《骸骨魔師のプレイ日記》ノンフィクション

普通の人間(ヒューマン)だと思っていたカキアゲのから昆蟲が現れ、その昆蟲がカキアゲの正だと暴した。この衝撃的過ぎる出來事から立ち直った私達は、とりあえず商船の船倉から移することにした。

先は商船にある船室の一つである。そこは船倉の直ぐ側であり、そこを選んだコンラートはカキアゲをまだ信用していないのは間違いない。私達はそれを察しているのだが…當のカキアゲはジゴロウに夢中で気付いていないようだった。

「…つまりゴシップ雑誌、『ノンフィクション』の記者は全員が魔だってことかァ」

「ええ!そういうことになります!」

ジゴロウに夢中ならばジゴロウに話をさせれば何でも喋るのではないか。そこで私達はジゴロウにメッセージを送り、その容をジゴロウに聞いてもらうことにした。

心底嫌そうな表になったジゴロウだったが、カキアゲから報を聞き出すことの重要は理解している。それ故に非常に不本意ではありつつもカキアゲに々と質問していた。

そうして聞き出した事実もまた驚くべきモノだった。ゴシップ雑誌である『ノンフィクション』の記者達は全員が魔プレイヤーであるというのだ。ちなみにカキアゲは見た目の通り昆蟲系の魔で、生きている狀態の自分よりもレベルが低い相手に寄生するという生態だという。

ただし、戦闘力は皆無だと言っている。同格の魔師に杖で毆られただけでも死んでしまうほど脆いと言う。盛っているだけな気もするが、あくまでも寄生しているのが前提という生態なのだろう。

一応、寄生した相手の能力(スキル)をそのまま使えるようなので、寄生狀態ならば全くの無力ではない。乗り換えれば戦士になることも魔師になることも可能なのはし面白いと思う。他人には名前(ネーム)のみカキアゲに映るらしく、人間(ヒューマン)のに寄生していればアールルを主神とするリヒテスブルク王國の街にも出り可能だと言っていた。

しかし寄生した相手は寄生した時點で死亡扱いなので、寄生対象を長させられないようなのだ。じっくり自分好みに鍛えることは出來ないらしい。

さらに寄生した相手から出してしまうと寄生していた相手は完全な死になって二度と使えなくなると言った。どこまで信用して良いのかは不明だが、今の狀況はカキアゲ的には急所を曬しているということ。何が何でもジゴロウに信用されたいという

ただ、アマハ曰く魔だと聞いて納得する點もあるらしい。『ノンフィクション』の最大の魅力である、どうやって撮影したのかわからないアングルからのスクリーンショット。これが魔であれば可能だと思われるからだ。

「浮かんでたらバレバレなはずの空中からとか、人が絶対にれないくらい狹い隙間からとか…どうやって撮影したのかわからない撮影技ってことで評判だったのよ。そうじゃないとゴシップ雑誌なんて知らないわ」

「偏見かもしれないけど、アマハってゴシップに興味はなさそうだもんね」

アマハは肩を竦めてコンラートに肯定した。謎の撮影技についての評判は知っていて気になっていたが、記事そのものには興味がなかったらしい。正直、私も特段に興味はないなぁ。

ただ、それまでジゴロウに夢中だったカキアゲはここに來て初めてこちらに視線を向ける。彼は腹部の先端から生える繊維を広げているのだが…それが怒っているということだけは何となく伝わってきた。

「記者を前にしてウチの雑誌を馬鹿にするなんて良い度だな?ボロクソに書いてやろうか!?」

「報復の手段が最低ね。それに私達って人類プレイヤー間じゃ評判悪いし、もう今更だわ」

カキアゲはジャーナリスト神などかなぐり捨てた手段を用いて恫喝してくる。だが、アマハは鼻で笑いながら全く気にしていなかった。というのも彼の所屬する『Amazonas』は居場所がなくなって逃げて來たのだ。戻るつもりもないようだし、評判を下げられてもノーダメージなのである。

嘲笑するような態度が気に食わなかったのか、カキアゲはなおも何か言おうとしている。だが、その前にジゴロウの拳がカキアゲの眼の前に振り下ろされた。

「ウチのを脅すたァ、どういう了見だァ?」

「ヒィッ!?や、やだなぁ。脅すだなんて人聞きの悪いことはしませんって!はは、ははははは」

ドスの利いた聲で問うジゴロウに、カキアゲは怯えながらも想笑いをして誤魔化そうとする。ただでさえジゴロウは不機嫌で顔が険しいのだから、いくらファンだとしても怯えが先に來てしまったようだ。

それからさらに『ノンフィクション』について詳しく聞き出してみる。全員が魔ということだが、それはカキアゲと同じ寄生昆蟲の魔ではない。むしろ彼のように堂々と人類の街にることが可能な人材はないという。

しかし、飛行したり隠れ潛んだりと取材対象の意識外に出る手段を持っていることは共通しているそうだ。適材適所に記者を派遣してスクープ…と本人は言っているゴシップ寫真を撮影していたようだ。

「ふーん。で、何だってコンラートの船で航しやがったんだァ?」

「商人系プレイヤーでもブッチギリの富豪、それもプレイヤーをほとんど抱えていない『コントラ商會』の闇を暴く!的なノリなら部數が取れると思ったんです。面白そうでしょ?」

こいつ…航者という立場でそれを言うのか。自分が航という犯罪で他者に迷をかけておきながら、さも上質な企畫を思い付いたとばかりに得意げ笑いつつ自分の雑誌の部數について語る。更にデマを吹聴すると脅して有利にことを運ぼうとした。何様のつもりだ?

コンラートの顔は優しげな微笑がり付けられているが、目だけは全く笑っていない。うわぁ…見たことないほど怒っているぞ、これは。カキアゲのデリカシーのなさはどうなっているんだ?

アマハも目を細めて軽蔑の眼差しを送っている。地獄のような空気なのだが、カキアゲだけは意気揚々と企畫の細かいところ語ろうとしていた。

「知るかボケ。他所様の船に勝手に忍び込んだ挙げ句、ヘラヘラ笑いやがってよォ…」

聞かされているジゴロウは耐えられなかったらしい。骨にイライラしているのだが、カキアゲは何が原因で機嫌が悪いのか理解出來ていない様子だった。

こいつには何を言っても無駄であろう。コンラートとアマハも同じ想だったのか、怒りや軽蔑というを越えて完全なる無表になった。きっと「こいつと分かり合うのは不可能だ」と相互理解を諦めたのだ。どうしてわかるのか。私も全く同じであるからだ。

「肝心なのはこっからだァ。俺達のこと、言いらすん…」

「それはもちろん!大々的に宣伝させて…ヒィッ!?」

話を最後まで聞く前に意気揚々と死ぬほど迷なことを口走った。その瞬間に船室にいた全員が急に殺気立つ。ただ、私は慌ててジゴロウの前に杖を差し込んだ。そうしていなければ今頃、怒りのままにカキアゲを叩き潰していたことだろう。

「ここからは私が話そう。いいな、兄弟?」

「助かるぜェ、兄弟。俺ァもう限界だ…外の空気を吸って來らァ」

苛立ちが限界に達したジゴロウは船室からさっさと出ていった。面倒臭い役割から解放されて清々したのか、その足取りはとても軽い。これは最強のプレイヤーと目されるジゴロウがカキアゲによってある意味で撤退に追い込まれた瞬間なのだが、背中をコンラートとアマハは羨ましそうに眺めていた。

何にせよジゴロウによって十分な報は得られた。話を聞きながら考えをまとめていた私は、船室の扉がバタンと音を立てて閉められてから口火を切った。

「さて、カキアゲ君。大前提の話をさせてもらう。ここはし特殊な環境でね。あまり喧伝してしくはないんだ。だから取材はけ付けていないし、これからもけ付ける予定は基本的にない」

「おい、何だよそれ!ってかお前は誰なんだよ!ジゴロウさん相手じゃないと何も話す気はないぞ!」

「彼はジゴロウ君の兄弟分だよ。今さっき、兄弟って呼び合ってたでしょ?」

「察しが悪いわね。そんなことで記者なんて務まるのかしら?」

取材拒否を理由込みで説明したのだが、案の定カキアゲは反発した。そして私の素を問い質すので、コンラートは事実を述べ、アマハは毒のある言葉を投げかける。おい、アマハ。あまり煽るな。

私がファンであるジゴロウの兄弟分だと理解したカキアゲは言葉に窮してしまう。私の口からカキアゲについてネガティブな報を伝えた場合、ジゴロウが相手すらしてくれなくなる可能をようやく察したようだ。

「い、いやぁ。冗談ですって!へへへ…」

「別に怒ってはいない。そして話は最後まで聞け。條件次第では我々について取材することも許可しよう」

「そ、その條件ってのは?」

「今は言わない。君は『ノンフィクション』のリーダーではないのだろう?その人と直接渉したい。この話、けてくれるな?」

私の提示する條件にカキアゲは一も二もなく頷いた。しでもジゴロウへの印象を良くしておこうということだろう。この反応は想定通り…わかりやすい男だ。

それよりも、これで『ノンフィクション』のリーダーと渉の場を設けさせる言質を取った。魔プレイヤーによる記者集団…上手く味方に引き込めれば心強いのではないか。私はこれまでとはの違う協力者を得られる好機に心でニヤリと笑みを浮かべるのだった。

次回は9月15日に投稿予定です。

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