《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》
「琢人くん、作品名なんだけど。もうこちらで勝手に決めているんだけど。いいかしら?」
「まあ、いいですけど」
「シンプルに『タクトくんとミハイルくん』がいいと思うの♪」
まんまやないか。
ていうか、本名が使われるのか……。
しかし、あの畫で名前はバレてるし、いいか。
「わかりました。大丈夫です」
「ホント? 良かったぁ♪ あとね、ペンネームも改名しようと思うの。さすがにBL作家が、DO・助兵衛じゃ下品だもの」
名前まで変えられるのか。
ていうかBLもある意味、下品な部類では?
「じゃあ、どういう名前なら良いんですか?」
「実はそれも前から、考えているのよ~ 今回の作品は二人の日常を、赤々に描く本のBL小説でしょ? だから、古賀 アンナというペンネームがぴったりよっ♪」
それを聞いて、俺は大量の唾を吹き出す。
「ブフッーーー!」
まさか……俺に裝させるつもりか?
「偽りでもアンナちゃんは、二人が作り上げたの原形でしょ? もったいないと思うの、このまま捨てるには……。琢人くん自が告白の時、『男のミハイルが良いと』斷言してしまったし」
「確かにそうですが……なぜ俺がアンナの名前を継ぐのですか?」
「だってほら、今回はミハイルくんからもしっかり許可を得て、二人のおせっせを描くからさ。つまり共同ペンネームね♪」
「なるほど……俺たちの名前ってことですか」
それなら、良いかもな。
アンナというは、今後リアルでも會うことは無いかもしれない。
俺としても、寂しくじていたところだ。
思い出として、彼の名前を使うってのも一つの手だな。
「ところで、琢人くん。話は変わるのだけど、あなたこの前、通事故を起こしたんでしょ?」
「ええ、どうしてそれを知っているんですか?」
「ガッネーから、話を聞いたのよ」
「そうですか……それがどうしたんです?」
俺がそう問いかけると、倉石さんの目つきが鋭くなる。
「琢人くんって、今も新聞配達をやれてるの?」
ギクッ! 全てを見かされているような気がした。
「いえ……あの事故が原因で、クビになりました……」
「やっぱりね。じゃあ、尚のことお金が必要でしょ?」
「はい、おっしゃる通りです……」
その場でうなだれる俺を見て、倉石さんはローテーブルの上に、1枚の書類を置く。
「琢人くんがいくら人気作家でも、すぐにお金は払えないわ。だけどうちで雇うことなら、出來るわよ」
「へ?」
俺は耳を疑った。
「將來、有なBL作家をこんなところで潰したくないの。だから、うちの編集部でバイトとして、雇ってあげる」
「マジですか!?」
「ええ、やる事は私のお手伝いぐらいしか無いけど……」
渡りに船とは、このことだ!
バイトでもありがたい。
「じゃあ、よろしくお願いいたします! 何でもやらせてください!」
そう言って契約書に、サインを書こうとしたら、倉石さんに釘を刺される。
「いいの? そこに琢人くんの名前を書けば、片道切符よ?」
「どういう意味ですか?」
「あなたには、將來ここの正社員になってもらいたいの」
「しゃ、社員ですか?」
「ええ……いくら売れている作家でも、不安定な職業でしょ? だから兼業作家でいてほしいの。社員になれば、安定した収で暮らしていけるじゃない」
「なるほど……」
倉石さんの説明を聞いて、理解したと思った俺はボールペンに手を取るが……。
ビシッと平手で叩かれてしまう。
「話はまだ終わってないわよ。社員になるためには、最低限の資格が必要なの。採用基準は簡単、大卒よ。つまり、琢人くんはまだ高校生だけど。卒業後には大學へ進學してもらうわ!」
「え……俺、進學するつもりなんて、無いですよ?」
いきなり大卒の資格がいると聞いて、持っていたボールペンを手放す。
冗談じゃない。
あんなバカ高校でも、辭めようかと迷っていたのに……。
「琢人くん! あなただけの問題じゃないでしょ? するミハイルくんのために、大學ぐらい出なさい。たった4年頑張れば、正社員になれるのだから!」
「でも……」
「じゃあ、可いミハイルくんを大學に行かせる? あなたはそれでいいの!?」
おバカなミハイルじゃ、試試験で挫折するだろうな。
仕方ない。覚悟を決めるか……。
「わかりました。高校を無事に卒業したら、大學を目指します! どんなアホ大學でも良いんですよね?」
「ええ、いいわよ~ 大卒じゃないと給料も安いしね♪」
はぁ……結婚が決まって、浮かれていたけど。
高校が終わっても、またガッコウか。
※
晴れて俺はBL編集部から、古賀 アンナとしてデビューが決まり。
また倉石さんにバイトで雇ってもらうことになった。
當分、金の心配は無いだろう。
高校を卒業するまでは……。
各書類に、自の名前を書いたことで全て契約が立した。
「嬉しいわぁ~ 琢人くんがうちの編集部に來てくれてぇ~♪」
「ははは……よろしくお願いいたします」
「そんなに固くならないでよ~ もう人気者でしょ? アンナ先生は♪」
「……」
これから、そう呼ばれると思うと辛いな。
応接室から出ると、倉石さんが編集部にいた陣を集める。
「みんな~! 聞いてぇ、琢人くん……いや古賀 アンナ先生が、今日からうちで連載することになったから、仲良くしてねぇ!」
「「「は~い♪」」」
誰も俺が、アンナという名前に違和を持つことなく、けれてくれる。
むしろ、男としては見てくれない。
たくさんのに囲まれて。
「アンナちゃんは、ここのデスク使って」
「お菓子とか好き?」
「こっそりでいいから、ミハイルくんのキス。味を教えてしいな♪」
などと、完全に子會のノリになっている。
※
とりあえず、今日は特に仕事がないので。
また改めてプロットや設定を、書いて來てしいと倉石さんに頼まれた。
それとは別に、BL編集部が刊行している雑誌でエッセイを書いてしいと頼まれた。
例の畫騒ぎで、腐子の人たちが興味津々らしい。主に俺の観など。
忙しくなりそうだ……。
帰り際、倉石さんに聲をかけられる。
「あ、待って。琢人くん!」
「へ?」
振り返ると、大きな紙袋が目にった。
どこかで見たことがあるような……。
「これ、持って帰って」
「なんです、それ?」
「ガッネーから頼まれてね。預かっていたのよ」
「白金から?」
「私も中は知らないわ。でも琢人くんには大事なものだって……。ちょっと前に『私に何かあったら』って深刻な顔して持ってきたのよ。きっと“気にヤン”の連載に不安をじていたんじゃないかしら?」
まさかっ!? これは赤坂 ひなたの家に宿泊した時、パパさんから頂いた300萬円。
白金のやつ……俺がアンナの正を告白した時から、ちゃんと後のことを考えていたのか。
だから、倉石さんに預けていたのか。
クソッ……ロリババアのくせして、らしくないことしやがる。
「思い出しました。確かに俺が白金に預けたものです……」
「やっぱりそうなの? じゃあ返しておくわね♪」
紙袋をけ取ると、俺はエレベーターへ乗り込んだ。
目頭が熱い。
あんな別れ方になったけど……白金。
今までありがとう。
でも一応、現金の狀態が気になって、紙袋の中を確認する。
『赤坂饅頭』という和菓子の箱が3つっていた。
ひなたパパは、俺を婿養子にしたかったからな……。
箱の蓋を開けると、福沢諭吉の上にメモ紙がっていた。
『DOセンセイへ。ホストクラブで遊んだら、30萬円ぐらい使っちゃいました。なので、今や人気作家のDOセンセイなら安いと思い。ひなたパパに返す時は、ご自で補填されてくださいな♪』
メモ紙をグシャグシャにして、俺はんだ。
「あんのロリババアーーー!!!」
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