堅牢署の一階は、看守や警邏がほぼ毎日のように収容される囚人と既に投獄されている囚人や施設の管理、日誌や報告書、書類、一日代制で仮眠を取るなどが行われている。

そんな一階の左端に他の扉とは違いしだけ上質な木材で作られている部屋がある。

その扉の前に一人の男が立っている。

トントントン……

「どうぞ」

彼がノックをすると中いるから許可が下りる。

「失禮します」

斷りをれてから部屋にる。

部屋の中は中央で互いに向き合っている上質な革で出來たソファ、その向こうに大量の書類が積まれた上質ではあるがシンプルなデザインの仕事機、その席から見て左の壁には容毎に分けられた書類が置かれている棚。

何度來てもここだけ簡素だなっと男は思いつつも機で仕事をしているの前へ近寄る。

桃の髪を後ろで結い、タイトなスーツに似た格好をしている。その見た目は実年齢よりも若い。

先程まで東と話をしていた首長である。

「待っていたぞ、ブライアン」

「すみません、遅れました」

「いや、私もさっき戻って來た所だ。それより報告を頼む」

「はい」

首長に促され、東の家を調査していたブライアンが調査の報告を始める。

「まず最初にキリサキを見つけることは疎か、痕跡さえ集めることが出來ませんでした。申し訳ございません」

東の柄を捕えることが出來ないということは、今回東が起こしたと思われる問題を対処出來ないということ。

さらに彼がどこへ逃げたのかという報がない。

それは國民の安全を守る者に取って由々しき事態。

それを理解した上で何も出來なかったブライアンは上司である首長に謝罪する。

「そっちは分かっている。奴の家で何か見つかったか？」

しかしそんなことは既に報告さえている容である。

そのため謝罪などはどうでも良い。

「はい。キリサキの家を調べました所……何も見當たりませんでした」

ブライアンも彼が既に報告をけているのは知っている。

形式上謝罪を述べたまでであり、彼が既知だったことに対して驚いてはいない。

なので報告を続ける。が、もちろんこれも知っている。

「何故何も見つからないんだ……」

「それはなんとも。むしろ普通に考えると何も見つからな方が怪しいですが」

銀ランクの冒険者ともなれば、ほとんどクエストけなくても生活していけるだけの資金とその後の仕事が手にる。

騎士団や王國騎士団、警邏、冒険者の指南などでその実力を買われている。

しかしその稱號を得た者の中には貴族への賄賂や店での勝手な振る舞い、事業失敗、不正取引による商売、殺人などが起きた。

が、冒険者の質向上のためにその規則を消すことは出來ない。

実際一部の者が目立っているだけで全員が犯罪を犯す訳ではない。

しかし今回の調査対象である東の家から何も見つからないというのは不可思議でしかない。

「彼が居たエネリアの街でも王都でも特に悪い話はありませんし、を含めためごとを除けば冒険者として優秀な男だそうです」

「噓臭いですねー。それ」

事件が起こってから調べられた東の報。

事実であるがために何もなく、何もないからこそ彼は納得が行かない。

そしてなんの糸口も摑めずにいる現狀と、未だに信じられないその報に半笑いを浮かべ素を出してしまう首長。

「言葉遣いが戻っていますよ」

そんな彼を優しく指摘するブライアン。

しかし彼の指摘を首長は笑い飛ばす。

「アッハハハ！　やっぱりアッ君が畏まっているのは違和しかありませんね！」

先程までの凜とした大人の姿は崩れ、子供の様に笑っている。

「良いじゃないですかー。今は私たちしかいませんし」

彼の素の姿を知っているブライアン困った子供を見るような目で彼を見ている。

そして彼の言い分ももっともだと考え、溜め息混じりにそれを許諾する。

「アッ君もいつも通りで良いですよー。今のままだと気持ちが悪いので」

「ホンマ、別人にしか思えんわ。よう化けれとるで、自分」

ブライアンも彼に促され素の自分を出す。

彼がいつも通りの喋り方に戻ってくれたことを満面の笑みを浮かべて喜ぶ。

「まあ、そんだけ化けれとるのにあの坊主の前やとし本見せかけてた訳やけど」

面白がりながら四日前のことを指摘する。

彼が東の前で僅かに化けの皮が剝がれていたことである。

そんなブライアンに不貞腐れた顔をして言い返す。

「だって普段皆さんにしている風にしたら、あの子が怖がるじゃないですか。そんなの可哀想ですよ！」

彼の文句にブライアンは心の中で呆れる。

彼が子供好きであることを知っていたため、キリサキの部屋に突した際に彼の代わりにいた坊主の姿を見て一抹の不安を抱いていた。

そして後から確認のためにって來た彼は、案の定しだけ本を曬しかけた。

完全に出る前に止めたため『子供相手にはしだけ優しい首長』で収まった。