《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》

楓は1人にすると、やっぱりナンパとかされてしまうから、私としては安心できない。

ちょっとした用事で楓から離れている隙を狙ってなのか、またしてもの子たちが楓に言い寄っていた。

話の容はよくわからない。

しかし、放置していいレベルではないのは確かだ。

私は、問答無用で楓の腕を摑んで、そのまま歩き出していた。

たぶんムキになっていたんだと思う。

「香奈姉ちゃん?」

「………」

何か言いたげなのは、顔を見れば一目瞭然だ。

だけど今回に限っては、なにも聞きたくないっていう気持ちが一番強い。

しは察しなさいよね。バカ。

の子たちも、半ば呆然となっていたから彼付きとは想わなかったんだろう。

「あの子たち──なかなか可かったね。どっちが好みだった?」

私は、あえて意地悪な質問をしてみる。

こんな質問をしたら、どう答えても私が怒ってしまうのは確実だ。

「う~ん……。どっちって言われてもなぁ。丁重に斷ろうと思ってたし。なんとも……」

「そっか」

まさかそんな返答をしてくるだなんて思わなかったので、私としても怒りようがない。

でもの子たちの特徴くらいは、把握してほしかったな。

なにかの參考になってたかもしれないのに……。

「でも多は関心を持たないとダメだよ。相手に失禮だと思うから」

「うん。わかってるんだけど……」

楓は、指で頬をぽりぽりと掻きながらそう言う。

関心はあったんだ。

それはそれでヤキモチを妬いてみたり。

「関心はあったんだ……。なるほどね」

「そこまで深い意味はないよ。ちょっとだけ。ちょっとだけだから。いきなり話しかけられたら、誰だってそうする反応だと思うし」

「ふ~ん」

私は、わざとツーンとした態度で楓を見る。

本音を探るためにそうしたんだけど、段々と意地悪になってる私がなんとも──

私は楓にどんな反応を期待してるんだろう。

そうは思ったが、あんまり楓を困らせるのはよくない。

「あんまり鼻の下をばさないようにしないとね。私がいるんだから──」

「うん。そこは気をつけるよ」

「ホントに。気をつけなさいよね」

そう言いながらも、私は楓の腕にしがみつく。

意地悪をするのも楓に悪いと思ったので、これ以上はやめておこう。

楓との仲は、極めて良好だと思う。

スキンシップの回數こそ最近は減ったけど、必ずしもそれが仲を良くするものではないのは、他のカップルを見て確認済みだ。

「あの……。香奈姉ちゃん。今日はその…しないよね?」

楓は、なにやら張した様子でそう訊いてくる。

言ってる意味は理解しているつもりだ。

私は、當然だと言わんばかりに楓に言った。

「するに決まっているじゃない。私と弟くんの仲なんだから、そのくらいはわかってもらわないと──」

「やっぱりするんだ……。いつもの事だから、いいんだけどさ……」

「私を喜ばせたいのなら、やってくれないとダメだよ」

「なるべくなら、やりたくないんだけどな……」

「弟くんに拒否権はないよ。なにしろ一緒にるんだから、慣れてもらわないとね」

の子のを見ること自、慣れないんだけど……」

「大丈夫だよ。こんなこと、私か花音くらいしかやらないから」

それを自慢げに言うのもどうだろうっていう話なんだけど。

楓に見られてしまうことくらい平気だ。

それにいつもどおり一緒のお風呂だから、當たり前に見られてしまうことくらいは覚悟している。

「花音もするんだ……」

楓は、微妙な表を浮かべる。

私は、楓にもわかりやすいくらいの不満げな表で言う。

「花音だっての子だよ。そのくらいはするでしょ」

「だからって、こんなことを僕にお願いするのは……。さすがに他の人には──」

「うん。弟くんだからこそお願いできるし、そうしてるんだよ」

「うぅ……。そんなこと言われたら……。よけいに斷りにくいじゃないか」

「大丈夫だよ。隆一さんには緒にしてあるから──」

「それは……。ちょっと大丈夫じゃないかも……」

楓にとって隆一さんは、『兄』というよりか『タイプの異なる他人』なんだろう。

隆一さん自も、私と楓の向がかなり気になっているみたいだから。

やっぱり私と仲良くしているのは、楓にとっては良いことばかりではないということだろうか。

──だって。しょうがないじゃない。

私は、楓と一緒にいるのがなにより楽しみなんだから。

他の人と一緒にいたって気を遣うだけだし。

「あんまり気にしない方がいいかもしれないよ。私なんかは、興味もないからほぼ無視しているし」

「無視って……。それは兄貴に悪い気が──」

「だって特に用件もないし。気にする方がおかしいでしょ」

「それは、そうかもしれないけど……」

楓には、隆一さんの気持ちがわかっているのかもしれない。

それでも私は、楓の方に気持ちが向いている。

頼りない印象なのかもしれないが、やればできる人なのは楓も変わらないのだ。

「それに隆一さんにはもう……。他に好きな人がいると思うから、私なんていたって邪魔になるだけだよ」

「そうなの?」

「もしかして、気づかなかったとか? そんなことはないよね?」

「全然気づかなかったんだけど……。それでも香奈姉ちゃんを求めてるのって──。兄貴の獨占とか?」

「隆一さんは、ただ単にバンドメンバーを求めているだけだよ」

「バンドメンバーって……。香奈姉ちゃんの擔當はボーカルだよね?」

楓は、不思議そうな表でそう訊いてくる。

やっぱり知らないんだな。

それなら楓には事実を知ってもらおう。

「それが違うんだな」

「違うの? それなら何で……?」

「私って、一応ギターも擔當してるんだよ。だから隆一さんは、ボーカルとしての私じゃなくて、ギターを弾いてくれる人として私を求めてるんだよ」

「そうなんだ。なんか意外かも──」

「彼にとっては、私がボーカルをやってるのは面白くないはずだよ」

「なんで? 香奈姉ちゃんの歌聲は、とても良いのに──」

「隆一さんのバンドは、あくまでも隆一さん自が前に出るっていう自己満なバンドなんだ。まわりのことなんてあんまり見てないっていうか…ね。そんなイメージを抱いてしまってさ。私には合わないと思ったから、いを斷ったのよ」

理由を言ったらそれだけではないんだけど。

端的に言えば、それだけでもいいはずだ。

「なるほど。そんな事があったんだ……」

「まぁ、弟くんが気にすることじゃないよ。そんなことよりも、今日もよろしくね」

「やっぱりしなきゃダメなの?」

楓は、なぜか恥ずかしそうにもじもじとしている。

見られてしまうのが、そんなに恥ずかしいんだろうか。

お風呂にる時は絶対に一緒だから、見られてしまうのはお互い様だと思うんだけど……。

「そんなの當たり前じゃない。花音だってんでいることなんだから──」

「花音もなのか……」

なにやら、浮かない表の楓。

花音が一緒だとまずいことでもあるんだろうか?

「花音が一緒だとやっぱり気まずかったりするの?」

「それはまぁ……。花音だって々と思うところもあるだろうし……」

「そんなの弟くんらしくないよ。もっと積極的にならないとの子に嫌われちゃうぞ」

そうは言うものの、それは私限定なんだけど。

でも楓もなんだかんだ言って、しっかりとやることはやってくれるから文句はない。

あとは私の気持ちが一番大事なだけだ。

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