《【書籍化決定】ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた~夢のような生活が始まると思っていたけど、何か思ってたのと違う~》おはよう蒼馬とおやすみ靜
「へえ、それじゃあ子供の頃は腕白っ子だったんですね」
「そうなの。男子と一緒に外で泥遊びとかして、親に怒られたりしてたのよ?」
「意外です。俺が知るひよりさんは、何というからしい印象だったので」
スタートしてからは既に三十分ほどが経過していた。大五キロメートルになるよう事前にコースを調べてきたんだが、今は丁度半分に差し掛かった所だ。
準備運としてはとっくに十分な距離ではあったけど、俺たちはまだゆったりまったりと歩いていた。話すのが楽しくてジョギングする気にならなかったんだ。ひよりんは恐らく俺に合わせてくれているんだと思う。
「勿論今はそんなことしないのよ? あ、でもライブ中は結構心に返っているのかも。生放送とライブでキャラが違うって言われるの、私」
「あ、それは俺も思ってました。俺は今はこうやって普段のひよりさんを知ってますけど、ひよりさんが引っ越してくる前も、やっぱりライブ中のひよりさんはかっこいいなって思ってましたもん」
「そうだったんだ。じゃあ蒼馬くんはライブ中の私のファンってことかな?」
「いや、全部ですね。どんなひよりさんも『推し』なので」
普段より普通に話せているのは、恐らくこのペアルックのせいか。大事の前の小事というか、大きな恥ずかしさで心が麻痺しているような気がする。折角選んでくれたのにこの言い草はないかもしれないが、まさに災い転じて福とすだ。
「じゃあ…………『支倉ひより』も……推してくれる……?」
「えっ?」
「あ、あははは! ごめんなんでもないの! ほら、そろそろ走りましょ!?」
言うや否や、ひよりんが駆け出す。
小さくなっていく背中を俺は慌てて追いかける。クッションの効いたランニングシューズはまるで羽のように軽くて、まるで雲の上を歩いているみたいだった。それが楽しくて、俺はひよりんがボソッと呟いた言葉が何だったのか、聞き返すことを忘れてしまった。
◆
十五分ほどジョギングをし、俺たちはマンションまで戻ってきた。
「あっつ…………」
「ふぅ……ふぅ……あついねー」
ひよりんがパーカーのジップを下げ、パタパタとの辺りを扇いでいる。あんなにぎゅうぎゅうになっていたらそりゃ暑いだろうな。
というか普通にエロすぎんだろ。俺は當然視線を逸らした。
「はぁ、はぁ…………なんか…………あれですね。ひよりさん、あんまり息上がってないですね」
俺が膝に手をついて肩で息をしているのに対し、ひよりんは多呼吸は大きいものの特に辛そうにしている様子はない。俺の方が若いのに、なんだか恥ずかしい。
「ふふ、聲優って意外と力仕事なのよ? ランニングが日課だったり、ジムに通ってる子も多いんだから」
「そう、だったんですね…………確かにライブとか、凄いきますもんね」
早朝のしっとりとした空気が汗を急速に冷やしていく。大急ぎで呼吸を繰り返していた肺も、シンと澄んだ空気を取り込んで落ち著きを取り戻してきた。
「そうなの。ザニマスのファーストライブ、本當にレッスンが大変だったのを覚えてるわ。それまでは歌って踴るなんて経験はなかったから」
考えてみれば當たり前のことではあった。俺があの日ライブ會場で目の當たりにした輝きは決してあの瞬間だけの剎那的なものではなく、彼たちのの滲む努力の結晶なんだ。一どれだけの練習をすればあんなに輝けるのか…………想像する事すら失禮な気がした。
「何と言うか…………ありがとうございます」
「お禮? どうして?」
「ひよりさんが頑張ってくれたおで、俺はひよりさんに出會えましたから。勿論俺はただの名も無き一人のファンでしかないんですが…………それでも『八住ひより』という存在に出會えて本當に謝してるんです」
人が『推し』に出會った時…………そこにあるのは圧倒的な『謝』の念。あの時ステージの上でまばゆい輝きを放っていたひよりんの姿は、今でも俺に勇気をくれるんだ。
「あはは…………そこまで真っすぐ言われると、何だか照れちゃうね。でも…………ありがとう。蒼馬くんにそう言って貰えて、本當に嬉しいよ」
そう言って、ひよりんは俺に笑顔を向けてくれる。薄っすらとピンクに上気した頬や、そこにキラリとる汗。おでこに張り付いた髪の一本一本まで、全てが尊かった。
…………本當に、夢のようだ。『推し』が傍にいる生活っていうのは。他のどんなことでも摂取出來ない栄養素がここにはある。
「…………ぬ?」
マンションの玄関から間の抜けた聲が聞こえてくる。目を向ければ、ラフな格好の靜が目の下にクマを作りながらとぼとぼとこちらに歩いてきていた。
「うひゃ~、ホントにやってるよ…………え、ていうかめっちゃペアルックじゃん」
「うっ……それは言うな」
「やっぱりおかしいかな……?」
「そだねえ、めっちゃ目立ってると思うなあ」
靜は目をごしごしとりながらすぐ傍までやってくる。
「うわあ、めっちゃ汗かいてるし。朝からお疲れ様だよ……」
寢不足で頭があんまり回ってないんだろう、ここまでローテンションな靜は中々珍しい。
「靜は今まで配信してたのか?」
「配信とか、あと畫の編集とかね…………ふあぁ……ねっむ。じゃあ私は行くねえ」
口に手を當てながら、靜は俺たちを追い越して歩いていく。行先は恐らく近くのコンビニだろう。靜の生態をマスターしている俺の予想では、恐らくスパゲティか何かを食べてから寢る気だ。めちゃくちゃ太りそうな生活だが、太らない質の靜の前では大盛スパゲティも進料理に等しい。
「…………靜! おやすみ!」
「ほぁ~い」
もう一人の『推し』の背中に聲を掛け、俺たちはマンションに帰った。
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