!?
いつのまに完全武裝したんですか!?
「あの、それでどこまで行くんすか先輩」
俺がそう聞くと、七塚原先輩は山の方角を見て言った。
「竜庭牧場・・・あの親子がおった所じゃ」
なーるほどね。
確かに、牧草を探して歩くよりずっと効率的だな。
久しぶりの地元探索に、俺はちょっとワクワクしていた。
※現実世界とこの世界では、活躍した馬の年代も結構適當です。
タイムパラドックスが発生していますので深く考えないでください。
あと、馬自も架空ですので・・・(あからさまなモデルはいますが)
包帯の下の君は誰よりも可愛い 〜いじめられてた包帯少女を助けたら包帯の下は美少女で、そんな彼女からえっちで甘々に迫られる高校生活が始まります〜
雛倉晴の通っていた小學校には、包帯で顔を覆った女の子――ユキがいた。小學校に通う誰もが一度もユキの素顔を見た事がなく、周囲の子供達は包帯で顔を覆うユキの姿を気味悪がって陰濕ないじめを繰り返す。そんな彼女を晴が助けたその日から二人の関係は始まった。 ユキにとって初めての友達になった晴。周囲のいじめからユキを守り、ユキも晴を頼ってとても良く懐いた。晴とユキは毎日のように遊び、次第に二人の間には戀心が芽生えていく。けれど、別れの日は突然やってくる。ユキの治療が出來る病院が見つかって、それは遠い海外にあるのだという。 晴とユキは再會を誓い合い、離れ離れになっても互いを想い続けた。そして數年後、二人は遂に再會を果たす。高校への入學式の日、包帯を外して晴の前に現れたユキ。 彼女の包帯の下は、初めて見る彼女の素顔は――まるで天使のように美しかった。 そして離れ離れになっていた數年間で、ユキの想いがどれだけ強くなっていたのかを晴は思い知る事になる。彼女からの恩返しという名の、とろけた蜜のように甘く迫られる日々によって。 キャラクターデザイン:raru。(@waiwararu) 背景:歩夢 ※イラストの無斷転載、自作発言、二次利用などを固く禁じます。 ※日間/週間ランキング1位、月間ランキング3位(現実世界/戀愛)ありがとうございました。
8 95【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。
【注意】※完結済みではありますが、こちらは第一部のみの完結となっております。(第二部はスタートしております!) Aランク冒険者パーティー、「グンキノドンワ」に所屬する白魔導師のレイ(16)は、魔力の総量が少なく回復魔法を使うと動けなくなってしまう。 しかし、元奴隷であったレイは、まだ幼い頃に拾ってくれたグンキノドンワのパーティーリーダーのロキに恩を感じ、それに報いる為必死にパーティーのヒーラーをつとめた。 回復魔法を使わずに済むよう、敵の注意を引きパーティーメンバーが攻撃を受けないように立ち回り、様々な資料や學術書を読み、戦闘が早めに終わるよう敵のウィークポイントを調べ、観察眼を養った。 また、それだけではなく、パーティーでの家事をこなし、料理洗濯買い出し、雑用全てをこなしてきた。 朝は皆より早く起き、武具防具の手入れ、朝食の用意。 夜は皆が寢靜まった後も本を読み知識をつけ、戦闘に有用なモノを習得した。 現にレイの努力の甲斐もあり、死傷者が出て當然の冒険者パーティーで、生還率100%を実現していた。 しかし、その努力は彼らの目には映ってはいなかったようで、今僕はヒールの満足に出來ない、役立たずとしてパーティーから追放される事になる。 このSSSランクダンジョン、【ユグドラシルの迷宮】で。 ◆◇◆◇◆◇ ※成り上がり、主人公最強です。 ※ざまあ有ります。タイトルの橫に★があるのがざまあ回です。 ※1話 大體1000~3000文字くらいです。よければ、暇潰しにどうぞ! ☆誤字報告をして下さいました皆様、ありがとうございます、助かりますm(_ _)m 【とっても大切なお願い】 もしよければですが、本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです。 これにより、ランキングを駆け上がる事が出來、より多くの方に作品を読んでいただく事が出來るので、作者の執筆意欲も更に増大します! 勿論、評価なので皆様の感じたままに、★1でも大丈夫なので、よろしくお願いします! 皆様の応援のお陰で、ハイファンタジーランキング日間、週間、月間1位を頂けました! 本當にありがとうございます! 1000萬PV達成!ありがとうございます! 【書籍化】皆様の応援の力により、書籍化するようです!ありがとうございます!ただいま進行中です!
8 156【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~
舊タイトル:「え? 僕の部下がなにかやっちゃいました?」ハズレギフトだと実家を追放されたので、自由に辺境開拓していたら……伝説の村が出來ていた~父上、あなたが尻尾を巻いて逃げ帰った“剣聖”はただの村人ですよ? 【簡単なあらすじ】『ハズレギフト持ちと追放された少年が、”これは修行なんだ!”と勘違いして、最強ギフトで父の妨害を返り討ちにしながら領地を発展させていくお話』 【丁寧なあらすじ】 「メルキス、お前のようなハズレギフト持ちは我が一族に不要だ!」 15歳になると誰もが”ギフト”を授かる世界。 ロードベルグ伯爵家の長男であるメルキスは、神童と呼ばれていた。 しかし、メルキスが授かったのは【根源魔法】という誰も聞いたことのないギフト。 「よくもハズレギフトを授かりよって! お前は追放だ! 辺境の村の領地をくれてやるから、そこに引きこもっておれ」 こうしてメルキスは辺境の村へと追放された。 そして、そこで國の第4王女が強力なモンスターに襲われている場面に遭遇。 覚悟を決めてモンスターに立ち向かったとき、メルキスは【根源魔法】の真の力に覚醒する。【根源魔法】は、見たことのある魔法を、威力を爆発的に上げつつコピーすることができる最強のギフトだった。 【根源魔法】の力で、メルキスはモンスターを跡形もなく消し飛ばす。 「偉大な父上が、僕の【根源魔法】の力を見抜けなかったのはおかしい……そうか、父上は僕を1人前にするために僕を追放したんだ。これは試練なんだ!」 こうしてメルキスの勘違い領地経営が始まった。 一方、ロードベルグ伯爵家では「伯爵家が王家に気に入られていたのは、第四王女がメルキスに惚れていたから」という衝撃の事実が明らかになる。 「メルキスを連れ戻せなければ取りつぶす」と宣告された伯爵家は、メルキスの村を潰してメルキスを連れ戻そうと、様々な魔法を扱う刺客や超強力なモンスターを送り込む。 だが、「これも父上からの試練なんだな」と勘違いしたメルキスは片っ端から刺客を返り討ちにし、魔法をコピー。そして、その力で村をさらに発展させていくのだった。 こうしてロードベルグ伯爵家は破滅の道を、メルキスは栄光の道を歩んでいく……。 ※この作品は他サイト様でも掲載しております
8 102【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
8 88負け組だった男のチートなスキル
都內某所にある天才たちを集めた學校、天運學高校。そんな學校に通う學生の名を高月光助と言った。 だが彼は毎日過酷ないじめにあっており、更には世間で思われているような天才でもなかった。 この先ずっとそのような日課が続くと思っていた光助の元にある転機が訪れる。彼の通う學校の全校生徒が突然異世界に転移されることとなったのだ。 新たな世界に一時は希望を抱く光助だったが、この世界でさえもステータスと呼ばれる能力の指數で彼らの足元にも及ばない。しまいには何も知らない異世界に一人で放り出されてしまうこととなったのだ。 だがそんな彼にはある秘密があった。 高月光助は神さえも驚かせるような力を秘めていたのだ。 改訂版書いてます。
8 91聲の神に顔はいらない。
作家の俺には夢がある。利益やら何やらに関わらない、完全に自分本意な作品を書いて、それを映像化することだ。幸いに人気作家と呼べる自分には金はある。だが、それだげに、自分の作人はしがらみが出來る。それに問題はそれだけではない。 昨今の聲優の在処だ。アイドル聲優はキャラよりも目立つ。それがなんとなく、自分の創り出したキャラが踏みにじられてる様に感じてしまう。わかってはいる。この時代聲優の頑張りもないと利益は出ないのだ。けどキャラよりも聲優が目立つのは色々と思う所もある訳で…… そんな時、俺は一人の聲優と出會った。今の時代に聲だけで勝負するしかないような……そんな聲優だ。けど……彼女の聲は神だった。
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