《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》342 突然の帰還

投稿間隔が開きまして大変申し訳ありませんでした。

エキジビションマッチが無事に終わったその日の夕食時、デビル&エンジェルの面々はいつものようにパーティーでまとまって食事の席に著いている。

「いや~、桜ちゃん。勝利のあとのデザートは格別ですよ~」

「明日香ちゃん、主食はホンの気持ち程度であとはずっと甘いのものを食べっ放しじゃないですか。果たしてこれがデザートと呼べるんですか?」

「気にしすぎですよ~。江戸っ子は宵越しのデザートを殘さないんです。あるだけ食べ盡くしますよ~」

「もう好きなだけブクブク太ってくださいまし。學院に戻るまで明日香ちゃんの重に関しては何も口出ししませんから」

「午前中のランニングが無くなるなんて天國ですよ~」

々大橫綱明日香山を目指してください」

「誰が明日香山ですかぁぁぁ!」

「無駄な抵抗はやめた方がいいですわ。今日の試合で全魔法學院中に明日香山の名聲が轟きましたから」

「そんなのイヤですよ~。い、今から何か訂正する方法はないですか?」

「すでに手遅れですわ。今頃そこいら中が明日香山の噂でもちきりですから」

「どこかに消えてしまいたい…」

などと意味不明の供述をしながらも、明日香ちゃんの手は目の前にあるお皿から甘~いデザートを息つく暇もなく口に運んでいく。まったく反省も後悔もない明日香ちゃんの姿を桜はため息じりに見つめるのみ。ここまで來たら本當にどこまで重が増えるのか先行きを観察してやろうと、かなり投げやりな心になっているよう。

相変わらず騒がしいこのコンビの隣では、聡史、鈴、カレンの三人が靜かに會話しながら食事を摂っている。

「それにしても鈴さんの魔法式は想像以上の完度でしたね」

「カレンに褒めてもらうのは栄なんだけど、結果的に負けてしまった點には一抹の不満が殘るわね」

「まあそこは… 相手が桜ちゃんですから」

「そうよねぇ~… 一応桜ちゃんの戦闘力を私も正確に見積もっているつもりではいたんだけど、予想を軽々超えてくるんだからさすがに手に負えないわ」

どうやら試合に関しては鈴も諦めた表。もちろん本人は使用可能な魔法が限定された中でベストを盡くしたつもり。得意のヘルファイアーや重力魔法の使用は自重していたし、仮にこれが実戦だとしたらもうちょっと違う結果になった可能もあり得る。とはいえあそこまでやって負けたのなら、むしろ勝った桜を褒めるべきだろうと割り切っているようでもある。

ここで鈴が桜に…

「桜ちゃん、気になっていたんだけど、最後の技は一何だったのかしら? ほら、あのシールドを通過して私を吹き飛ばした説明のつかないあの一撃よ」

「ああ、あれはおジイ様から教えてもらった技ですの。の表面を突き抜けて部を破壊する技の応用ですわ」

「なんだよ、あの化けジジイが絡んでいたのか。それにしても咄嗟にそんな大層な技を繰り出すとは、我が妹ながら恐ろしいヤツだな」

ここで聡史も話に割り込んでくる。彼もモニター越しに桜のフィニッシュブローを見てはいたものの、自の頭の中で今一つ合點がいかなかったらしい。

「お兄様、タネ明かしをいたしますわ。お兄様と鈴ちゃんが異世界に行っている間、土日におジイ様の屋敷に出向いて鈴ちゃんとの試合用の特訓をしていましたの。最後の技もおジイ様に見てもらって不完全な點を修正いたしました。おかげさまで完璧に使いこなせるようになりましたので、シールドを通過するように打ち込み方を調整しましたの」

「シールドを通過されたら魔法使いなんて手も足も出ないじゃないか」

「対魔法使い用の必殺技ですわ。鈴ちゃんにも効果があったので自信が持てます」

実戦初使用という意味では桜にとってもひとつの賭けだったが、リスクを負った分だけ見返りも大きかったと満足する表を浮かべる。桜の説明を聞いている鈴とカレンは、彼の勝利に懸ける執念にやや呆れ顔。

するとここで聡史のスマホが著信を告げる。畫面の表示を見た聡史の表が引き攣っているところを見ると、どうやら例の人のよう。

「はい、楢崎です」

「楢崎か、私だ」

もちろんその聲の主は學院長に他ならない。聡史の中にイヤな予が漂ってくるのは言うまでもない。

「學院で何か事件でも起きましたか?」

「いや、學院で特に事件は起きてはいない」

「でしたら急にどのような用件でしょうか?」

「用件の容は電話では告げられない。これは學院長命令だ。お前たちのパーティーは明日の新幹線で學院に戻ってもらいたい」

「電話では話せない何らかの事があるんですか?」

「否定も肯定もしない。とにかく明日の夕方までに戻ってこい」

「了解しました」

あの學院長が理由も告げずにここまでの無茶振りをするというのは聡史にとっていまいち不可解。とはいえ指令が下った以上グダグダいっているわけにもいかない。聡史はメンバー全員に向き直ると、通話の容を掻い摘んで喋り出す。

「…ということで、明日には學院に戻るぞ」

「お兄様、チーム戦には出場できないということですか?」

「まあ仕方がないだろう。というか今日の桜の試合を見た他校のチームからボイコットを食らいかねない。ここは穏便に撤収したほうがいいようにも思うぞ」

「仕方がないわね。學院長からの命令には逆らえないだろうし」

「いつもうちの母が々と無理強いして申し訳ありません」

聡史に鈴が同意すると同時に、カレンが下げなくてもいい頭をこれでもかという合に下げている。子の苦労母知らず… というとっても理不盡な狀況がこの場に生まれている。だが聡史の話を訊いて言葉も出さずにひとりでブルブル震えている人がひとり。

「おや、明日香ちゃん。急に震え出してついに痛風でも発癥しましたか?」

「誰が通風ですかぁぁぁ! それどころじゃないですよ~。私の天國のような日々はどうなっちゃうんですかぁぁぁ!」

「確かに學院に戻るまではランニングもナシで、しかもデザート食べ放題ですものねぇ~。ですが殘念なお知らせですの。明日香ちゃんの天國生活は今晩をもってお仕舞ですわ」

「イヤですよ~。私はここに殘りますよ~」

「諦めたほうがいいですわ。私も學院長には逆らいたくありませんの」

「グスッ、ゲフッ、ウエェェェェェン。帰りたくないですよ~」

仕舞いには號泣し始める明日香ちゃん。よほど第5魔法學院での生活が気にっているよう。とはいえ聲を上げて泣きっ放しの狀況にはしておけないので、桜も懐策に打って出る。

「仕方がないですわねぇ~。では約束通り対抗戦期間が終わるまではランニングはナシでいいですわ」

「ブヘッ、ブヘッ… 桜ちゃん、本當ですか?」

「約束ですからね」

「それなら仕方がないですよ~。デザート食べ放題は諦めます」

ようやく明日香ちゃんも泣き止んだよう。とはいえ泣きながらもデザートを口に運んでいる神経はもはや呆れを通り越して立派。號泣しながら口をモグモグされるという離れ業をやってのけるなんてさすがは明日香ちゃん。

「明日香ちゃん、泣く時くらいデザートを我慢できなんですか?」

「今日で食べ納めなので、寸暇を惜しんで食べますよ~」

桜を筆頭にメンバー全員がそんな明日香ちゃんを生暖かい目で見ている。それはさて置いて…

「こうなった以上は対抗戦の善後策を立てておかないと不味いな」

「そうね、この話を訊いたら生徒會長が真っ青になるでしょうから」

ということで鈴が茂樹に連絡を取って急遽ミーティングルームに集合と相る。もちろん最後の晩餐を徹底的に楽しむと決め込んだ明日香ちゃんは食堂からこうとはしないのは想定。無理に連れていくとまた號泣する恐れがあるのでそのまま放置と決定。諦めた表を浮かべながら明日香ちゃん以外の面々は食堂から場所を移す。ミーティングルームにると、茂樹がすでに椅子に腰を下ろして待っている。

「西川さん、急に呼び出して何の用件かな? それにパーティーメンバーがズラリとお揃いだし」

「ちょっと困ったことになったから、會長には話を伝えて善後策を決めてもらう必要があるのよ。落ち著いて話を訊いてもらえるかしら。聡史君、お願いするわ」

ということで鈴が聡史に話を向ける。仕方がないので聡史が學院長からの連絡を伝えていく。

「…という學院長からの指令で、俺たちは急遽明日學院に戻ることになった。ついてはチーム戦の代役を生徒會で決めてもらいたい」

「そ、そんな急に…」

聡史が説明を続けるうちに茂樹の表がどんどん強張っていき、ついには言葉を失っている。ここまで順調に勝ち星を積み重ねているとはいえチーム戦の優勝候補筆頭が出場を取りやめる影響は想像以上に大きい。戦力としてはもちろんだが、デビル&エンジェルという存在自がもたらす安心が無くなるのは途轍もない痛手であろう。

「浜川君、諦めてもらうほかないわ。學院長の話しぶりからすると、どうやら何らかの任務が絡んでいそうなのよ」

「すまない、まだ考えが追い付かない」

「戦場では狀況の急変などいくらでもある話だ。常に臨機応変な対応が求められるぞ」

聡史の叱咤で茂樹がハッとしたように顔を上げる。もちろん茂樹も自衛隊の予備役に任しており、異世界に同行した。その際自らを投じた本の戦場というのがいかようなモノかはで経験している。しかも今回の対抗戦においては生徒會長たる自分が母校の生徒たちをまとめるリーダー。そのような立場でいつまでもウダウダ言っていられないと気付いたよう。

「わかった。デビル&エンジェルの不在は殘った人間でカバーするしかないな。君たちの代役として相応しいパーティーを推薦してもらえないか?」

「頼朝たちでいいんじゃないか。桜はどう思う?」

「そうですね~、あいつらはそこそこ鍛え上げてありますから、それほど無様な試合はしないでしょう」

どうやら兄妹の意見が一致を見ている。だが茂樹が不安な點を指摘。

「確かに彼らの実力は疑う余地はないけど、そもそもパーティーメンバーが4名しかいない上に魔法使いも所屬していない點がどうだろうか。例えば誰かを補充させるとか、特に魔法使いなんかを…」

こういう疑問點を指摘する役というのは組織においては貴重な存在。だが桜は…

「必要ありませんわ。余計な人員が増えると逆にコンビネーションが崩れます。信長たちには魔法への対処もしっかりと仕込んでありますから、現有のメンバーで臨むのが上策ですわ。もっともマギーさんのチームと対戦したらさすがに苦戦は免れないでしょうが、それ以外の他校パーティーでしたら負ける心配はありません」

桜がここまで太鼓判を押すとなると、茂樹も首を縦に振らざるを得ない。本日のエキシビジョンマッチを彼もその目にしている以上、桜の意見にこれ以上異を唱えるなど不可能。

「わかった。では僕から藤原君たちに出場する旨を伝えておく。君たちは安心して學院に戻ってもらいたい」

「その必要はありません。私が直々に伝えますわ。ついでに気合いをれておきますから」

桜が妙に張り切っている。これは嫌な予しかしない。頼朝たちの運命が急な坂を転がり落ちるようにドンドン過酷な方向に進んでいくのは気のせいではないだろう。ということで聡史が連絡して頼朝たちがミーティングルームに呼び出される。ついでと言っては何だがブルーホライズンも同時に招集がかっている。

10分後、急に何の用だとやってきた頼朝たちとブルーホライズン。

「ボス、遅くなって申し訳ありません。急な招集ですが、どのようなご用件でしょうか?」

「私たちは急用が出來て學院に戻りますから、代役として信長たちがチーム戦に出てください。これは命令です」

「サー、イエッサー」

伝達終了という顔をしている桜と引き攣った表で返事をする頼朝。心の準備とか諸々を一切無視した桜のやり方にさすがに無茶をじた真が聲を上げる。

「師匠、桜ちゃんの話ですともしかして師匠も學院に戻るんですか?」

「ああ、學院長から連絡があって明日戻ることになった。お前たちには負擔をかけるが、俺たちがいない分も頑張ってもらいたい」

「えええええ、師匠がいなくなっちゃうの! なんだか張り合いが無くなっちゃうな。せっかく師匠に私たちの戦いを見てもらいたかったのに」

ここで場違いなまでに大聲を上げたのが晴。何しろ桜とドッコイの地聲の大きさだけに部屋中に聲が響いている。本人はお構いなしにあっけらかんとしているけど…

「試合を直接見れないのは殘念だが、これまで訓練してきた果が出せれば優勝も狙えるはずだ。しっかり頑張ってくれ」

「「「「「「はい、師匠」」」」」」

六人の聲が揃っている。どうやら聡史がいなくなるのを理解しながら、それをバネにさらに頑張ろうという前向きな思いが伝わってくる。こういうひた向きさを育ててきた聡史とブルーホライズンのメンバーたちはやはり固い絆で結ばれているのがよく理解できる場面だろう。そんな兄に対して妹の方はといえば…

「急遽の代役ですから軽い気持ちで試合に臨めば十分ですわ。最低でも決勝戦まで進むくらいの気持ちでチャチャッと片付けてください。もし途中で負けるようなことがあったら、學院に戻ってきてどうなるかわかっていますね」

「「「「サー、イエッサー」」」」

純度100パーセントの強迫がこの場で橫行している。思い遣りとか溫とか… そのような暖かさは一切ナシ。その証拠に桜の目がまったく笑っていない。出場するからには最後まで勝ち抜け… 非なまでの命令が頼朝たちに重たく圧し掛かっている。もっともこのような桜の無茶振りは日常茶飯事なので、頼朝たちもプレッシャーには慣れっこ… ではなさそう。さすがに強豪ひしめく対抗戦のトーナメントで決勝進出がノルマと言われてますます表が引き攣っているのは言うまでもない。ここまでくると彼らには同するしかない。

「それじゃあ私たちがいない分皆さんに負擔をかけるけど、どうかよろしくお願いします」

最後は鈴がシメて、チーム戦の方針が決定する。頼朝たちは圧倒的に貧乏クジを引かされたのは誰の目にも明らかではあるが、敢えてその話題にはれないようにしている。解散間際に聡史が頼朝の肩をポンと叩いて「本當に申し訳ない」という視線を送っているだけ。

こうして慌ただしく帰りの準備をして、翌日の日曜日の朝一番でデビル&エンジェルは魔法學院に戻っていく。

◇◇◇◇◇

翌日の午前9時、新大阪のプラットホームでは明日香ちゃんがホクホク顔で手に持つ何かを見せつけいる。

「桜ちゃん、大阪土産といえばやっぱりあんプリンですよ~。ああ、それからついでに赤福もたくさん買っちゃいました」

「あんプリンと赤福が5箱ずつ… 明日香ちゃんは糖尿病一直線ですわね~」

「そんなことないですよ~。しっかり運もしますから」

「だいぶレベルも上昇しましたし、生半可な運では重が落ちませんよ」

「桜ちゃんが以前『レベル200を超えると太らなくなる』って言ってたのはウソなんですね」

「ウソではありませんわ。現に私はどれだけ食べても太りませんし」

「ああ、だからまでペチャンコなままなんですよ~」

「なんですってぇぇぇぇ! 明日香ちゃんはいいです。表に出なさい」

「ここは駅のホームですよ~。桜ちゃん、恥ずかしいのであまり大きな聲は遠慮してもらいたいですよ~」

「絶対いつか潰しますわ」

こうして不穏な空気のまま、デビル&エンジェルはホームにり込んできた新幹線に乗り込んでいく。午後1時には小田原到著。一旦駅の外に出て桜が検索した回転壽司店で晝食。ついでに天狐への土産として大量の稲荷壽司を購。天孤だけだと玉藻の前が拗ねるので、評判の和菓子屋で豆大福も大量購

とまあこのような経過を経て、午後3時過ぎに魔法學院に到著と相る。桜は久方ぶりにペットの顔を見に行って、明日香ちゃんはそのまま部屋でのんびりと晝寢開始。その結果、聡史、鈴、カレンの3名が學院長室に出頭の運びとなる。

「學院長、大急ぎで大阪から戻ってまいりました」

「急な呼び出しですまなかったな。実は量子コンピューターオペレーションルームから要請があって、大至急楢崎彌生のレベルを引き上げてもらいたいそうだ。なんでも彼の力を大量に消費しなくてはいかないミッションが近々控えているらしい」

確かにこんな指令は電話では伝えられない。量子コンピューターに関する事項は超がつくほどの部外の上、そのコアオペレーターとなる彌生の存在は二重の意味で隠匿する必要がある。そんな重要人である彌生のレベルアップを「予定よりも前倒しで実施しろ」というからには、それなりに大掛かりなミッションが計畫されているのだろう。

「期間と目標レベルはどの程度でしょうか?」

「期間は10日間、目標はレベル100だそうだ」

「かなり厳しい目標ですね」

「だがやってもらわなければ困るらしい」

「了解しました。本人への伝達はどうしますか?」

「楢崎中尉から伝えてもらいたい。どうせ同じ部屋で生活しているんだから々と説明しながら告げてくれ」

「わかりました。それではさっそく明日から彌生のレベル上げにとりかかります」

「話は以上だ。今日はゆっくりと休んでもらいたい」

「それでは失禮いたします」

想像よりも何十倍も過酷な彌生のレベルアップ作戦に鈴とカレンは同めいた表を聡史に向けている。

「聡史君、學院長はずいぶん簡単に命令してきたけど、本當に大丈夫かしら?」

「毎度毎度ウチの母が無茶振りばかリ指摘て申し訳ありません」

つい口を突いて出た言葉が上記の通り。二人とも明日から始まる彌生の過酷なレベル上げを心配すると同時に自分たちが出來そうなフォローは十分にしていこうと決めている。

そのまま三人はエレベーターに乗って聡史の部屋へ。ドアを開くとリビングを桜とそのペットたちが占領している景が飛び込んでくる。

「ポチとタマには私が留守の間不自由を掛けましたわ。今日はその分思いっ切り食べてくださいまし」

「主殿、これほど大量の稲荷壽司をいただけるとは、まことに忝く存じまする」

「ほんにその通りなのじゃ。妾の好の豆大福が山のように用意されておるとは、まるで夢でも見ているかのような心地なのじゃ」

テーブルの上には2の大妖怪のためにこれでもかという量の稲荷壽司と豆大福が異常な存在を主張している。さっそく桜の許しが出たので、天狐と玉藻の前はしみじみと味わうがごとくに口に運び出す。ペットのどちらかが用意したのであろう渋茶で満たされた茶碗と急須まで置かれている景は実に平和なひと時。稲荷壽司と豆大福に舌鼓を打っているのが大妖怪でなければの話ではあるが…

「桜、取り込み中すまんな。彌生はいるか?」

「ポチタマのご褒の時間が終わるまでネットで時間を潰すと言って自分の寢室に籠っていますわ」

「そうか、では今すぐはヤメておこう」

「それじゃあ、私たちは一旦自分の部屋に戻っているわね」

「失禮します」

鈴とカレンはポチタマのご褒の時間を邪魔しないように自分の部屋に戻っていく。聡史も今は桜のペットには取り立てて用はないので、寢室にってベッドの上にを投じつつ彌生の育計畫を練り始めるのだった。

◇◇◇◇◇

その後桜のペットたちの束の間の宴は2時間ほど続き、夕暮れが迫る頃にはすっかり土産を食べ終えて満足そうな表の2の大妖怪が桜に連れられて特待生寮を出ていく。しばらく適當に時間を潰して夕食時になったら食堂にやってくるように言いつけてから桜が戻ってくる。

「お兄様、戻りましたわ」

「そうか、すまないが彌生もビングに呼んでもらえるか」

「はい、わかりました」

聡史がベッドから起き上がってリビングに向かうと、ちょうど彌生も自分の寢室を出るタイミングで久しぶりに従妹同士が顔を合わせる。

「聡史兄さん、急に戻ってくるなんてどうしたんですか?」

「ああ、その件なんだがリビングでゆっくり話そうか」

ということで聡史と彌生がリビングに向かうと、すでに桜はソファーに腰を下ろしてくつろいでいる。もちろん何もしない桜を橫目に聡史と彌生がお茶を淹れてソファーに座る。

「彌生が魔法學院に編してどのくらいになったっけ?」

「夏休みの最初の頃だったので、二か月半くらいになります」

「そうか、俺も々と立て込んでいてしっかり面倒を見れなくて申し訳なかったな」

聡史が彌生に侘びている橫からすかさず桜は口を挾む。

「お兄様が中々暇がとれないのでしたら、ぜひとも私に彌生ちゃんのの手解をお任せくださいまし。今からでも地上で5本の指にれるくらいには強くして差し上げます」

「桜ちゃんの訓練は格的に合わなさそうなので遠慮します」

キッパリと斷る彌生。桜に遠回しな表現で返事をしても伝わらないと理解している模様。これまでも散々勧されてきただけに、お斷りの方法もすっかり板に付いてきたがある。

「桜、彌生には護用のだけ教えればいいと言ってあるだろう。お前がしゃしゃり出てくると話がややこしくなる」

「お兄様、せめてラスボスを倒せる程度の護に付けていないと最近何かと騒ですし」

騒なのはお前の思考だ。その辺にあるお菓子でも食べてしばらくの間口を塞いでおくんだ」

「はぁ~、頭の固い兄など持つべきではありませんわ」

などと意味不明な供述をしながら、桜はアイテムボックスから取り出したスナック菓子をボリボリ食べ始める。食事前の時間だが、この程度のお菓子を口にしたところで桜の鋼鉄の胃袋の前には無力に等しい。

「それで彌生の力の數値はどのくらいになったんだ?」

ボリボリ

「現狀で37です」

した當初は25くらいだったので、學院の訓練で彌生自力がかなり上昇している。とはいえこれだけ數値が上昇したとはいっても、未だにレベル1ということもあってランニングなどはドベを獨走中の

「そうか、ずいぶん頑張ったな」

ボリボリ

「はい、結構大変でした」

ボリボリ

「それでだな、いよいよ彌生のレベルアップを開始しようと思っているんだ」

ボリボリ

「そうなんですか」

ボリボリ

「そこで… え~い、このアホ妹! ボリボリうるさいんだよ!」

「まったく口やかましい兄で敵いませんわ。喋ったら『黙れ』と言うし、黙ってお菓子を食べていたら『ボリボリうるさい』と言うしで、一私にどうしろと?」

本當に困った妹だという表を向ける聡史。どうやら桜には、大人しく話を聞くという発想は搭載されていない模様。

「ともかく大事な話だからしばらく靜かにしていてくれ」

「最初からそう言ってくれればよかったのに…」

なぜか桜がむくれている。こんな面倒な妹を持つと、兄としては気苦労が絶えない。ようやく桜が靜かになったので、聡史は改めて彌生に切り出す。

「そこで明日から俺たちと一緒にダンジョンにってもらう。10日間で一気にレベル100を目指してもらうからそのつもりでいてほしい」

「え~と、誰がレベル100になるんですか?」

「彌生に決まっているだろう。かなり厳しい毎日になるから覚悟してくれよ」

どうやら彌生には話がまったく見えていなかったよう。そもそも10日間でレベル100を目指すという聡史の話自が常識では考えられない。當然彌生自咲をはじめとしたクラスの生徒から魔を倒す際の苦労話を耳にしているので、一何をすればそんな短期間で「はい、レベル100が出來上がりました」などという狀況が起こり得るのか想像もつかない表

だが聡史の話を耳にした桜の目が煌々とり出している。ついにこの時が來た… そう言わんばかりの表でビックリしている彌生を差し置いて俄然ヤル気の顔に変わっている。

「お兄様、どうか私にお任せくださいませ。彌生ちゃんを10日と言わず5日間でレベル100にしてみせますわ」

「卻下する。10日でもかなり過酷なスケジュールなんだぞ。いくらパワーレベリングと言ったって、彌生のにかかる負荷は相當なモノだからな」

「仕方ありませんわねぇ~。お兄様の計畫通り10日間で彌生ちゃんをキッチリレベル100まで引き上げてみせますわ」

「聡史兄さん、何とかして!」

彌生が桜のヤル気に漲る態度に怯え切っている。上目遣いで聡史に助けを求めているが、一度火が點いた桜を止めるのは聡史でも難しい。

「とにかく頑張ってくれ」

そのひと言しか言ってあげられない様子の聡史を見て、気の毒にも彌生は思いっ切り萎れている。桜だけが鼻歌じりに「どの階層に連れていこうか」などと大きなお世話レベルの思案を巡らせるのだった。

【お知らせ】

いつも當作品をご覧いただきましてありがとうございます。この場をお借りしまして読者の皆様にお知らせさせていただきます。

當作品のリニューアル版(1話~100話相當)を現在カクヨムにて投稿させていただいております。細かな修正を加えたバージョンですので大筋に変更はありませんが、もしよろしければ最新版の當作品をご覧になっていただけると幸いです。

小説の検索欄で作品名か作者名(枕崎 削節)を検索していただくか、もしくは下記のアドレスをコピペしていただけるとすぐに見つかります。なお〔小説家になろう〕でも継続して投稿してまいりますので、當作品をこれからもご顧いただけますよう、どうぞよろしくお願い申しあげます。

https://kakuyomu.jp/works/16817330659397921052

さらにもうひとつ追加でお知らせです。

作者が過去に投稿して現在中斷中の作品〔擔任「このクラスで勇者は手を上げてくれ」えっ! 俺以外の男子全員の手が挙がったんだが、こんな教室で俺に何をやらせるつもりだ?〕につきましてもカクヨムにて全面リニューアル版を投稿しております。

この作品とは真逆でエリートクラスに放り込まれた一般人男子が主人公の學園モノで、肩が凝らない作品となっております。アドレスは下記の通りとなっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

https://kakuyomu.jp/works/16817330660450386300/episodes/16817330660453959725

學院長から命じられた彌生のレベルアップ作戦に込められた意図とは果たして何か? そして量子コンピューターオペレーションルームが解読にあたる〔WEB〕という謎のフレーズに込められた恐ろしい計畫が明らかに… この続きは出來上がり次第投稿いたします。どうぞお楽しみに!

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