《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》16話 強すぎるご老人のこと

強すぎるご老人のこと

人違いですとんで、古保利さんはあっという間に校舎に消えていった。

・・・絶対人違いじゃないと思う。

あの反応は顔見知りだろう。

「黛さん、古保利さんとはどういう・・・いねえ!?」

橫を見ると、そこに黛さんの姿はなく。

ニコニコしている式部さんがいるだけだった。

「お師匠なら校舎を見學しに行ったのだと思うであります、はい。いつもながら行がお早いでありますなあ」

瞬間移めいたその移、弟子としては慣れっこなのか特に驚いている様子はない。

・・・底が知れねえ、『降魔不流』

「・・・どうしましょっか」

俺は黛さんを案してきただけなので、特に用事はないんだよなあ。

あ、久しぶりにライアンさんの顔でも見に行こうかな。

島からこっち、ご無沙汰してるし。

「一朗太さんのしたいようになさってください!自分は本部に報告に行きますので、後ほど合流するであります!」

あー・・・そういえば教會に行ったからその必要があるわな。

黛さんのインパクトがデカすぎてすっかり忘れていた。

「それでは行ってまいります!」

「あーはい、行ってらっしゃい式部さん」

「―――!!」

そう聲をかけると、何故か俺に背中を向けたまま式部さんがきを止めた。

「・・・あの、その、もう一度言っていただけるでありますか?」

・・・もう一度?

今の、聞こえなかったのか?

「は、はあ・・・行ってらっしゃい、式部さん」

「―――はうぅう・・・!!」

なんで小刻みに振するのこの人。

「っし、式部陸士長!行ってまいりますぅう!!」

かと思えば、式部さんはすごい速さで校舎に駆け込んでいった。

ひええ・・・古保利さんに勝るとも劣らない速度だ。

さすが、ニンジャ。

「・・・なにがなにやらわからんが、とりあえず煙草でも喫おう」

1人殘された俺は、とりあえず一服してからくことにしたのだった。

あ、そういえば式部さん後ほどって言ってたけど・・・今晩はウチに泊まるのか。

當たり前か、バギーは高柳運送にあるんだから。

「ふいー・・・煙草煙草」

ダッシュボードから新品の煙草を取り出す。

うーん、不人気銘柄だからどこに行っても回収できて便利だね。

「お、僕にももらえるかな」

「あー、どうぞどう・・・ぞ・・・?」

車の橫に、さっき校舎に逃げて行ったはずの古保利さんが立っている。

正確には車の橫にあるベンチの影だけど。

「・・・いつのまに」

「ふふふ、『実と見せかけて虛、虛と見せかけて実』・・・単純だけど、これが隠形の奧義ってやつだよ」

何やらカッコいいことを言いながら、古保利さんはこちらへ手をばしている。

臺無しだよ・・・まあいいけども。

「・・・ふう」

古保利さんが煙草に火を點け、何度か喫う。

それからこっちをし睨んだ。

「それにしても田中野くん、キミ・・・とんでもない人を連れてきたもんだねぇ?キミの達人磁石は他府県にまで及ぶのかい?」

「変な風評被害はやめていただきたい!今回俺は無実ですよ!あの人・・・黛さんは式部さんのお師匠さんですってば!」

俺に対して不名譽な罪を被せられそうになったので、全力で否定しておく。

なんだよ達人磁石って。

いやだよそんな騒なモノになんの。

「・・・式部ちゃんかあ~~~~~」

古保利さんは、頭を抱えて座り込んでしまった。

「そっかあ・・・あの足運びに呼吸・・・なんかデジャブをじると思ったらそういうことかぁ~~~~~」

「っていうか式部さん三鈷剣使ってたじゃないすか。あんなロマン武使う流派そうそうないでしょ」

「え?マジ?僕見たことない・・・基本的にキミたちが単獨で戦う時は放置してたし、一緒に作戦行する時はナイフとか拳銃だったもん」

・・・隠してたのか?

それとも使うまでもない相手ばかりだったのか?

・・・いや、普通に考えたらゾンビ相手に集団の自衛が接近戦挑むことはないよなあ。

「・・・あの、それで黛さんとはどういうお知り合いなんです?」

「いや、だから人違いだってば」

「あの反応しといて今更それは無理ですよ」

噓にもなってないじゃないか。

俺に詰問めいたこともしておいてさ。

「・・・ふう、まあいいか。別に隠すようなことじゃないしね・・・あの人と僕は―――」

「―――叔母と甥どすえ?」

「・・・」「・・・」

俺達は視線を合わせた後、恐る恐る後ろを振り向いた。

今まで何の気配もなかったはずだが、軽トラのボンネットの前には黛さんがニコニコしながら立っていた。

気配が・・・気配がマジでねえ。

後藤倫パイセンよりも希薄・・・っていうかもう『無』だ。

「そいで?なんで逃げはったんえ?ボン。わて、悲しわぁ」

「・・・ご無沙汰、しています。伽羅姉さん・・・その、まさかお越しになるとは思わず、気が転しまして・・・」

今まで數えるほどしか見たことのない、死ぬほど真面目な顔で古保利さんが頭を下げた。

まるで、目の前にライオンの群れでもいるように張している。

「まあま、相変わらず恥ずかしがり屋なんやから。前みたいに伽羅ちゃん、言うてぇな」

「・・・僕の記憶が確かなら、言ったことはないです、ええ」

親戚か・・・濃い親戚がいんだなあ、古保利さん。

叔母ってことは親の兄弟か。

アレ?でも古保利さんは『月影流』で黛さんは『降魔不流』だよな?

ああいう系の流派って姻戚関係で相伝されるもんじゃないの?

じゃあ黛さんが嫁りしたか、古保利さんの親がそうしたのか・・・

「ざっと10年振りやろか?えらい長い事ご無沙汰やってんなあ・・・」

「その、最近・・・忙しくてですね」

「あらぁ?10年前からゾンビはん、出てはったんやろか?わて、知らんかったわあ」

「いえ、その・・・まがりなりにも指揮として、ですね、仕事が、忙しくて・・・」

「それでも電話の一つくらいできはるやろ?お母はん、心配しとったえ?婿りしたっきり顔も出さんっちゅうて」

「おおう・・・あの・・・えっと・・・」

・・・こんな古保利さんは初めて見る。

何故か黛さんの前に正座し、脂汗をだらだらかいているその姿は・・・いつも飄々としている姿とかけ離れていた。

っていうか、なんか親に説教されている子供みすらある。

・・・っていうか婿り!?

古保利さんが!?

結婚してたのか!この人!?

「蛍(ほたる)はんが可哀そうえ?あの子は節々の挨拶も欠かしたことあれへんのに、旦那はんがそれやとなあ」

「蛍ちゃんが!?そんなこと僕には一言も・・・!?」

想盡かされても知らんえ?ボンには勿ないええ嫁はんや、あの子は」

「そ、それは勿論・・・」

「あほ、認めてどないしますのや」

・・・なんか、複雑な事がありそうだな、本當に。

田中野一朗太はクールに去るぜ。

この空気、いたたまれない・・・強く生きて、古保利さん。

一瞬、橫目で俺に助けを求めるような視線を送ってきた古保利さん。

俺はその視線に『無理です』と目で返して校舎に逃げ込んだ。

「こぉら、話聞くときは人の目ェ見なあかん、そんなんやからボンはあの時も・・・」

「申し訳ありません・・・申し訳ありません・・・」

ネオゾンビの群れ以上に苦戦していそうなその聲を、背中に聞きながら。

かわいそうな古保利さんを見捨て、若干の罪悪を抱えながら校舎を歩く。

幾度かの合同作戦で俺もそれなりに有名人になったのか、すれ違う自衛や警の皆様が笑顔で會釈してくれる。

こっちは見覚えがないが、向こうからしたら俺の顔って覚えやすいもんなあ。

こんなデカい傷、鍛治屋敷以外で見かけないし。

・・・そして相変わらず避難民の皆様は俺の顔を見てビビりまくっている。

いや、顔だけじゃなくって腰の刀とかのせいもあるだろうけども。

明らかに警でも自衛でも駐留軍でもないタイプの戦闘職だもんな、俺の見た目。

「ママー、あの人・・・」「まーくん!指差しちゃ駄目でしょ!・・・す、すみません・・・」

「あー・・・いえいえ、お気になさらず」

俺を指差した子供を真っ青な顔でたしなめる母親に、俺は下手くそな笑顔で會釈するしかできなかった。

・・・腫イズ俺・・・

『しっ!見ちゃいけません!!』の亜種だ!!

まさか現実世界に存在したとは・・・なんか謎のがあるな。

っと、こんなことしてる場合じゃない。

避難民の皆さんに無用のストレスを與えてもいけないし、俺はとっととライアンさんを探そうか・・・

門の所にはいなかったから、非番だろうか。

森山さんもいないし、知り合いがいないのはキツイなあ・・・

「おじさん!田中野のおじさーん!!」

悶々としながら歩いていると、廊下の向こうから見知った顔が走ってきた。

おお!俺の數ない非戦闘民の知り合い・・・!

「きいちゃん!それに・・・ミチヨさん!!」

俺に駆け寄ってきたのは、璃子ちゃんの友達であり、牙島で知り合った加賀ミチヨさんの孫・・・きいちゃんだ。

嬉しそうに走るその後ろから、ミチヨさんも歩いてきている。

「やっぱりおじさんだ!お久しぶりですっ!!」

きいちゃんは俺の前に來るなり、勢いよく両手を摑んで上下にぶんぶん振る。

「おばあちゃんに良くしていただいてっ!ありがとうございますっ!!」

「おおう、いやいや、むしろこっちがお世話になったんだよ、ほんとだよ?」

その勢いに苦笑しつつ、そう返した。

前から元気だと思っていたが、より一層元気になったな。

ミチヨさんと再會できたのがそれだけ嬉しいんだろう。

「一朗太ちゃん、この前ぶりだねえ」

「ええ、お元気そうで何よりです」

遅れて追いついてきたミチヨさんにも頭を下げる。

なお、まだ両手は振り回されている。

「今日はどうしたの?」

「えーと、ここに知り合いがいるって人と知り合ったんで・・・連れてきたんですよ」

「あらあ、お仕事熱心ねえ」

お仕事・・・お仕事かなこれ?

黛さんとはマジでたまたま知り合っただけだし・・・どっちかというと式部さんの功績じゃないかな。

「ははは・・・ミチヨさん、それでどうです?ここにはもう慣れましたか?」

「ええ、部屋も思ったより広くってねえ・・・紀伊子もいるし、畑もいじれるし、贅沢させてもらってるわあ」

「おばあちゃん、すごいんですよ!畑のことなら何でも知ってるし、作業も早くって・・・」

「あらあら、恥ずかしいわあ」

おばあちゃんが褒められて嬉しいのか、きいちゃんは真っ赤な顔で俺に教えてくれる。

牙島の畑、見事だったもんなあ・・・ここでもいかんなくそのスキルが発揮されてるってわけか。

「一朗太ちゃんも元気そうでよかったわあ。朝霞ちゃんは元気?」

「週4で俺の布団に潛り込むくらいは元気ですね、ええ」

「ふふ、元気みたいねえ。あの子、島にいる時はいつでも一朗太ちゃんにくっ付いてたから」

くっ付いてるというか・・・巻き付いてるというか・・・

それが元気の指標になってるのもどうかと思うな、俺。

「あっ!いけない・・・おばあちゃん、もう行かないと!」

何か予定があったのか、きいちゃんが何かを思い出したように言う。

そりゃ、引き留めてまずかったな。

「あらあらそうだったわ・・・一朗太ちゃん、今度は朝霞ちゃんも連れて來てねえ。お茶菓子くらいは出せるからねえ」

「それは、是非とも。じゃあなきいちゃん、元気そうで安心したよ・・・璃子ちゃんにも言っとくからな」

「はい!おじさん、またね~!」

きいちゃんとミチヨさんは俺に深々と頭を下げると、仲良く手を繋いで去って行った。

・・・よかったなあ、2人とも。

ほっこりとした気持ちを抱え、俺は行く當てもなく歩き出すのだった。

・・・かっこよく言ってるけど、実質ただの徘徊なんだよなあ・・・

ライアンさんイズどこ?

「センセイ!センセーイ!!」

「やっと會えた・・・」

當てもなくさまようことしばし。

『誰かに聞けばいいじゃん』という超初歩的な事実に気付いた馬鹿な俺は、通りがかりの自衛にやっと聞いたのだった。

その自衛が教えてくれた校庭に向かうと、そこには駐留軍のお兄さんお姉さんが集まっていた。

いつぞやのデジャブをじていると、俺はすぐさまライアンさんに見つけられた。

俺、目立つし。

土煙を上げながらこちらへ駆けてくる彼は、どっからどう見ても元気そうである。

牙島での負傷はすっかり治っているようで、包帯なんかもしていない。

「ハロー、ライアンさん。お元気そうで」

「ゲンキデス!超ゲンキ!!イッチバーン!!」

どっかのプロレスラーよろしくそう言った彼は、まさに元気にあふれていた。

「センセイも!オゲンキソーデ、ナニヨリ!デス!!」

「ははは・・・今日は訓練か何かですか?」

周囲の駐留軍の皆さんは、思い思いにかしている。

筋トレや走り込み、それに2人組での取りめいたことまで。

訓練と言うより、運機能維持のための自主トレかなにかかな?

「ハイ!今日ハグランドマスター、キテクレテマース!!」

「・・・ぐらんどますたあ?」

なんだその不穏當な敬稱は。

・・・ヤバい、凄まじく嫌な予がする気がしないでもない。

ここは一刻も早く適當な理由でこの場を去らなければ!!

「―――おや、お久しぶりだね。まあし遊んでいきなさい」

・・・大魔王からは逃げられない!

無職知ってた!!

突如生まれた背後の気配に振り返ると、そこには・・・神崎さんのお祖父さんこと、花田弦一郎さんがいた。

いつもの洋裝と違い、今日は白い道著に黒い袴といった格好である。

見たじは、合気道系の服に見えるが・・・

「・・・いいええ、俺なんかじゃ邪魔になるでしょうから・・・へへへ」

俺が冷や汗をかきながら逃げようとすると、弦一郎さんはらかく微笑んだ。

「では南雲流に、『挑む』よ。儂がね」

「おおう・・・おおう・・・」

そう言われちゃ・・・どうしようもない。

逃げてはならん。

負けても死んでもいいが、逃げてはいかんのだ。

おのれ南雲流の初代様よ。

なんでこんな理念なんて考えたんだよ!ちくしょう!!

「『みんな、し遊ぶからね。ちょっと場所を開けてくれないかい?』」

「「「ハイ!!ダイセンセーッ!!!」」」

弦一郎さんが流暢な外國語で何か言うと・・・周囲の皆様が運を瞬時にやめてそう返した。

ダイセンセーときたよ・・・弦一郎さん、あなた一なにしたんですか。

あれよあれよという間に、駐留軍の皆さんが円陣を組むように散らばった。

俺と弦一郎さんは、その中心で向かい合っている。

「いやあ、たまに出稽古はするものだね。まさかキミと手合わせできるとは」

「・・・俺は今、外出したことを死ぬほど後悔しています」

「トシとやり合ったと聞いてねえ、楽しみにしていたんだよ」

・・・花田さん!!何喋ってるんですか!!!

「さて・・・では徒手でいいのかい?」

自然で立ちながら、弦一郎さんが言う。

・・・一部の隙も見當たらない。

「・・・それでは失禮にあたりますので、これを」

腰の兜割をでる。

『魂喰』は、ライアンさんに預けている。

アレは悪人とか外道を斬るためのものであって、弦一郎さんに向けるもんじゃない。

「嬉しいねえ、手加減なしか」

「加減して勝てる相手では、ないので」

正直、俺の徒手の腕前はそんなにいいもんじゃない。

初見のチンピラ相手には十分通用するが、この人にとっては通じないどころか失禮だ。

相手は半世紀以上に渡って武に磨きをかけてきた、言わば化け

師匠の近似値みたいなもんだ。

そんな相手に・・・手加減?

はは、冗談にもならねえ。

力が強い方が勝つなら、この世に武なんてものは存在しないのだ。

若いとか、年寄りだとか・・・そんなレベルの話じゃないのだ。

「―――勝つ、と吹くか・・・いいね、実にいい」

なくとも、俺の目の前にいるこの人は別だ。

殺気というか、気配が・・・背後で渦を巻いている。

こんな相手に出し惜しみするなんて、自殺と同義じゃないか。

ごくり、と。

誰かのが鳴るのが聞こえた。

俺達は向かい合う。

兜割を抜き、ゆっくりと正眼に構える。

弦一郎さんは、両手を軽く腰から離した狀態だ。

自然だが、無防備ではない。

「南雲流・・・田中野、一朗太」

影風神流・・・花田弦一郎」

「いざ」「參る!」

先手を取って地面を蹴り、上段に移行しながら間合いを詰める。

作戦?後の先?見切り?

そんなもんはドブに捨てた!!

生半可な策を弄して勝てるような相手じゃない!!!

俺の、俺にできる最高のきをぶつけるだけだ!!

劣等生ながら積んできた技を、ぶつける!!

「っしぃいい・・・ああああっ!!」

踏み切りながら空中で振り上げ、著地と同時に斬り下げる!

最短最速の斬撃、これしかない!!

「―――」

間合いにった瞬間、弦一郎さんの口元が緩んだ。

が、俺の振りの方がもう何しても速いぞ―――!!

回転。

地面。

空。

地面。

「っが!?」

気が付くと、背中を強かに地面に打っていた。

なに、が、起きた!?

俺は、今何を・・・!?

「っくぅう!!」

すぐさま起き上がると、弦一郎さんはその場から一歩もいていなかった。

・・・だが、足元の地面が円狀に抉れている。

恐ろしく、深い踏み込みだ。

「おや、が上手いね・・・十兵衛の教えかな」

弦一郎さんが微笑んでいる。

「それだけは、及第點を貰いましたよ・・・師匠にね」

下段に構える。

が、前に出る。

「っしゃあああっ!!!!」

を折りつつ橫回転。

足を、薙ぐ・・・と見せかけて!

狙いは、腹ァ!!

南雲流剣、『片喰』!!

加速した剣先が、斜めの弾道を描いて走る。

これは、直撃コース―――!!

「元が速い、威力もある」

鍔元に、弦一郎さんの手がかかる。

なんて、拳速・・・ッ!?

「だから」

俺の斬撃のベクトルが、不可思議に加速する。

「こんな老人でも」

必要以上に加速し、逸れた斬撃が虛空を薙ぐ。

「力が『もらえる』」

同時に、掌が。

鳩尾に。

「というわけ、だ」「っか、は・・・!?」

を、衝撃が突き抜けた。

俺の、攻撃が、そのまま・・・、に!?

影風神流、『転(まろばし)』―――いい技だろう?」

その嬉しそうな聲を、俺は吹き飛ばされながら聞いていた。

その後も、散々打ちかかっては散々に転ばされた。

これは返せないだろうっていう斬撃でも、弦一郎さんはこともなげに返す。

その度に俺は地面を転がり、土埃まみれになった。

だけど、楽しかった。

師匠との稽古を思い出して、心の底から楽しかった。

何を放っても、どんな技を使っても。

笑っていなされる経験は、貴重だ。

「も、もう、もう一本、ん・・・」

震えながら構える。

目線はぐにゃぐにゃ、幹はガバガバだ。

だけど、戦意だけはある。

「殘念、時間切れだ。いやあ、最近の若者にしてはが―――」

戦意だけはあるが、さすがに失神には勝てなかったのだった。

それきり、俺の意識は闇に沈んだ。

ああ畜生、爺さん連中が・・・強すぎる。

・・☆・・

「・・・アレやな、茜ちゃん。アンタが惚れたのは、あの姿やね」

「・・・はい、はいっ!!一朗太さんは、やっぱり世界で一番・・・世界で一番格好いいでありますぅう・・・ひぐっ!」

「タオルがビシャビシャやねえ。難儀な男はんに惚れたもんや」

「・・・難儀なに惚れられた、とも言うんじゃないですかね?」

「いけず。そんなんだからボンはアカンのや」

「・・・せやけど、一朗太はんはホンマに難儀や。・・・茜ちゃん、あんじょう、お気張りやっしゃ」

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