「……ちゃん」

「う……うーん」

「もう、姉ちゃんてば！いつまで寢てるつもりなの！？もう、みんな集まってるよ！？」

「もうちょっと……風ちゃんも、おいで……ほら」

「ちょ……ちょっと！？」

菜は、自分のことを呼びに來たと思われる妹の腕を引き寄せ、自分のの中に抱き寄せた。

姉に引っ張れた風香は、何も抵抗することなくその力にをゆだねる。

風香自も、菜のの中に顔を預ける覚は嫌いではなかった。いころから、忙しい母親に変わって菜は風香の面倒を見ていた。

寂しくて心細いときには、菜は風香泣くのを我慢している風香を抱き寄せて安心させていた。

風香もしおとなしくなったことをじ、菜は再び意識を眠りの方へ向けようとした。

「……だ、ダメよ!みんな待ってるんだよ！？は、早く起きて！！」

風香はそう言いながら、菜のから離れて飛び起きた。それと同時にハルナの上に掛けられていた布も一緒にはぎ取った。

無理やり起こされて、両手で目をこすり何とか起きようとする。そして、起きようと決め一度両手を頭の上にあげて背びをした。

「もう……やっと仕事が終わったんだから、もうし寢かせてくれたっていいじゃない？今日なんか用事があったっけ？」

「みんな姉ちゃんのこと、待ってたんだよ……さ、はやくはやく、起きて起きて」

「もう、そんなに急がなくったって……」

風香は菜の手を取り、無理やりベットから下ろした。

そして部屋を出て階段を下りていくと、自分の家だがどこか懐かしいじがした。

階段を下りると、目の前にはリビングへの扉があり、菜の手をつないだ反対の手で風香はその扉を開けた。

「おかえり……菜」

「おかえりなさい、菜。よくやったわね」

「お母さん、お婆ちゃん……」

菜はどうしてみんなが集まっているかわからなかったが、それよりも懐かしい二人の顔を見てホッとする。

それと同時に、菜は付けていた指のことを思い出した。

だが、れた指にはいつもあった指にることができなかった。

「……もういいの、菜。あなたのことはずっと見ていました。”私のいた世界”を救ってくれ本當にありがとう」

「――え？」

「私の本當の名前は、”カメリア・スプレイズ”というのよ……聞いたことがあるでしょ？」

「スプレイズ……あ、ティアドさん」

「そう、ティアドは私の妹。これは聞いていたでしょ？私は、魔に襲われたとき、こちらの世界へ飛ばされたのよ……どういう理由かはわからないけどね」

その話を聞いた風香や、菜の母親も當たり前のようにその話を聞いている。その事実に驚いているのは、菜一人だけだった。

きっとそれは既に、カメリアがこの家にいる者たちに事を説明しているのだと判った。

「でも、こうも考えたの……あなたたちは、私がいた世界へと飛ばされてしまった。それは、あの世界を守るためだと……菜、私も元の世界にいた時に”創造者”という存在に気付いていたのよ。それを調べようとしていたら、あのような事故に巻き込まれてしまったの」

當時ハルナたちは、始まりの場所周囲で様々な調査を行っていた時、ヴァスティーユとヴェスティーユが関連しているサヤが魔を創り出していると判斷していた。

「で、でも……魔の原因はサヤちゃんだって……」

「いいえ、魔という存在はは元々あの世界にいたわ。元素と魔素があった向こうの世界では、どちらも不安定な資源だったから……だから扱いが難しかったのよ。その資源が暴走することによって瘴気が生まれたのよ、こっちの世界の腫瘍みたいなものね、突然変異した資源なのよ」

「ちょっと待って……お婆ちゃん。だとしたら、サヤちゃんは、カメリアさん……お婆ちゃんが飛ばされる前から向こうの世界に行ってたみたいなのよ？そうなると……こう、時間の順序が……」

「それはきっと”神様のいたずら”かもね。詳しいことは判らないけど、こちらの世界と向こうの世界の時間の流れが違うのかもしれない……どうしたって、私がこちらの世界へ來たことだって普通のことじゃないわよ？」

「そ、それはそうだけど……」

「ともかく、私の生まれた世界はあなた達によって守られたの。あなたを……あなたをずっと一人ぼっちにさせてしまった……ごめんなさい、本當にごめんなさい」

祖母は手で口元を隠しながら、涙をこらえて菜に対して頭を下げる。

「お婆ちゃん……大丈夫よ。向こうの世界に人たちは、とてもやさしかったわ……ラファエルさんやブンデルさん、エレーナにステイビルさんたちも、私の力になってくれたの。寂しくは……ううん、ちょっとだけ寂しかったけど、大丈夫だったわ！」

「そう……良い環境に恵まれたのね。こうして再びあなたと會えてうれしいわ。……でも、まだあなたのことを待ってた人たちもいるのよ？」

「え？誰？」

「ふふふ、行ってらっしゃい。私たちはここで待ってるから……あのお店よ」

そういうと、菜の目の前の景が一瞬にして変わった。

そこにはいつもの見慣れた扉があり、発など無かったかのようにあの日のままような狀況でそこに殘っていた。