「ティツィ……」

私を後ろから抱えるように王都の上空を飛行しながら、レオンが囁く。

「はい？」

耳元で聞こえる、レオンの熱の籠った聲に心臓が口から飛び出るのではないかと思うくらい鼓が激しくなり、が苦しくなる。

更には後ろから私を抱えるようにシルヴィアにっている彼の溫に、呼吸までも苦しくなった。

「このまま、新婚旅行に行ってしまおうか。君と結婚したのは私なのに、後から後から邪魔者が湧いてくる……」

しっとりするような聲で囁いているのに、容が可すぎて笑ってしまった。

「あはは、ダメですよ。明日はアッシュ殿下の立太式ですし、今は私たちの為にたくさんの方が披宴に足を運んでくださっているんです。私の公爵夫人としての初仕事ですからちゃんと務めさせてください」

「……気が進まないな」

「ふふ、レオンってば」

地上にいた時よりも近くなった太の暑さをじながらも、じる風の心地よさに先ほどまで熱ったが落ち著いていく。

手綱を握るレオンの左手の薬指にる獅子の指にそっとれた。

「正直に言って良いですか」

「ん？」

「ずっと、フィローラ皇に嫉妬してたんです」

「え？」

初めて彼に會った時のが蘇るも、言葉は止まらない。

「だって、誰が見てもこの世に存在する人とは思えないくら完璧なでしょう？　天地がひっくり返っても、私はあんなに優雅な仕草はできないし、一生かかってもあんな蕓品のような刺繍なんて刺せません」

「私は、彼をそんな風に見たことなんてないよ？」

優しい聲で、ゆっくり話すレオンの顔を見ずに頷く。

「でも、フィローラ皇と貴方の並ぶ姿があまりに完璧すぎて、私では不釣り合いだってじてしまうから。周りの人たちも貴方達がなぜ結婚しなかったのかって……。聞きたくなくても聞こえてくる會話に、大丈夫、大丈夫って自分に言い聞かせるので一杯です」

けなくて、誤魔化すように笑って言うと、らかい何かが耳を掠めがビクリと跳ねた。

「ヒャイッ」

間抜けな聲を上げつつ、耳にれた何かを思わず振り向いて確認すると、それがレオンのと分かる。

「そうか、私は君を不安にさせていたんだな」

そう言ったレオンの目が、あまりに気を含んでいて、先程の彼との雰囲気の変わりようと、逆にもかかわらず、煌めくダークブルーの瞳に思わずゴクリとが鳴った。

「あの、…レオン」

彼とぶつかった瞳を逸らすことが出來ない。

獰猛な獣に狙いを定められたかのようで、呼吸の仕方すら忘れてしましそうだ。

「君を不安にさせたことを申し訳ないとも思うけれど、君がそんな風にフィローラ皇に嫉妬してくれたことを嬉しいとじてしまうよ」

「ソ……ソウデスカ……」

私の上った聲に、レオンがくすりと笑う姿すら妖しく、全神経が一挙手一投足に集中する。

シルヴィアから落ちないように支えられたレオンの手の熱が、薄いドレス越しに伝わってくる。

きっと私の速くなった鼓は完全にレオンは気づいているだろうと思うと、この場から逃げたくてたまらない。

「これから、毎日。君が目覚めた時から、君が眠りにつくその時まで、君にを伝えると誓うよ。君も、それに応えてくれるだろう？」

そう言って、私の指に嵌ったダークブルーの魔石の指にキスを落とすと、そのが指先に移していく。

「いやいやいや！　無理無理！　無理です！」

応える前に、その気で窒息死決定ですから！

顔に熱が集中するのが分かり、その様を見たレオンにふっと笑われた。

「揶揄って……」

「あはは、可すぎて、もう食べてしまいたいよ」

イタズラっぽい目を輝かせたレオンのが私のそれを塞いだ。

「レオ……」

「君は無理って言ったけど、大丈夫だよ。ティツィは努力の人だから」

そう言って、私の額に、瞼に、頬にキスを落として行く。

「これから一緒に頑張ろう。……奧様」

妖艶に笑ったレオンは、そう耳元で囁くと、私がを上げるまでキスをした。

最後まで読んでいただき、本當に、本當にありがとうございます。

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