《【書籍化&コミカライズ2本】異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無雙する》21章:トゥルーヴァリアントショー(7) SIDE 由依

SIDE 由依

システィーナが短編映畫撮影を終えた日。

はタクシーに乗って、一人で帰ってきた。

「お帰りなさい。カズは?」

「え?」

一瞬、ぽかんとするシスティーナ。

「もうやだなあ、一緒に撮影に行ったでしょ。初めての映畫撮影で疲れちゃった?」

「あ、あれ? そういえばドコに行ったのでしょう」

まるで今思い出したみたいな言い方だ。

「まさか置いてきちゃったとか?」

「う、うん……? なんでそんなコト……」

システィーナはしきりに首を傾げている。

「忘れて先に帰るなんて、あるはずないのデスが……」

カズを置いてきたことを本當に不思議がっているみたい。

「迎えに行って來マス!」

「疲れてるのよ。カズなら一人で帰ってくるでしょ。今日はもう、お風呂にって寢たら?」

「でも……」

「大丈夫よ。謝りたいなら、カズが帰ってきたら教えてあげるから」

「うん、そうする。おやすみなさイ」

「おやすみなさい」

システィーナが部屋を出ていくのを見屆けると、私はピッチでカズに電話をかけた。

しかし返ってきたのは、電波が屆かないというアナウンス。

まあピッチだし、そういうことも多い。

私はこの時、カズがいつものように帰ってくると思っていた。

しかし、夜が明けても、システィーナの映畫が公開されても、映畫が話題になって彼が大人気になっても、カズは帰ってこなかった。

私はあらゆる手段を使ってカズを探した。

カズがいなくなって10日目の夜、今日も私はビルの屋上を駆けていた。

こんなことで見つかるなら、白鳥の力でとっくに見つかっている。

わかってはいるが落ち著かない。

走らずにはいられない。

「カズ君……? ええと……ああ! カズ君ね! そういえば最近見ないけど、どうしたんだろ?」

海ちゃんですらこうだった。

システィーナも同じだ。

の場合、優業が忙しくなったのもあって、家にいる時間が減った。

みんながカズのことを忘れ始めている。

一緒に戦った仲間なのに、散り散りになりつつあるのをじる。

長いこと彼の記憶定著魔法をけ続けていた私と雙葉ちゃんはまだ大丈夫だが、それもいつまでもつかわからない。

これって、カズがヴァリアントに喰われて――。

そんな考えが頭をよぎる。

ううん、そんなはずない。

絶対にないよ。

世界中の報を集めるうち、不自然に何も報を得られないところがあった。

コロコロ坂事務所である。

事務所によると、カズがいなくなったあの日、システィーナからし遅れて彼は帰宅したという。

今となってはその話も怪しいものだ。

現場に戻ろうということで、私、雙葉ちゃん、海ちゃんの三人は、テレビ局に忍び込んでいた。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!

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