《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》

他の高校の男子生徒たちに話しかけられている時って、どうにも楓のところに行きづらいな。

「ねぇ、暇なら俺たちと一緒に遊ぼうよ」

しくらいなら、いいでしょ?」

「俺たちも、ちょうど暇でさ。これから遊びに行こうと思っていたところだったんだよ」

そう言って付き纏ってくる男子生徒たちを、どう対処したらいいものかと悩んでしまう。

俗に言うナンパなんだけど、こうもしつこいとさすがの私でもイライラしちゃうかも……。

現に傍らにいる奈緒ちゃんが不機嫌そうな表を浮かべている。

「ねぇ、香奈。無視して行くことはできないの?」

と、小聲で言ってきた。

男子生徒たちには聞こえていないみたいだから、私と奈緒ちゃんが彼らを無視しようとそのまま歩いていても構わずついてきている。

──さて。どうしたものか。

そんなことを考えていたら、ふいに男子生徒たちの1人が私の腕を摑んできた。

「無視しないでよ。ちょっとでいいからさ」

それはちょっと強引な気もするんだが。

しかし、このまま摑まれたままでいるのも面白くはない。

私は、つとめて笑顔のままで彼らの言葉に応じる。

「ごめんね。あなたたちと一緒に行くことはできないかな。遊ぶのなら、他のの子をって」

「あたしも香奈と同意見だよ。そんな安いナンパには引っかからないから──」

「そんなこと言わないでさ。俺たちと遊ぼうよ」

「あんまりしつこいと嫌われるよ」

奈緒ちゃんは、そう言って私の腕を摑んでいる男子生徒の手首を摑んで、そのまま捻りあげる。

「いてててっ!」

男子生徒は、なすもなくけない聲をあげていた。

他の男子生徒たちは、それを見て呆然としている。

奈緒ちゃんは、こう見えて力の強い男の人の対処法を知っているのだ。

私がやってもよかったんだけど、どうしてもね。

楓が來てくれるものかと期待しちゃうから。

男子校から離れてるから、來るはずもないのに。

奈緒ちゃんが離すと、その男子生徒はそのまま餅をついていた。

「あたしたちには予定があるの。だから、あなたたちとは付き合えないんだ。…の子と遊びたいなら、他を探して」

口調は穏やかだったが、言い方はきついかもしれない。

奈緒ちゃんは、その辺りは結構厳しいから、実力行使でいっちゃうところがあるからな。

それでも彼らにとっては、良かったかも。

私としては、やんわりと斷りたかったんだけど。

私の腕を摑んで強引に言ってくる人のいには、奈緒ちゃんの斷り方が一番か。

沙ちゃんとか理恵ちゃんがいたら、よけいにややこしくなってたかもしれない。

「うぅ……。向こうに行こうぜ」

「おう……」

男子生徒たちは、これ以上になにかを言ってくることなく、あきらめた様子で私たちから離れていった。

「ありがとう、奈緒ちゃん」

「別にいいよ。これから楓君と一緒に帰るんだし。全然気にしてなんか──」

「やっぱり弟くん狙いかぁ。なんとなくわかってはいたけど……」

「香奈だって同じでしょ?」

「それはまぁ……。同じって言えば同じだけど……」

そんなことを言われたら、素直にそう返すしかない。

奈緒ちゃんも楓のことが大好きみたいだし。

「だったらいいじゃない。あたしも香奈も楓君のことが大好きなんだから──」

「それでいいのかな? いつかは決めなきゃいけない時が……」

「それは楓君が決める事だから。あたしたちは、いつもどおりに接するだけだよ。たとえあたしが選ばれなくてもね」

「でもエッチなアプローチはする予定なんだ?」

私は、悪戯っぽい笑みで奈緒ちゃんを見る。

奈緒ちゃんは、私の笑みを見てなにかを観念した様子で軽くため息を吐く。そして、微苦笑を浮かべて言った。

「もう。香奈には敵わないなぁ」

気のせいか頬が赤くなってる。

ひょっとして図星だったのかな?

制服のスカートの元々の短さと相まって、かなり積極的なじがするが、それは間違いないんだろう。

「ちょっとだけだよ。あんまり強い刺激には慣れてないから、優しくね」

「わかってるって。あたしも、そこまでのスキンシップはしないよ」

そんなもじもじとした態度で言われてもな。

信用していいのかどうかわからない。

「わかってるんなら、いいんだけど……。不安だなぁ」

「そんな顔しないでよ。あたしだって、香奈の斷りなしに楓君のことを襲ったりしないって」

「襲う気だったんだ……」

「たとえばの話だよ。たとえばの……。本気にしないで」

奈緒ちゃんは慌てた様子で私に言う。

よけいに怪しいんだけどな。

なんだかんだ言いながらも、男子校にたどり著くのは早いものだ。

ここまで來るのがあっという間な気がする。

しかし、いつものことながら、校門前に楓の姿はない。

きっとまだ學校にいるんだろう。

「楓君って、委員會とかはってないよね?」

奈緒ちゃんは、いきなりそんなことを訊いてきた。

前にも同じことを聞かれたような気もするが、そこは気にしないでおこう。

「たしかってないと思ったけど……。どうかしたの?」

「ううん。別に……。なんとなく──」

「そっか」

私は、いつもの奈緒ちゃんに戻ったことを安心しつつ相槌をうった。

暇だからといって、校門前に座り込んだりはしない。

ただ黙って待つだけだ。

そうなると必ずと言っていいほど男子校の生徒たちから話しかけられてしまうんだけど……。

「今日も、周防を待ってるの?」

「そうだけど。なにか?」

「いや、別に……」

私たちが楓のことを待っているのを知っているのか、男子生徒たちはこれ以上は特に絡んでこない。

さすがに顔を覚えられてしまったみたいだ。

しばらく待っていると、帰り際にこっちに気づいた楓が駆け寄ってきた。

「お待たせ、香奈姉ちゃん。奈緒さんも──」

「遅いぞ! まったくなにをやってたんだか──」

私は、そう言って楓に抱きつく。

「あ、ずるい。あたしも──」

それに習ってなのか奈緒ちゃんも楓に抱きついた。

「ちょっ。香奈姉ちゃん! 奈緒さんまで──」

そんな慌てなくてもいいのに。

もう慣れてるはずなんだけどな。

「さて、一緒に帰りましょうか」

「今日こそは、あたしの家に集合だね」

奈緒ちゃんは、嬉しそうにそう言った。

奈緒ちゃんの家に集合する約束なんてしたっけ?

「そうだったっけ?」

「うん。今決めたの。今日は、あたしの家で遊ぶんだ」

「奈緒ちゃんの家って、何かあったっけ?」

「特に何もないけど……。まぁ、たまにはいいじゃない。あたしの家に來てくれたって──」

「うん。私は別にいいよ。弟くんは、どうする?」

「僕も別に構わないよ。奈緒さんがいいのなら」

楓は、どこか張した面持ちだ。

の子の家とか、あんまり行くこともないからね。

當然と言われれば當然なのだが。

「それじゃ、決まりだね。これからあたしの家に集合ってことで」

奈緒ちゃんは、ぐいぐいと腕を引っ張っていく。

なにも起こらないのなら、特に問題はないだろう。

楓だけならともかく、私までつれていくっていうところに怪しさはあるけど……。

ここは奈緒ちゃんを信用するとしよう。

    人が読んでいる<僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください