《俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。》最終章-23【ハンデキャップマッチ】
「待て~、こら~!!」
アスランが第九の上から飛び出して逃げ出した背中を、デビル嬢が追いかけて行った。彼も第九の上から飛び降りて行く。その様子はお花畑でワンピースの乙が悪戯小僧を追いかけていくようなほのぼのとした景だった。
そして、第九の上に殘された親子二人が呆然としながら町を見下ろしていた。
「なんだったんだ、あいつらは……?」
「何やら因縁が有るらしいぞ……」
そして、こちらも因縁深い親子が向かい合う。
アマデウスが父親に述べる。
「じゃあ、こっちのくだらない親子喧嘩も決著をつけようか、バカ親父」
ギルガメッシュが息子に述べる。
「サシの勝負になったとたん強気だな、バカ息子」
「バカ親父も一人になったからって弱気になったんじゃないのか?」
「抜かせ、バカ息子。お前なんぞ、楽勝で勝てるわい!」
「抜かしているのは、貴様だ、バカ親父!」
二人の親子が醜く言い爭った。本當に仲が悪いようだ。
すると──。
「さて、時間は二分から三分ってところかな~。それで決著をつけるから」
アスランの聲である。
「「えっ!?」」
荒ぶる親子が同じ方向を見る。そこには左半を空間からヒョッコリと出して立って居るアスランの姿があった。右半は景に溶け込み明である。
「アスラン、貴様は逃げたはず!?」
アマデウスの質問に半のアスランが答えた。
「逃げた風に見えたのは幻覚魔法だよ」
「魔法のイリュージョンデコイか!?」
「流石は凄腕な魔法使いだな。正解だ」
【魔法イリュージョンデコイLv2】
者の姿を幻影で寫し出す。デコイは簡単な作ならば移も出來る。攻撃などをけると消えてしまう。一日に魔法のレベル分回數だけ召還出來て、消えるまで5時間継続する。
更にアマデウスが質問する。
「じゃあ、消えているのは、魔法インビシブルか……。いや、し違うな?」
「正解」
魔法インビシブルなら完全に姿が消えて明化するはずである。だが、今はアスランの右半だけが消えているのだ。アマデウスが知っている魔法とはし違う。
アスランが答えた。
「ああ、これね。これはマジックアイテムだ。インビシブルマントね」
【インビシブルマント+1】
ステルス効果で明化する。
言いながらアスランがインビシブルマントをから剝ぎ取った。すると全がになる。そのままアスランは明マントを異次元寶庫に収納した。
「このマントさ~。便利なんだろうけど、普段から明だから、寶庫に閉まって置いたら何処に置いたか分からなくなるんだよね~。そこが使いにくくてさ〜、とっさに取り出せないんだよね」
そう言う不便もあるようだ。
「さて……」
アスランが腰の鞘から闘士剣グラディウスを引き抜いた。
「ギルガメッシュ、さっさと二人でアマデウスを倒すぞ。そして、あのキチピーが帰ってきたら、あのも二人で倒すぞ」
「お前は、そのためにデコイを放って時間稼ぎを図ったのか?」
ギルガメッシュの問いにアスランがドヤ顔で返す。
「當然だ。常に有利な戦で戦うのが俺の主義だ。いいや、俺の生き方だからな!!」
「な、何故に私まであのと戦わなければならんのだ?」
「お前の息子を倒すのに俺は協力するんだぞ。お前も俺の敵を倒すのに協力するのが普通の話じゃあないのか?」
「まあ、換條件だな。ならば、妥當!」
言うなりギルガメッシュがダッシュした。両拳を眼前に固めてアマデウスに迫る。そして、一瞬遅れてアスランもアマデウスに攻め込んだ。二人が同時に魔法使いに押し迫る。
「二対一、上等だっ!!」
決意を固めたアマデウスが大を開いて腰を落とした。ルーンスタッフを床について構える。戦闘勢だ。
「行くぞ!」
「おうよ!」
その左右からギルガメッシュとアスランが襲いかかる。
「ワンダフルパーーンチっ!!」
「ウェポンスマッシュ!!」
「甘いぞ、脳筋冒険者どもが!!」
拳と剣がギルガメッシュの頭部に迫る剎那、アマデウスが新たな魔法を唱えた。
「魔法ウルトラフルメタルボディー!!」
瞬時にメタル化したアマデウスのが二人の攻撃を弾いた。
「いっ!?」
鋼の激音を響かせ拳と剣が防がれる。
「全メタル化しやがったな!!」
「不味い、守りにったぞ!!」
全鋼鉄化したアマデウスをギルガメッシュとアスランがボコボコに攻め立てた。
拳で毆る。剣で切る。蹴りつける。剣先で首をグリグリする。おを顔面にりつける。間にアイアンクロー。すべての攻撃が鋼鉄化したアマデウスには無効だった。
「不味い! 不味い! 不味いぞ!!」
アスランは焦りながらも必死に剣を打した。しかし、アスランの剣がダメージと呼べるダメージを與えられているとは思えなかった。
ギルガメッシュも同様だ。それだけアマデウスの鋼鉄化魔法は完璧な防であった。
拳を打しながらギルガメッシュが述べる。
「この野郎、時間稼ぎにったぞ!!」
「それだけは、不味いんだよ!!」
時間稼ぎ──。
その作戦がアスランに取って、一番取られたくない作戦だった。このまま時間を稼がれたら、A が帰って來るからだ。
アスランが放ったデコイの魔法に気が付き彼が帰って來る。
アスランは一人で彼に勝てるとは考えていなかった。だから逃げるか戦うのか二択だったのだ。
そして、アスランが取った行は騙し討ちだった。一人で勝てないのなら二人で戦えばいい。
ギルガメッシュの敵を倒せば彼が自分の戦いに參戦してくれるのは間違いないだろう。だから先にアマデウスを二人で倒してしまえと考えて、アドリブで逃げたふりで時間を作ったのだ。姑息だが、彼なりには正しい作戦だった。
しかし、それを悟ったアマデウスが更に時間稼ぎに走りやがった。それが想定外。有る意味でアスランはアマデウスを舐めていたのだ。まさかアマデウスが、そこまで機転が働く人だとは思わなかったのだ。
剣を振るうアスランが愚癡った。
「このままじゃあ、あの糞が帰ってくるじゃんか!!」
その剎那である。
「騙したわね、私を!!」
帰ってきた。Aが帰還した。しかも思ったより早い。
「ひひぃぃ~~~!!!」
剣を止めたアスランが聲のほうを見ると、黒山羊の頭を被ったAが立っていた。風にワンピースの裾と、手に持った鉈が揺れている。
殺気──。
瞬時、アスランの前進に黒山羊の仮面から殺気が大量に叩きつけられる。それは、殺気を飛び越え殺意のを含んだ憤怒の毒針だった。素にチクチクと刺さるようで神的に痛い。キャンタマがこまってしまう。
怯えるアスランが聲を振るわせながら呟いた。
「お、怒ってる……?」
彼は淡々とした冷めた聲で返した。
「怒ってます」
寒い……。
痛い……。
そして、怖い……。
それは、氷點下の聲だった。
「そりゃあ、怒りますよね~……」
「運命で繋がった私を騙すなんて、酷い男ですわ!!」
まるで津波だった。津波のような勢いと規模で殺気が押し寄せてきた。しかも津波には氷河が混ざって殺傷力を増している。その殺気の津波はアスランだけでなくギルガメッシュやアマデウスすらも飲み込んだ。
三人の脳裏に「皆殺し」と言葉が浮かぶ。
すると咄嗟にギルガメッシュが踵を返す。
「すまん、アスラン。俺は逃げるからっ!!」
全のギルガメッシュが背中を見せながら走って逃げ出した。そのまま第九から飛び降りる。
Aと初対面のはずのギルガメッシュにすら分かるのだろう。彼のとんでもない力量が──。それは、冒険者ギルドの無敵なギルマスと呼ばれる男すら逃げ出す力量だ。要するに、尋常じゃあない。
「えっ、噓っ! ひぃぃいいい!!!」
アスランの全に鳥が立ち、足が震えだした。鋼鉄化しているアマデウスを盾に姿を隠す。勿論、完全には隠れていない。バレバレだ。
そして、アマデウスは鋼鉄化の魔法を解く気は無いようだ。アマデウスはアマデウスで、この場を鋼鉄化で乗り切るつもりなのだろう。彼はかないことが得策だと考えたのだ。妥當な判斷と言える。
ここからはタイマンだ。
アスランとデビル嬢の一騎討ちである。
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