《【窟王】からはじめる楽園ライフ~萬能の採掘スキルで最強に!?~》二百三十六話 走しました!!

レムリクに會いにいくと決めた俺たちは、転移門を使いラング州のレオール鉱床へと戻った。

転移門を出ると、この場所を調べていたシエルたちと出會う。

シエルは裝置を使い俺に語り掛けてきた。

「ヒール様。ラングスへ向かわれるのですね」

「ああ。シエルのほうはどうだ?」

「殘念ですが、特別ご報告できるものは何も見つからず。かつてこの地の造に攜わった者の報告と変わらず、転移門と採掘道のみしか殘されていませんでした。まあつまり、忘れの類はなかったというわけです」

シエルには他のヴェルーア人と共にこのレオール鉱床の見分をお願いした。

シエルが言うには、レオールの巨大な竪はヴェルーア人が築いたもので間違いないという。

シェオールに問題があった際に都市を築く予定地として確保したものだった。

そして黒鉄と魔防石はその際に使われた道

殘していたのは、都市を築く際に使えるようにするためだったらしい。

その他、何か忘れがないかシエルたちが確認したが、そういったは殘されていなかったようだ。

シエルはしかしと続ける。

「鉱床のり口の大も見てきました。あれは隕石の痕跡でしょう……レオール山にも隕石が落ちたようですが、ここは無事だったようですね」

リエナがそれに答える。

「シェオールではなく、この地に都市を築いていれば……シルフィウムの転移門がある山も無事でしたね」

「はい……當時はシェオールが一番安全と考えていたのですが、ですがシェオールは今や海の底。一方、シルフィウムやラングスは今も地上に殘っている……私たちは誤った選択をしてしまったわけです」

シエルたちは今の地上の國家よりも優れた技力を持っていたはずだ。

そんな彼等でも推測を誤った……

これは警鐘とも思える。

俺たちはシェオールが比較的安全であると信じているが、あの闇の瘴気によってシェオールが崩壊する可能もある。

シェオールに住めなくなることもあり得るわけだ。

やはり、他の地域や國々との協力関係を築いておくに越したことはない。

シエルが言う。

「とはいえ、今更後悔しても仕方ありません。今の私たちは、ヒール様を主とするシェオールの民。ヒール様のおかげでを浴びることができるかな日々を送れています」

「俺のおかげだなんて。シエルや皆のおかげだよ」

「ふふ。本當にお優しい。 ……ともかく、このレオール鉱床はもう心配いりません。私もここの防衛に攜わります。ヒール様はどうかレムリク王子と」

「ありがとう、シエル。シェオールのためにも必ず今回の計畫を功させるよ」

「はい、ヒール様! どうかお気をつけて」

を曲げお辭儀をするシエル。

俺は手を振り、レオール山を後にするのだった。

その翌日。

あたりが暗くなったのを見計らい、俺たちはまずラングスの近くの枯れ木へと向かった。

そしてその枯れ木の下を掘り、地下からラングスの中央へとまっすぐ道を掘り進めていく。

俺の後ろに控えるのは、リエナ、フーレ……そしてエレヴァン、アシュトン、ハイネスだ。

また、この坑道のり口はベーダー人に擬態させたゴーレムに見張ってもらっている。

だから俺は特に何か心配することもなく、掘ることに集中できた。

「もうそろそろ敵の巣の下か?」

エレヴァンの大きな聲が響くと、フーレがしっと指を立てた。

「……お父さん! 地上に聞こえたらどうすんの?」

「わ、悪い、悪い」

「それと、戦いは最終手段だからね? もう……ちゃんと分かってる?」

「わ、分かってるって」

小聲で答えるエレヴァン。

とはいえ、皆も今がどこらへんか気になっているだろう。

俺はピッケルを振りながら周囲の魔力をじ取る。

上から無數の魔力の反応が。

すでにラングス市街の地下に至ったようだ。

「今はラングスの街の地下だ。亜人たちが広場の近くで立ってくれているらしいから、広場も……と、もう著くな」

各地に散らばっている耳を生やした者たちが、同じ方向へと顔を向けている。

彼らは俺たちのため屋敷の向を見張ってくれている亜人たちだ。

彼らのおかげで屋敷の位置が摑めた。

そして遠くのほうに周囲よりもひときわ大きな魔力の反応……おそらくレムリクらしき反応があった。

高さからして地下にいるのは間違いない。

亜人のおかげで牢獄は屋敷の地下にあることが分かっている。

レムリクはやはり監獄にいたか。

俺はピッケルを振る手を止め、地図を出す。

「よし。一度作戦の確認をしよう。屋敷は牢獄の下……だから、レムリクがとらわれている牢屋の床にをあける。その後はレムリク次第だが、基本的にはすぐにこの來たを戻るつもりだ」

「戦いを避ける以前に、そもそも発見されないようにするわけですね」

リエナの言葉に俺は頷く。

「ああ。レムリクの近くに看守や他の囚人がいると厄介だが……幸い、魔力の反応からしてレムリクの近くには誰もいないのが分かる」

「絶好の機會ですな。何者かが近づけば、我ら兄弟がお報せします」

アシュトンの聲にハイネスが任せてくだせえとを叩く。

フーレがぼそっと呟く。

「うちのお父さん、やっぱりいらなかったね……」

「うるせえ! まだ分から」

「だから、靜かに! ……というか足を引っ張りそう」

慌てて口をふさぐエレヴァンにフーレは呆れるような顔で言った。

「ともかく、迅速にことを済ませよう。皆、頼んだぞ」

俺がそう言うと、皆深く頷いてくれた。

俺は慎重にピッケルを振るい、音でばれていないか周囲の魔力の反応を見ながら進む。

時々だが、目的の場所にいるレムリクらしき者がこちらに顔を向けているようにも見えた。

レムリクは音に気付いていたのかもしれない。

しかし、他の魔力にはこれといったきはなかった。

レムリクに近づく者もいない。

もともと、看守や他の囚人とはし離れた場所にいるのも幸いした。

そうして俺は、ついにレムリクの真下あたりへと至る。

フーレが小聲で言う。

「ここから出てきたらさすがの王子様も驚きそう……」

わっと聲を出して驚く可能もある。

しかし、そんな心配を打ち消すように、上からコンコンと床を打つ音が響いた。

こちらがそれに反応し、二回天井を叩く。

するとまた二回叩く音が返ってきた。

こちらの存在にやはり気付いている。

俺は天井にピッケルを小さく靜かに振るった。

落ちてくる瓦礫が俺のインベントリに消えていく中、が差し込めてくる。

そこにはこちらを覗くレムリクがいた。

驚くというよりは心した様子で言う。

「來るとしたら地下だとは思っていたけど、本當に來るとは」

「表からろうとすれば戦いになるからな」

「それはそうだろうね……しかし、どうしてこんな危険を冒してまで來たんだい? まさか約束を破ったことを叱りに來たわけでもないだろう」

フーレが言う。

「助けにきたに決まっているでしょ」

「僕を助けに、か。何故だい?」

レムリクの言葉に俺はこう答える。

「何故と言われても……いや、話したいことがある」

「兄上のこと、そしてシルフィウムのことかな」

「分かるか」

「君たちが亜人のあのの子を助けたのを見てから、なんとなく君たちの考えは理解できた。戦になればシルフィウムはもちろん亜人に被害が及ぶ」

「そこまで察してくれているなら話は早い。俺たちは爭いを止めたいんだ」

それを聞いたレムリクは目を瞑る。

「君たちがそれをむ理由はさておき、何故僕にそれを話す? 僕はベーダーの王子なんだぞ。この部屋を見れば、囚人と言えと僕はやはり特別だということが分かるだろ」

レムリクの囚われた部屋は監獄とは思えないほど立派だった。

窓こそないが調度品は立派で、機には茶や菓子が置かれているのも見えた。

明らかに上流階級の待遇。

ベーダーの上流階級なら、シルフィウムよりもベーダーの味方をするのは普通だ。

しかし、レムリクは違う……俺はそう確信している。

「レムリクだからだ。戦いが始まれば、亜人やシルフィウムの民だけでなくベーダー人にも被害が出る。お前ならそれが分かると思ったんだ」

「僕を買って、というわけか。しかし、僕は君たちを裏切る可能もあるかもしれないんだぞ?」

「そんな人間には見えない。ベーダーのことを考えるなら、あのレオールの地下の品を獨占しようとしたはずだ」

「あれすらも演技だとしたら? 僕が君たちに敵わないことを知っていて、油斷させようとしているならどうする? そもそも、亜人を助けていたのも己の野のために亜人の力がしいだけかもしれないだろ」

「多くのベーダー人の反を買ってまでか?」

「君も僕の兄を見ただろう? 宮廷には、僕よりも力のある兄弟がたくさんいる。正面から派閥を拡大しても敵わない。だから彼らが見向きもしない辺境の亜人を味方につけようとするのは、そうおかしなことではないと思うけどね」

「否定はできないな。お前が王になりたいという野を持っていても何もおかしくない……いや、むしろお前は」

レムリクは即答した。

「そうだ。僕はこの國の王になりたい。偉大なる銀を手にれ、闇の軍勢や諸外國を屈服させ、後世まで語り継がれる名君になりたい。どこか矛盾があるかな」

その言葉にエレヴァンが聲を上げた。

「それがお前の本心か!? うちの大將を騙しやがって!!」

「お父さん! というか聲大きいって!!」

フーレは無理やりエレヴァンの口に水魔法を被せ、手を引っ張ってから遠ざけさせる。

レムリクの言葉は否定できない。

いや、むしろ王になりたいというのはレムリクの本音かもしれない。

レムリクは王になるために俺たちを利用しようとしている……有り得る話だ。

それが本音だとして、何故俺たちにそれを告げる必要があるのかは解せないが。

それでもここからレムリクを連れだすことは彼が言うようにリスクを伴うわけだ。

裏切られ、亜人もシルフィウムもシェオールも被害をけるかもしれない。

それでもレムリクを助けるべきか否か……

答えは単純だな。

「……レムリク。お前が本心で何を考えているか俺たちには知る由もない。だが、俺たちにはお前の力が必要だ。爭いを止めるため、亜人たちを助けるため。俺たちは、そのために力を貸してほしいだけ」

「信用できない相手の力でもかい?」

「人が死ぬかもしれないんだ。信用しきれるかなんて査している時間はない。裏切りそうなら全力で止めるだけだ。俺はただ、取引がしたい」

「僕を自由にする代わりに、力を貸せか」

「そうだ。もちろん提案に乗るかどうかはお前次第。お前だって、俺たちを信用しきれてないだろう」

そう答えるとレムリクはふっと笑う。

「友人として助けに來たわけではなく、僕の力がしくて來た……そう言ってくれる方が、僕も安心だな。 ……なにせ、こんな僕なんかをわざわざ助けに來るんだから」

レムリクはこちらに真剣な表を向ける。

「いいだろう。自由にしてくれたら、僕は君たちに力を貸す」

渉、立だな」

俺が手を差しべると、レムリクはその手を強く握り返してきた。

「ああ。後悔はさせない」

「その言葉を信じるよ」

それからレムリクはミスリルの剣を持ち、俺の掘ってきた坑道へと下り立った。

「急ごう。もうしで使用人が巡回にやってくる」

「分かった。を塞いだら行こう」

俺はインベントリから巖を出してを塞ぐと、皆に振り返る。

「よし皆、帰るぞ」

「おう!」

皆で坑道を走って枯れ木を目指す。

走る中、エレヴァンがレムリクに言う。

「あんた、俺やこの二人を見ても何も言わないんだな」

エレヴァンはゴブリン。

アシュトンとハイネスはコボルト。

二人とも亜人というには人間とは離れた見た目をしている。

レムリクはこう答える。

「亜人の仲間がいてもおかしくはないからね。ところで、名前は?」

「俺はエレヴァン。こっちはアシュトン、そしてハイネスだ」

「エレヴァンにアシュトンにハイネスか。よろしく。 ……しかし皆、只者じゃなさそうだね。僕を助けるだけに、こんなに連れてきてくれるなんて」

「そんだけうちの大將があんたを気にったってことだ。裏切ったらただじゃ済まねえからな」

「はは、覚えておくよ──うん?」

レムリクは走りながら上へと顔を向けた。

すでにラングスではなく、外の地下にいるはず。

その証拠に上に魔力の反応はない。

「どうした、レムリク?」

「いや、何も──っ!? 皆、止まれ!」

レムリクの言葉に俺たちは急遽足を止めた。

最初は理由が分からなかった。

ただそのすぐ後、上──空のほうから強力な魔力の反応が急降下してくるのが分かった。

「──まずい!」

俺はすぐさま、周囲に魔力で壁を展開する。

それと同時に、坑道に巨大な何かが突っ込んでくるのだった。

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