《俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。》最終章-33【武道家魔師】

手の中のヅラを見たあとに、俺のハゲ頭を見たアマデウスが言う。

「お前、ヅラだったのか……」

アマデウスの瞳が笑ってる。吹き出しそうなのを堪えている。畜生……。

「すまないけど、それ、返してくれないか……」

「ほらよ」

アマデウスがポイッとヅラを投げた。すると俺の足元に落ちたゴメスがワシャワシャとき出す。そして、俺の足から頭によじ登って行くとハゲ頭に鎮座する。ゴメスも自分の定位置を理解しているようだ。賢い賢い。良い子である。

「それにしても……」

俺は手首で自分の鼻を拭った。は出てないな。でも、ひで~痛いぞ。鼻の下を打たれただけなのに頭痛がガンガンする。まだ、若干景が歪んで見える。

目が回っているのか。足元がふらついている。なので俺は頭を軽くトントンと叩いた。それで景が安定した。

続いて爪先をトントンした。足にも力がちゃんとるぞ。よし、これなら行けるかな。

俺は雙剣を構え直す。左足を前に出して雙剣を前に並べて中斷で構えた。

「もう、パンチなんて食らわねえぞ!」

「どうかな」

アマデウスがローブをぎ捨てた。更に上半の服もぎ捨てる。

唐突に服をぐなんて変態か、こいつ……。

そして、床に落としたローブと服の上に、風で飛ばされないようにスタッフを重石代わりに置いた。

「これは……」

上半出したアマデウスのを見て唖然とする俺。

「引き締まっている……」

スラリと立つアマデウスのは魔法使いとは思えないほどに引き締まっていた。

細いのに筋質。細マッチョってやつだ。しい細マッチョは試合直前のプロボクサーのように引き締まっている。まるでダイアモンドのように蕓的な筋だ。

アマデウスが語り出す。

「私の父は武道家系冒険者なのは知っているよな」

「知らん……」

「だが、死んだ母が魔法使いでね」

「俺の返答を無視したな……」

「だから俺は小さなころは武と魔を選考していた」

「だから毆り合いも強いと?」

「だが、父への反発から武道家ではなく、俺は魔法使いの道を進んだ。それでも冒険者として一流を極められたのは武道のおでもある。武と魔のハイブリット、それが攻防に有利と働く」

「攻めは魔法で、防や回避は武ってわけかい?」

「そうだ」

答えてからアマデウスが拳を固めて構えを築く。左足を軽く前に出して、握った拳が上下縦に真っ直ぐ並んでいる。何ともコンパクトな構えだ。自分の正中線を防して、相手の正中線を狙った構えである。そこには武道の輝きが明らかに見えた。

鋭い眼を俺に向けるアマデウスがクールに述べる。

「だが、時には逆もあり得る」

「魔法が防で、武が攻めか……」

アマデウスがエンチャント魔法を複數唱え始めた。

「ジャイアントストレングス、アニマルタフネス、フォーカスアイ、バタフライディフェンス、スマッシュビー、ハイスピードスター、ライトナックル!」

ステータスの底上げ魔法だ。

バフ魔法の連続にアマデウスのが様々なオーラに包まれる。そして、両拳が目映く輝いていた。拳のパンチ力を強化したのだろう。猛虎の鋭さが映っていた。

「なんだなんだ。俺が知らない魔法がりまくりだぞ……」

おそらく上位魔法のエンチャントだろう。

「魔法の知識なら私のほうが一つも二つも上だからな」

「流石は魔法使いってわけだ。なら、俺も~」

俺もバフ魔法を唱え始める。

「ジャイアントストレングス、ディフェンスアーマー、フォーカスアイ、カウンターマジック、ファイアーエンチャントウェポン、アイスエンチャントウェポン!」

俺のグラディウスが燃え上がり、黃金剣が氷結に包まれた。二つ並ぶ炎と氷の雙剣。その二刀の間から俺はアマデウスを睨んだ。

一方のアマデウスはる拳を縦に並べて俺と向かい合っている。その眼には隙がない。

無いが──。

明らかに分かるリーチの違い。向こうは素手の拳。こちらはロングソードの二刀流。この差は誰にでも理解できるリーチの違いだ。俺のほうが圧倒的にリーチが長い。

長い、のだが──。

長いのだが、何故かアマデウスにこちらから打ち込めない。リーチが五分に見える上に隙が無いのだ。この覚は勘違いでは無いだろう。あいつの武は、それだけのレベルを有しているのだろうさ。

「ふっ」

アマデウスが鼻で笑った。

「流石は若いのにソドムタウンでソロ冒険者を名乗るだけの実力者に育っただけはあるようだな」

俺は奧歯を噛み締めながら述べる。

「打ち込めない。あんたの間合いが何か可笑しい……」

悔しいが事実だ。俺はアマデウスに打ち込むだけの隙を見つけられないでいた。

するとアマデウスが摺り足で半歩前に出る。

「素手故に間合いが狹い。それは素手の武の欠點だ。だが、その欠點を打開しているからこそ武道で武を相手に戦えるのだよ。それが素手の武道家ギルガメッシュ流の武。バカ親父を褒めたくないが、この武だけは本──っだ!!」

最後の「っだ」に合わせてアマデウスが前に跳ねた。一歩の跳躍で4メートルある間合いを瞬時に積める。相當の健腳だ。

「先手必勝っ!!」

二本並べるアスランのロングソードにアマデウスの顔面が超接近した。雙剣の刀がアマデウスの二つの眉れそうな距離である。

剎那、二連の閃が瞬いた。アマデウスの攻撃。

「ふんっ、ふんっ!!」

二連のアッパーカット。

左右連続で打ち振るわれた上げ突きで俺の両手が上へと弾かれた。俺は剣を持ったままバンザイの狀態になる。両手を弾き上げられたのだ。無防備になる。

「ボディーがガラ空きになったぞ、アスラン」

アマデウスが俺の眼前で微笑んでやがる。そんな中で俺の額に冷たい汗が浮き上がった。マジでこれは不味い。

「やぁべぇ〜……」

そして、アマデウスの打が俺のや腹に打ち込まれた。暴れ第子のような音が轟く。

に正拳突きが四発。腹に下突きが三発。左右の脇腹に鍵拳が二発。瞬時に打ち込まれる拳は計九発。

拳打の衝撃が皮鎧の走行を貫通して肋骨を軋ませながら肺と胃袋を激しく揺らした。息が出來ない。呼吸が強制的に止まった。

更にアマデウスがを捻って背を見せる。そこからの中段後ろ廻し蹴りが俺の腹部に蹴り込まれた。

「はっ!」

「ぐほっ!!」

俺のがくの字に曲がって飛んで行く。

後方に飛んだ俺は一回転してからすぐさま立ち上がる。しかし、俺の後ろ足は第九の隅ぎりぎりであった。落ちる寸前だ。もう後がない。

「あぶねぇ……」

あと一歩分飛ばされていたら落下していただろう。

「良く、落ちなかったな!!」

アマデウスが再び來る。

「この野郎ッ!!」

俺はグラディウスの縦切りでカウンターを狙うが、アマデウスは半を右に躱して反撃を避ける。紙一重の回避である。

「まだだ!」

俺が二打目の黃金剣を振りかぶった直後にアマデウスの裏拳が放たれた。手首のスナップを効かせた素早い裏拳がジャブの速度で俺の鼻にヒットする。

「はぃ!」

「ぐあっ!!」

パチンっと言う響きと同時に瞑れた鼻から流れ込んだ電撃が脳にれた。視界が一瞬だけ白く染まる。

続いて鳩尾に衝撃。更に間にも衝撃が走る。何を打ち込まれたか分からなかったが連続攻撃を打たれたのは間違いない。

その攻撃で仰け反った俺のが一歩後退した。しかし、足場が無い。

落ちる──。

「落とさないぞ、アスラン!」

第九から落ちかけた俺の襟首をアマデウスが摑んで支えた。

そこからの背負い投げ。

擔ぎ投げられた俺のが宙を高々と舞ってから地面に落ちる。

「ぐはっ!!」

背中を打った。苦痛と共に自分の意思とは別に肺から息が吐き出される。それでも俺はすぐさま立ち上がり剣を構えた。戦意を見せる。

「く……そ……」

吐きそうだ。それにのあちらこちらが痛い。特に金玉が痛いぞ……。になっちゃう……。

アマデウスがを斜めに構えて可憐なステップを刻んでいた。爪先で跳ねている。

「容易くは終わらせないぞ、アスラン。し俺にも遊ばせてもらう」

「余裕をかましてンじゃあねえぞ、糞野郎……」

ヤバイ……。こいつ、マジで強いぞ……。負けちゃうかも……。

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