《俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。》最終章-25【デビルサマナー】

「それじゃあ、久々に、あなたがどれほど強くなったか見て上げましょうか」

黒山羊頭を被ったAが自信に満ちた口調で言った。片方の肩に鉈を背負う。それに引き換えアスランは弱々しい口調で返す。グラディウスを低い位置に構えた。

「見るって、やっぱり戦うのか……」

「當然よ。それ意外に、どう計るのよ?」

「チンチロリンの大きさとかで……」

「これだから、とは言え変態の子守りは嫌なのよ!!」

黒山羊頭を被ったAが苛つきをわにしながら左手の掌を前に付き出した。その掌で魔法陣がキラメキだす。

「マジックバズーカ!!」

「ぬおっ!!」

突如の風圧にアスランのが吹き飛びそうになる。以前も使っていた重力方向変更魔法だ。

しかし、が後方に吹き飛びそうになるのをアスランは片足を後ろにばしてを支える。踏ん張って耐えた。

「この魔法は……」

記憶と違う。アスランは衝撃波を浴びながら、そう考えていた。マジックバズーカと言う魔法の印象が以前と違うのだ。

以前、この魔法を食らった際には、トラックに激突されたかのような衝撃が全を突き飛ばした激しい覚だったが、今回は違う。

凄い威力なのは間違いない。間違い無いのだが、激痛を味わいながら吹き飛ばされるほどの衝撃波でもない。まるで、突進して來たトラックを、今回は自力でけ止めたかのような衝撃だった。耐えられるってことだ。

「これは……」

アスランは奧歯を噛み締めながら踏ん張っていた。そして、Xの字に重ねた腕の隙間からAを睨み付ける。

「やはり、そうだ。間違いない。俺は強くなっている。これなら行けるぞ!」

魔法を放ち終わったAが腕を下げると、心したような聲で言った。

「マジックバズーカを耐えるなんて、どうやらしは強くなっているようね。そうでなくてはサタン様のは勤まらないわ。心」

「ふぅ~~……!」

深呼吸。

アスランは息を吐きながらX字に重ねた両腕を空手家のように気合を払って脇に切る。

心している場合じゃあねえぞ。今回は俺がお前をギタンギタンにしてやるからな!!」

自信がアスランの相貌に燃えていた。恫喝を返せるほどの自信である。だが、Aの自信は威圧と共に揺るがない。怯みもしない。

「ちょっと強くなったからって、強気に出るところが子供ね」

黒山羊頭の下でAが笑っているのがわかった。まだ、舐められている。それがアスランの苛つきをう。

「テメーこそ、ちょっと可いからって調子こくなよ」

「可いのは事実よ」

「とうっ!!」

今度はアスランから攻めた。グラディウスを背後に大きく振りかぶりながらAに飛び迫る。そして、剣技のスキルを発した。

「スマッシュウェポン!!」

橫ふりのロングソードがAの放つ威圧を切り裂きながら黒山羊頭に迫った。剣の狙いは首だ。一撃必中を狙う。

「そぉぉおおおらああ!!」

「甘い!」

橫ふりの切っ先がAの首筋にヒットすると思えた剎那、彼が掌を前に出して魔法を唱えた。攻防一の魔法である。

「クラビティーバズーカ!!」

「ぬほっ!!!」

アスランの元にばされたAの掌からマジックバズーカを上回る衝撃波が放たれた。その衝撃にアスランの皮鎧がへこんでが後方に飛ばされる。

凄まじい衝撃に肺が瞑れそうだった。瞬時にの空気をすべて吐き出す。そしてアスランは第九の上をコロコロと転がると場外に転落する。町中に落ちて行った。

それを見下ろすAが余裕な口調で言う。

「マジックバズーカの上位魔法よ。とうかしら」

前に歩いたAは第九の上から転落したアスランを追って第九から飛び降りた。そして、瓦屋に著地する。

「ぐ、ぐぞぉ……」

アスランは瓦屋の上に大の字で倒れていた。転落だメーシよりも魔法をけたのダメージのほうが大きい。だが、それでもへこんだ鎧のを押さえながら立ち上がる。

「ちくしょう、魔法のランクを上げやがったな……」

口の中にの味がする。口の中を切ったのとは違うじだ。の奧から上がって來ただ。で出しているのだろう。肺を傷つけたようだ。

「セルフヒール。よし、これで帳消しだ!」

「これで、分かったわよね。結局は私の魔法は防不可なのよ」

「ならば、食らわなければいいだけだ!!」

アスランが自分の転落で割れた瓦をAに向かって蹴り上げた。數個の破片が散弾のようにAに迫る。

「グラビティープレス!」

再びの重力倍増魔法だ。蹴り飛ばされた瓦の破片がAの目の前で、垂直落下方向に曲がって下に落ちた。

更に言うならば瓦片が落ちただけではない。Aの前方1メートル範囲の屋が丸々と崩れて抜け落ちる。屋に大きなが開いた。瓦片を撃ち落とすために屋ごと巻き込んだのだ。

「とうっ!」

そして、Aは自分で開けたを飛び越えてアスランに迫る。頭上に振り上げている殺伐とした鉈が太を反させていた。殺気と共に狂気が降って來る。

「私が上なのは、魔法だけじゃあないわよ!!」

振り下ろされる鉈の一撃。アスランはグラディウスを橫に構えて鉈を防いだ。剣が鉈をけ止めると激音を響かせる。

「重いっ!!」

すると強い衝撃にアスランの腰が僅かに沈んだ。沈んだのは腰だけじゃあない。踏ん張った衝撃で瓦を割り砕いて踵も沈んだ。耐えるので一杯だ。押し負けている。

「それっ!!」

更にAの垂直ジャンプからの上段前蹴りがしなやかに放たれた。高く振り上げたAの踵がアスランの顎先を蹴り上げる。

「ぐはっ!!」

モロに顎を蹴り上げられていた。蹴られたアスランが空を見る。

だが、空を見る寸前だ。蹴られる寸前である。別のが見えた。パンツだ。

「じゅ、純白だった……」

アスランは呟きながら転倒すると、ガラガラと転がりながら屋から落ちる。

アスランは裏路地の路上に落ちる剎那にを翻し足から綺麗に著地した。そして、屋を見上げながら睨みを利かせる。そこにはAがふてぶてしくアスランを見下ろしながら立っていた。スカートの中が丸見えである。ラッキー。

「畜生……、あんなに怖いのに可いんだよな。パンツから目が離せない。いてて……、心臓が……」

「どう、これでしは分かったかしら、私の実力が!」

「畜生、なんでこの世界にはスマホが無いんだ。スマホがあれば寫メを取りまくってメモリーに絵永久保存してやるのによ!!」

Aが黒山羊頭の小首を傾げた。

「何をぼやいているの、あなたは?」

「とりあえず、今はこのピンチを凌ぐことが優先か……」

アスランはエンチャント魔法を唱え始めた。

「ジャイアントストレングス、ディフェンスアーマー、フォーカスアイ、カウンターマジック、ファイアーエンチャントウェポン!」

アスランのが七に輝くと、手にあるグラディウスの刀が魔法の炎で燃え上がる。バフ魔法の完了だ。

「これでちょっとはステータスを底上げ出來るだろう……。でも、心許ないな……」

Aが二階の屋から裏路地にフワリと飛び降りて來た。音もなく著地する。

裏路地の幅は2メートル程だ。煉瓦作りの二階建ての家に挾まれている。ここでグラビティーバズーカを唱えられたら上に飛んで躱すしか無いだろう。しかし、それだけの回避方法では圧倒的に不利だ。

アスランが黒山羊頭を睨み付けた。魔法を躱すタイミング次第で、次の戦況が大きく変わる。

Aが腕を前に上げた。魔法が來る。

「行くわよ、グラビティーバズー……」

瞬間の割り込み。

「アスラン、伏せろ!!」

「ゴリっ!!」

Aの背後にハープーンガンを構えたゴリが飛び出して來た。援軍だ。ゴリナイス。

「食らえ、黒山羊野郎!!」

ゴリが発のハープーンガンを撃ち放つ。すると銛がAの背中に直撃して発に包まれた。風に荒れる裏路地でアスランが口走る。

「殺ったか!?」

當然ながら、殺れてはいない。煙の中から黒山羊のシルエットが浮き上がる。

「クソ……」

立っている。平然と立っている。何も効いていない。ノーダメージのように伺える。

「やっぱりだよね~……」

するとアスランの背後の扉が開いた。建の中から頭を出したスカル姉さんが手招きしている。

「アスラン、こっちこっち、速く~」

「スカル姉さんっ!?」

アスランは呼ばれるがままに建に飛び込んだ。

「アスラン、大通りに出るわよ」

「ゴリはどうする!?」

「気にしない」

「気にしてやれよ!!」

アスランとスカル姉さんが大通りに出ると、ゾディアックと魔法使いたちが待っていた。

スカル姉さんが言う。

「あの黒山羊が路地から出てきたら、一斉に魔法攻撃で袋叩きにするわよ」

アスランが親指を立てながら真顔で返す。

「名案だな!」

アスランたちがしばらく大通りで待機していると、ゴリの剝げ頭を鷲摑みにしながら巨漢を引き摺って、Aが建から出て來る。

どうやらゴリは気絶しているようだ。ヒクヒクといているから死んではいない様子だった。アスランはちょっぴり安心した。

スカル姉さんが片手を高く上げながら凜々しく指示を出す。

「全員で魔法攻撃準備よ!!」

「おい、ちょっと待てよスカル姉さん。ゴリが!?」

「気にしない!」

「気にしろよ!!」

「魔法攻撃、発!!」

スカル姉さんの容赦無い指示に魔法使いたちが一斉に攻撃魔法を放った。

ファイアーボール、ライトニングボルト、アイスジャベリン、マジックミサイルと様々だ。多種多彩な攻撃魔法がゴリごと巻き込む。

魔法の発に巻き込まれて背後の建も倒壊しそうなほどに揺れていた。かなりの破壊力だ。周囲の空気が満ち溢れた魔力の渦に激しくれる。

「グラビティーバズーカ!!」

次の瞬間、炎の中から魔法が飛んで來た。

「うきゃ!!」

その魔法にエスキモーたち數人の魔法使いが巻き込まれて飛ばされた。魔法使いたちが建の壁に叩き付けられる。たった一撃で半數の魔法使いがダウンして戦闘不能になっていた。早くも半壊なのだ。

「がルルルル……」

唸り聲だ。それだけじゃあない。煙の中で赤いが二つ揺れていた。黒山羊の瞳が赤くっているのだ。

しかし、可笑しい。その二つのの高さが2メートルほどある。

「な、なんだ……。この魔力は……」

呟きながらゾディアックが後ずさる。するとやがて煙の中から巨漢が揺らぎ出て來た。

2メートルの長に灰。背中には蝙蝠の翼。鬼のような強面の瞳は赤く輝き、鋭い牙が口からはみ出ていた。そして、頭には巻き貝のような羊の角が生えている。

悪魔だ。しかも上位悪魔だ。

「グルルルルっ!!」

ゾディアックが怯えながら言った。

「あれは、グレーターデーモン……」

「正解」

グレーターデーモンの背後から黒山羊頭のAが姿を表す。

「サモンデーモンの魔法よ」

「悪魔召喚か……」

「あなたがた、雑魚の相手は彼らが擔當するわよ」

「「「ガルルルルルルル!!!」」」

Aは『彼ら』と述べた。グレーターデーモンの背後から複數のグレーターデーモンが姿を表す。その合計は五だ。

ゾディアックが聲を振るわせながら言う。

「五のグレーターデーモンを同時召喚だと……。そんな馬鹿な。こいつは何者だ……」

魔法使いギルドの幹部であるゾディアックから見ても常識外のようだ。これほどの數のグレーターデーモンを一度に召喚できるのは常識を外れている才能なのだろう。

「さあ、行きなさい、グレーターデーモンたちよ!!」

「「「ガルルルルルルルっ!!」」」

グレーターデーモンたちがゾディアックたちに飛び掛かった。戦場は更に激しさを増していく。

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