《兄と妹とVRMMOゲームと》第四百三十話 虛ろなる覚醒①

「今日は何かあるのか……?」

高校に通學途中だった奏良はその景を見て愕然としていた。

紘が不穏な未來を予見し、そして自分の名前を挙げているところを目撃してしまったからだ。

狀況を理解した瞬間、奏良の瞳は大きく揺れき、困する。

奏良はずっと梨に想いを寄せていた。

人見知りの激しい彼を、遠くから見守っているだけの儚い

ギルドのプレイヤー以外とは、現実では深く干渉させないプライバシー保護という制度。

その影響で、現実世界では彼に聲をかけることも、れることもできずにいた。

それは、理想の世界へと変わってしまった今も継続されている。

しかし、梨が『アルティメット・ハーヴェスト』と『キャスケット』を兼任することになったことで、奏良の周囲を取り巻く環境は一変する。

同じギルドのメンバーになったことで、奏良は仮想世界だけではなく、現実世界でも梨と親しく話すことができるようになったのだ。

その事実は、この不にようやく終止符を打てるはずだった。

知らず知らずのうちにが湧き踴る。

今日こそは機會を見つけて、現実世界の彼と話してみせる!

ところがその奏良の決意はほんのしの時間しかもたなかった。

何故なら、今日は『レギオン』と『カーラ』の者達が梨に接してくる可能が高いということで、『アルティメット・ハーヴェスト』の者達が彼の周囲の警戒に當たっていたからだ。

それでもいつか、現実世界で梨と話せるチャンスが訪れるはず、と奏良は度々、機會を窺っていたのだが、一向にそれは訪れる気配はない。

梨、大丈夫だ」

梨、無理はするなよ」

「……う、うん」

紘と徹の気遣いに、梨は掠れた聲で答える。

その仲睦ましげな様子を、奏良はし離れた場所から絶え間なく眺めていた。

同じギルドメンバーである梨とは親しく話すことができる。

たとえ、『レギオン』と『カーラ』の者達が梨を狙ってきても、奏良はを呈して護ってみせる覚悟があった。

しかし、梨に近づけば、間違いなく『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバーである紘と徹が割ってってくるだろう。

奏良は予想外の選択を迫られて、苦悶の表を浮かべる。

梨に會いたい。

だが、會えば、プライバシー制度に違反する可能がある。

『アルティメット・ハーヴェスト』が、『レギオン』と『カーラ』から梨とリノアを守るために行っていることとはいえ、何故、僕達まで適用されているんだーー。

ーーどうして。

その問いに込められた思いは複雑怪奇なのだろう。

二律背反に苛まれていた奏良は、そこでその事実に矛盾をじた。

そういえば、『レギオン』と『カーラ』の者達にもプライバシー制度は適用されるはずなのに何故、梨を狙ってくるんだ。

もしかして、明晰夢の力はプライバシー制度さえも無効化してしまうのか。

と混迷は渦となる。燻り続けていた奏良の攜帯端末に、一通のメッセージが屆いた。

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