《【書籍化・コミカライズ】誰にもされなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺されていました〜【二章完】》第70話 ティータイムの提案
夕食後、ローガンとアメリアは引き続き食堂で紅茶の時間を楽しんでいた。
二人のティーカップからは、ほのかに甘い香りが漂っている。
「……味しい」
カップに口をつけ、アメリアはほっと一息ついた。
ルビーレッドの瞳がへにょりとけ、その表からは満足が滲んでいる。
舌を通り過ぎる茶葉の優しさ、その後を追うかな香りが心を落ち著かせてくれた。
一方、ローガンは貴公子としての品格を保ったまま靜かに紅茶を嗜んでいた。
ゆっくりとカップを持ち上げ、音一つ立てず紅茶を啜る所作だけで絵になりそうだ。
なんとも対比的な二人である。
「すっかり、紅茶を飲むようになりましたね」
ふと、アメリアがそんなことを言う。
この屋敷に初めて足を踏みれた日、ローガンはコーヒーを飲んでいた。
それが今となっては紅茶に変わっている。
「アメリアの影響だな」
ローガンが言う。
それは、二人が共に過ごす時間が増え、互いにしずつ影響を與え合っていることを表していた。
「元々、コーヒーがお好きなんでしたっけ?」
「味が好きと言うわけではないが、多忙な時期はコーヒーを飲むようにしていた。コーヒーを飲むと、心なしか頭と目が冴え渡るような気がしてな」
「あ、それはカフェインの効能ですね」
「カフェイン?」
初めて聞いたと言葉を返すローガンに、アメリアはカップを置いて返答する。
「はい。コーヒーに多く含まれている分で、飲むと集中力が持続したり、眠気を抑えたり出來ます。コーヒーほどではないですが、紅茶にも含まれてるんですよ」
「よく知っているな……」
スラスラと専門的な知識を口にするアメリアを見て、ローガンが心したように頷く。
「離れでボーッとしていても暇だったので……空いた時間に本を読んでいると、気がついたら無駄な知識がついていったんですよね……」
「無駄ではないと思うぞ」
自嘲気味に言うアメリアの言葉を、ローガンが遮った。
ローガンの真剣な眼差しに、アメリアは靜かに息を呑む。
「アメリアは……その知識を何かに活かしたい、とは思わないか?」
ローガンの質問に、アメリアはぱちぱちと目を瞬かせる。
「えっと……知識を役立てる、と言いますと……?」
「すまない、ざっくりしていたな。簡単に言うと、アメリアが持っている調薬スキルや植に関する知識……それらを、この國の醫療に役立てる気はないか、という質問だ」
「くくく國ッ……!?」
突然スケールが広がって、アメリアはギョッとした。
「面白い!」「続きが気になる!」など思ってくださりましたら、ブクマや↓の☆☆☆☆☆で評価頂けると勵みになります……!
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