《聖が來るから君をすることはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?【書籍化&コミカライズ決定】》第102話 願ってやまないこと
彼はいまだ抵抗ひとつ見せず、その表はすべてを諦めたように虛ろだ。
「サキュバスのあなたが、どうしてマクシミリアンと手を組んで私を狙ったの?」
「……弱化するためよ。あなたと國王が不仲になれば、力を失う人がいるでしょう」
私とユーリ様の不仲で力を失う?
「それって……」
言いかけて、私はパッと手で口を押えた。
だって気付いてしまったんだもの。
リリアンが、なぜ『力を失う人』なんてまわりくどい言い方をしたのか。
それはアイに、「聖であるアイを傷つけるためにやった」、と聞かれたくなかったからかもしれないということに。
それはささやかなことかもしれない。けれどそういうささやかな部分にこそ、人の本音は出るのではないのかしら?
なら……リリアンは本當に、アイを友達だと思っていたということ?
「ねえ。アイを友達だと思っているのに、それでもやらずにはいられなかった理由は何?」
思えば、最初の頃のリリアンは、確かに今言ったような企みを持っていた気がする。
けれど一時《いっとき》、リリアンは別人のように毒気が抜けていたのも事実だ。
私の質問に、リリアンはふっと鼻で笑った。
「魔であるわたくしに、人間を傷つけるのに理由なんて必要?」
「確かにそれが、魔と人間かもしれないわね。でもなくとも、あなたは人間であるアイを、今でも友達だと思ってくれたのでしょう? でなければあんな気遣うような言い方、しないはずだわ」
私の言葉に、リリアンが黙り込む。
「だったら、どうして? このままあなたはずっと私の護衛騎士で、ハロルドのように、年や立場は違えど、アイの良き友達……そんな未來は、選べなかったの?」
の中では、抱きしめたアイもじっとその言葉を聞いていた。ユーリ様も、オリバーも、ジェームズも口を出さず、靜かに言葉を待っている。
やがて、リリアンの口から、はあと大きなため息がもれた。
「……そんな道はないわ。貓じゃあるまいし、主様に生み出されたわたくしが主様を裏切れるわけがない。あの方をこれ以上の絶に落とすことなんて、できないもの……」
貓? どういう意味かしら。
でもそれより、リリアンの口から出てきた「主様」という言葉が気になるわ。リリアンを送り込んだ黒幕ということよね? 同時に、生み出されたということは、親でもあるの?
「リリアン、あなたは優しいのね」
私はふっと微笑んだ。
リリアンは一見するととんでもない悪のようだけれど、話を聞けば聞くほどわかる。
彼は……自分のためには、何ひとつ行していないのよ。
主と呼ぶ人のためにイヤイヤ働き、アイを裏切りながらも、極力傷つけないようにしている。
もちろん、彼がした行いは悪よ。けれど。
私は顔を上げると、今度はユーリ様の方を向いた。
「ユーリ様。私はリリアンの減刑を嘆願しますわ。しかるべき罰はけさせても、彼の命までもを奪う必要は、ないと思います」
「……彼が、魔であってもか」
「魔であっても、です」
私はきっぱりと言った。
「魔は確かに忌むべき敵。ですが彼には人間同様、意思も心もありますわ。それを魔だからと言って切り捨てたら、私たちの方が、魔と同じになってしまいそうな気がするんです」
「逆に言えば、意思を持たない有象無象の魔より、よほど彼の方が危険だと思わないのか? 今回だって、あと一歩の所で、君を救えなかったかもしれない」
「そうですわね。そういう一面も、あるのでしょう。考えが甘いと非難されるかもしれませんわね。それでも私は魔を――いえ、リリアンという人を、信じたいのです」
その言葉に、ユーリ様はふぅと大きなため息をついた。その顔には困と迷いが浮かんでいるが、先ほどまでの冷酷なは、消えていた。
次に私は、アイと手を繋いだまま、リリアンに向かって歩いて行った。
「あなたにも言いたいことがあるのよ。オリバー、このロープをほどいてちょうだい」
私がリリアンの手首に巻かれたロープを指さすと、オリバーは戸いの表になった。
「ですが」
「お願い」
私の懇願に、オリバーは一瞬ちらりとユーリ様に視線を走らせた。その後、ためらいながらもしゅるしゅるとロープをほどいていく。
その様子を、リリアンはじっと見つめていた。
「ねえリリアン……。あなたが主と呼ぶ人が、どんなにつらい過去を抱えているか、私は知らないわ。あなたと主の間に、どんな深い繋がりがあるのかも。でもね……これだけは覚えていてほしいの」
私はそっとリリアンの片手を包み込んだ。
「あなたの人生は、あなただけのものよ。どんなに大好きな親だったとしても、親の悲しみや憎しみを背負ってあなたが頑張る必要は、どこにもないの」
大好きな親のために子どもが頑張りたいと思うのは、自然なこと。私だってい頃、母や父に喜んでもらいたくて、んなことを頑張ったもの。
でも、だからといって自分の本當にやりたいことを我慢して、いやいや悪事に手を染めるなんて――あまりにも、悲しすぎる。
子どもは親をめるために、生まれてきたわけじゃないのよ。
「……そんなの、綺麗ごとだわ。あなたは人間で、王妃じゃない」
「そうね。そうかもしれない」
私が恵まれた生まれだというのは、自覚している。侯爵家という裕福な家に生まれて、婚約解消など多の波はあれど、両親は良き人で、深く私をしてくれたわ。
でも、だからこそ思うのよ。
両親にされて育った私だからこそ、できることはないのかと。
両親が私を包み込んでくれたように、今度は私が、誰かを包んであげられないのかと。
世の中には負の連鎖という言葉があるわ。
泥棒の家に生まれた子は、何もしない限り自然と泥棒になる。
なら、その逆は?
恵まれた私だからこそ繋げられる、の連鎖はないの?
綺麗ごとで、偽善で、傲慢と言われてもいい。
私の手の屆く範囲は本當にわずかで、全員を救うことはできない。
それでも、手の屆く範囲でいっぱい、誰かを良き方向に連れてこられたら……。
そう願ってやまないのよ。
「この考え方を強要はしないわ。でも、あなたの心が何にも縛られず、自由になってほしいと思っているのは本當よ。だってあなたはアイの大事なお友達ですもの」
私がそう言うと、まだ目が赤いながらも、アイもこくりとうなずいた。
***
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