《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》

院して、1週間が経った。

だが依然として俺の治療は、思うように行かず。

病院食を口にしても、たった數口で終わってしまう。

「また食えなかったのか?」

宗像先生は何度も同じ景を見て、苛立ちを隠せない。

「はい……味がしなくて」

「味がしないねぇ。わずらいのくせして、格好つけてんじゃないぞ」

「別に、そんな意味では……」

俺だって食おうと思っているのに、け付けないんだ。

「そうか。ま、新宮がそんな狀態なら、私が奪ってもいいってことだな」

「へ? なにをですか?」

「ふふふ……」

俺がそう尋ねても、先生は不敵な笑みを浮かべているだけ。

宗像先生は自のスマホを取り出すと、誰かと電話を始めた。

「おう、私だ。この前教えたところまで持って來てくれ」

通話を終えると、先生はニヤニヤ笑いながら、俺を見つめる。

「ヒヒヒッ」

き、気味が悪いな。

病院の食事は、いつも早めに屆けられる。

これぐらいしか、楽しみがないから……だとナースさんが話してくれた。

今日の晝ご飯はカレーライス。

味そうだが……やはり今の俺じゃ無理だ。

ひと口で諦めてしまう、ヘタレぷり。

その時、部屋の扉が勢い良く開いた。

宗像先生が満面の笑みで、大きな弁當箱を持ってってくる。

「だぁはははっははは! お晝だ、お晝っ! やはり外食よりも、人が作った料理に限るぞ!」

この人に料理を作ってくれる相手なんて……いないだろ。

簡易ベッドの前に、ローテーブルを持ってくると。

わざとらしく、弁當箱のふたを開いてみせる。

「おおおっ! こりゃすごい! の詰まった弁當だ」

気になった俺は、ベットからを乗り出す。

覗き込んで見ると、確かに作った相手の優しさをじる弁當だ。

タコさんウインナーに、玉子焼き。ハンバーグに焼き鮭。

そして、びっしりと埋められた白米には、大きなハートが何個も並んでいる。

何だ? この異常な子力は。

「いただきまぁ~す!」

と言いながら、ハイボール缶を取り出す宗像先生。

「かぁ~ うめぇ! 今度から毎日これをつまみに飲めるなんて、教師になって良かったぁ♪」

その言葉を聞いて、ようやく気がついた。

先生が持ってきた弁當……アンナが作ったな。

「ちょ、ちょっと! なんで先生がアンナの作った弁當を、食べているんですか!?」

「あぁん? そりゃお前が悪いんだろ。真面目に食事を食べないから、ケガも治らない。一生、ここで過ごす気か? その點滴くんと」

そう言うと、點滴の袋を指差す。

「うっ……それは」

「これを食いたいなら、さっさと病院食ぐらい食べてみせろ。まず、それからだ」

クソっ!

人の中扱いかよ……。

「分かりましたよ! 食べます、食べりゃ良いんでしょ!?」

「おほ~ 怒ったか? そりゃあ良いことだな。怒るってのも意外とパワーが必要だからな♪」

先生に煽られて、見事この日のお晝ご飯は、全て完食した。

「やりゃあ、できるじゃないか」

「ハァハァ……こんなことを毎日、続ける気ですか?」

「當たり前だ。お前が治るまでずっとな。それから、新宮。忘れていたけど、この弁當を作った本人だが。今この病院の1階にいるぞ」

「えっ!? アンナが?」

驚きのあまり、飛び起きるが、先生にを抑えられた。

「この空になった弁當箱が帰ってくるのを、ひたすら待っているそうだ……私ではなく、新宮が食べてくれると願ってな」

「そ、そんな……じゃあ先生は、騙したんですか? アンナを」

「騙したというより、お前らのためを思ってやった行だ。結果的に、新宮も病院食を完食できたし、古賀も安心できるだろう」

「……」

確かに先生の言う通りだ。

例え、汚いやり方でも。

「古賀は喜んで引きけてくれたぞ。『タッくんのためなら、毎日行きますっ!』てな」

「アンナ……」

俺のせいで、こんなことに。

「ということでだ! 新宮、お前がしっかり食べられるまで。私はずっと古賀の妻弁當を毎食、奪ってやる。あぁ~、今から夜が楽しみだ。あいつの作る料理はつまみに丁度、良いんだよ」

「こ、この……」

拳を作ったが、すぐに引っ込める。

込み上げてくる怒りは、全て明日へ向けよう。

そのために、どんな料理でも腹にぶち込むんだ。

それから毎日、目の前でアンナの弁當を、味そうに食べるところを見せつけられた。

宗像先生に煽られたからではないが、俺も負けじと病院食を殘さず、完食する。

日に日に、重は戻っていった。

ただ病院の食事を食べているだけなのに、重は55キロほどに上がっている。

元の重より、まだ痩せているが……。

隨分、かしやすくなった。

並行して、折れた左腳のリハビリも開始している。

この調子で行けば、あと3週間ほどで退院できるらしい。

だが、そんな俺を見ても、宗像先生は満足していなかった。

むしろ、不満そうだ。

食事を取れるようになって、も回復してきたところで。

先生が今まで溜まっていたレポートや、前期のテストを持ってきた。

退院する前に全て書き終えろ、と注意された。

仕方なく、デスクテーブルの上でレポートの空欄を埋めていく。

以前は公式のラジオを聴きながら、問題を解く……というか、答えを教えてもらい。

レポートを書いていたが。

今はもうそれすら、面倒くさくなって、教科書も読まずに、答えを書いている。

前後の文章を読んでいれば、なんとなく分かるからだ。

だって所詮は、義務教育の下級生レベルだよ?

一人で黙々と勉強を続けていると、部屋の奧から扉をノックする音が聞こえてきた。

ナースさんの問診かな?

でもいつもより、早いし……。

今は宗像先生が部屋にいないので、大聲でんでみる。

「はーい! 開いてますよ!? どうぞ~!」

「……あの、本當にっても良いかな?」

ん? なんだこの控え目な話し方は。

「失禮ですが、どなたですか!?」

「お、オレだよ……タクト」

「はっ!?」

まさか……でも、アイツとは絶したはずだ。

「ミハイルだよ、ってもいい?」

「……ああ、もちろんだ! いや、ってくれ!」

なんてこった。アイツ自ら、赴いてくれるなんて。

そうか。俺が通事故にあったから、心配してくれたんだ……。

この時、俺の心臓は高鳴っていた。

大きなも、どんどん塞がっていく気がする。

俺にとって、そんなに大事な人間だったのか……。

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