《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》

沙先輩と一緒に歩いていたらドキドキさせられることばっかりだ。

普段はあんまり見せないからなのか、一つ一つの仕草がとても可く、先輩っていうことを忘れてしまいそうだ。

買いをするのにわざわざ僕をってくれるのは嬉しいけれど、なんだか複雑な気持ちになってしまう。

沙先輩の買いというのは、的にはバンド活で使う音楽ノートや小さな備品だ。

このくらいの買いなら、奈緒さんや理恵先輩をえば問題も解決すると思うんだが。

なんで僕なんだろう?

「ねぇ、楓君」

デートの最後だからと洋服屋に著いてしばらくすると、沙先輩が聲をかけてくる。

「どうしたんですか?」

そうは訊いてみるものの、沙先輩の意図はあきらかだった。

沙先輩は、両手にそれぞれ服を持っていた。

右手に持っていたのは、ピンクのチュニックに白のショートパンツ。

左手に持っていたのは、水のチュニックにチェック柄のミニスカートだった。

「どっちが一番似合いそうかな?」

笑顔でそんなことを訊いてくるのが、逆にプレッシャーなんだが……。

それもしっかりと答えなきゃダメなのか。

「左手に持ってるのが似合いそうかな」

「そっか。それじゃ、試著してみようかな」

沙先輩は、まじまじと左手に持っている方の服を見てそう言っていた。

率直な想を言わせてもらうと、どちらも似合うと思うのだが、正直に言うと沙先輩のショートパンツ姿はもう見慣れてしまったじだ。

今日は特別なのかスカートを穿いているが、これは滅多にないことだから、今回はあえて僕の偏見で言わせてもらおう。

沙先輩は、いそいそと近くにある試著室に向かっていく。

「責任持って見てもらうんだからね。どっか行っちゃダメだからね!」

「う、うん。わかっているよ」

そうは言ったものの、やはり張してしまう。

試著とはいえ著替えをしたの子の姿なんて、あまり見ることがないから。

もしかして沙先輩は、僕が慌てるところとか見たいのかな?

しばらくすると、沙先輩が試著室のカーテンを開ける。

「どうかな? 似合ってる…かな?」

自信なさそうにそう言ってくる沙先輩は、どこかいつもの彼らしさがないように思えた。

この場合、安直な想を言っても喜んではくれないだろうと思い、僕は一瞬だけ言葉に詰まってしまう。

しかし、すぐに口を開いた。

「とてもよく似合っているよ」

「なんかテキトーに答えてない?」

言葉を詰まらせたのが良くなかったのか、沙先輩は不満そうな表になる。

率直な想を言っただけなんだが、沙先輩には逆効果みたいだ。

「そんなことは……。とてもよく似合っているよ」

まるで弁解してるみたいな言いになってしまった。

これだと、なんて答えたら納得するんだろう。

沙先輩自も、それは考えたのか、納得するしかない様子だった。

「まぁ、楓君がそう言うのなら……。ちょっとだけ嬉しいかな」

「『ちょっと』なんだ」

僕はそう言って、改めて沙先輩の姿を見る。

香奈姉ちゃんには及ばないが…いや、比べるのもおかしな話だが、それでも沙先輩は十分に可い。

沙先輩は、恥ずかしそうに頬を赤くし、可らしくスカートの裾を押さえる仕草を見せて言う。

「どこ見てるのよ? 見るのならちゃんと全を見なさいよね」

「ごめん……。なんというか、絵になってるなって思ってつい──」

沙先輩の姿は本當に絵になっている。

活発的な印象をける沙先輩だから、ミニスカートなどは似合わないっていう固定概念だったが、そんなことはないらしい。

試著している服も、しっかりと著こなしている。

ミニスカートからびた腳はとても綺麗だ。

「そっか。…じゃあ、香奈ちゃんとどっちが可いかな?」

「どっちって言われても……。僕には、なんとも──」

「それって、私のことは可いって思っていないってこと?」

「そんなことはないよ。沙先輩だって、とても可いし……」

「先輩に対してそんなこと言っちゃうんだ? 楓君って、意外とスケコマシなのかな?」

沙先輩は、悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言ってきた。

スケコマシとは失禮な。

僕にだって、好きな人くらいはちゃんといる。

今は、沙先輩とデートをしているという理由もあって、他のの子の話題をしないだけだ。

もしかして、香奈姉ちゃんのことを話題に出したのはわざとなのかな。

「違うって否定しても、絶対信じないような気が──」

「うん! 楓君は、私たちの癒しだからね! 私としては、楓君はスケコマシって思われてしまう方がちょうどいいかも」

「それって……。本音がダダれてますよね?」

「私は、本音しか言わないタイプなんだ。だから楓君の前でも、遠慮はしないよ」

「そうなんだ」

僕は、改めて沙先輩を見てそう言っていた。

僕のことをそんな風に見ていたのか。

ちょっと意外だ。

しかし沙先輩とここに來たのは、そんな話をするためではない。

本當は、純粋に最新の服を見に來たっていうのが目的なんだろうけど。

沙先輩のことだ。試著した服を買うのかどうかを決めるのに時間をかけるだろう。

「ところで──。その服は買うつもりなの?」

「う~ん……。どうしよっかなぁ……」

案の定、沙先輩は試著している服に視線を落とす。

沙先輩のその仕草を見ている限りでは、どうやら気にったみたいだ。

気持ち的には、買いたいんだろうな。

さっき値段を見たけど、高校生にとっては結構お高めだ。

「良かったら、プレゼントしましょうか?」

「いいの?」

「他ならぬ沙先輩の頼みなら──」

「そんなの……。やっぱりやめておこうかな。香奈ちゃんに悪いし……」

そこで、どうして香奈姉ちゃんが出てくるんだろうか。

今は沙先輩とのデートだし。

「そこは気にしなくていいよ。今は、沙先輩とデートをしてるんだし」

「もう! だからスケコマシって言われるんだぞ!」

そう言われてしまうとなんとも言えない。

沙先輩の言うとおり、僕はスケコマシなのかもしれない。でも──

見知ったの子にしか、優しい言葉をかけられないのは事実だ。

ナンパなんて、したことがないし。

沙先輩にしか言わないから、その辺りは大丈夫ですよ」

「えっ……」

沙先輩は、呆然とした様子で僕の顔を見てくる。そして、すぐに顔が恥で真っ赤になった。

「そういうことは、本命の彼さんとかに言うセリフだぞ。仮にとはいえ、私とデートをしているのはたしかだけど、プレゼントはさすがに……」

「でもその服は、気にったんでしょう?」

「それはまぁ……。オシャレで可いからね。しいっていう気持ちはあるけど……」

「それなら、今回は僕がプレゼントしますよ。デートにってくれたお禮ってことで──」

僕は、笑顔でそう言っていた。

気前がいいって言われてしまうかもしれない。しかし、沙先輩のその立ち姿を見ていたら、ついプレゼントしたくなってしまう。

そんなしそうにされたら──

「ありがとう。楓君」

沙先輩は、素直にお禮を言っていた。

こんな時は誰でなくても素直になってしまうか。

僕的には、沙先輩のその反応は可いとしか言いようがない。

これは香奈姉ちゃんに言ったら絶対に怒ると思うので、言わないでおこう。

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