《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》207・黃金のために、全てを捨てた竜
──ファフニールが竜島で暴走し、同族どもを殺している。
最初聞いた時、「バカな」と思った。
ファフニールは真っ直ぐなドラゴンだった。ドラゴンのくせに、殺生を極端に嫌がる。
そのような兇行を起こすとは思えなかったのだ。
我は急いで竜島に向かった。
なにかの間違いじゃないか──そう信じて。
しかし竜島に辿り著いた我が見たのは、信じがたい慘狀であった。
島のあちこちでドラゴン達が黃金になっている。一これは……? 疑問に思いつつ島の奧に向かうと、そこで我は見てしまった。
黃金を抱え、一人佇むファフニールの姿を──。
「お前がやったのか……?」
震えた聲で我は尋ねるが、ファフニールから答えは返ってこない。
死んだような目をして、我を見るだけだ。
「どうして、このようなことをやったのだ」
「…………」
問いかけても、やはり答えはない。
何故、ドラゴン達が黃金になっているのかは不明瞭。だが、狀況から考えて、この慘狀をファフニールが作り出したものとしか思えないのだ。
この時の我はまだファフニールのことを信じていた。
『俺の仕業じゃない』
そう答えが返ってくるものだと思って──。
しかしようやく口を開いたファフニールから放たれた言葉は、我の中に殘っていた僅かな信頼を砕くものであった。
「そうだ……全部、俺がやった」
それを聞き、が灼かれるような怒りが我の中で生まれた。
「何故だ! 何故、このようなことをしたのだ! お前がやったというのなら、すぐに同族達を黃金から戻せ!」
「……俺には出來ない。出來るなら、最初からやっている」
どういうことだ?
この力は一方通行なのか?
怒りと同時に混している我に、ファフニールはこう続ける。
「もう……どうでもよくなったんだ。お前にはなにも分からないよ」
「分からない? お前のことだから、なにか考えがあって、このようなことをやったのだろう。どうして、我になにも喋ってくれなかった?」
信頼を裏切られたような気分だった。
ファフニールは諦めたように笑い、さらにこう言った。
「……黃金だ。黃金のために、俺はこのような景を作り出した」
──っ!
そんな巫山戯た理由で、ヤツは竜島を崩壊させたというのか?
詰め寄ろうとする我から逃げるように、ファフニールのがに包まれる。ドラゴン形態に戻ったのだ。
「待て! まだ我の話は──」
ファフニールが地上から飛び立つ。すぐに追いかけようとするが、それを振り払うようにヤツは攻撃を繰り出してきた。
これ以上の追走は無理だと判斷した我は、負け惜しみのようにこうぶ。
「あの森で待っている! お前の勝ち逃げは許さぬからな! 絶対に來い!」
結局、その答えも得られないまま、ファフニールは我の前から姿を消した。
──それから我は何百年も待ち続けた。
その間、ファフニールが言うドラゴンとしての誇り──そして強き者について、ずっと考えていた。
我が思うに、ヤツこそドラゴンとしての誇りを持ち合わせた強き者だ。
我はファフニールを待った。
神のごとき、雄大さを演じた。それが強き者となる一歩になるか分からないが……形からってみようと思ったのだ。
我がファフニールの求める強き者になれば、ヤツが姿を現しそうな──そんな気がしたからだ。
しかしファフニールは來ない。
その間に、何人かの人間が腕試しと言わんばかりに、我の前に現れた。
我は彼らに向けて、言い放つ。
「我(・)は問う。汝(・)は強き者か──」
◆ ◆
「そして二百年ほどが経過した後……ベルカイム王國から、念話を飛ばしてくる者が現れた」
「それが私だったということですね」
「そうだ」
とドグラスは肯定する。
なんということ……。
ファーヴは親友のドグラスになにも告げないまま、竜島にいるドラゴン達を黃金に変えてしまった。
果たして、そんなことが可能なのでしょうか? だけどそれを語るファーヴは目の前にいません。
「黃金のために同族を皆殺しにしたドラゴン──ファフニールのことを、同族どもは黃金竜ファフニールと呼ぶ。ドラゴンなら誰も知っている災厄だ」
「だからファーヴを目にした時、あなたはあれほど怒っていたのですね。愚問かもしれませんが、先日の一件以外でファーヴに會ったことは?」
「ない。同族殺しはドラゴン達にとっても大罪だ。無論、他のドラゴンもファフニールを捜索していたと思うが……捕まったとも殺されたとも聞いたことがない。一、今までなにをやっていたやら……」
顎に手を當て、考え込むドグラス。
ドラゴンの壽命を考えたら、二百年の間生きていたと聞いてもさほど不思議ではありません。
ですが、今までどこに姿を隠していたのか。そして、どうして今になった再び姿を現したのか──ドグラスも分からないようでした。
「だが、これだけは言える」
ドグラスは再び私の顔を真っ直ぐ見つめ、こう言います。
「結局我は、ヤツに一度も勝つことが出來なかった。もしヤツが再び暴れようとしているなら、竜島の慘劇が、今度は世界中で行われるかもしれぬ。そんなヤツを止めることが出來るのは、現狀は汝──そしてナイジェルの二人しかいないだろう」
ドグラスの言葉は深く、私に重くのしかかるのでした。
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