《兄と妹とVRMMOゲームと》第四百三十一話 虛ろなる覚醒②

『奏良よ。『アルティメット・ハーヴェスト』から救援要請がった。こちらでも『レギオン』と『カーラ』が梨に接してくることがないように努めるつもりだ。梨を護るために意見を聞きたい』

容は先程、紘が語っていた『レギオン』と『カーラ』についてのことだった。

有からの救援要請に関する連絡に、奏良は神妙な表を浮かべる。

『そうだな。梨は羅の真なる覚醒のための重要な要だ。それに吉乃信也と吉乃かなめは『創世のアクリア』のプロトタイプ版の開発に大きく関わっていたはずだ』

有から救援要請の顛末を聞き、奏良は痛ましげな表を見せた。

『有。吉乃信也を捕らえたことで、現実世界でも『レギオン』と『カーラ』のきが活発化しているかもしれないな』

『奏良よ、恐らくはそうだろう』

メッセージのやり取りを終えた後、奏良は改めて前方の梨達へと目を向ける。

梨。まだ、現実の君に直接、會えないのなら、僕はこれからも君を守るためにできることをしていくだけだ」

奏良は蚊が鳴くような聲でつぶやいて、攜帯端末を強く握りしめた。

「それにしても、有はどうやって梨を護っていくつもりだ。下校時間だと、ここに著くのが夜になる可能がある」

有達が通っている高校や中學校はここから離れている。

近くの高校に通っている奏良とは違い、すぐに梨のもとに駆けつけることはできないはずだ。

「まさか、僕に梨の護衛を全面的に任せるつもりじゃないだろうな」

確証はない。

だが、こういう時の嫌な予は當たるものだ。

暗澹たる思いでため息を吐いた奏良は自の高校へと足を向けた。

「この狀況はまずいな」

放課後、有は妹が通う中學校の校門で花音が來るのを待っていた。

今朝、屆いた『アルティメット・ハーヴェスト』からの救援要請に応えるためだ。

今日は梨が目覚めているため、は高校を休んでいる。

有は花音と合流して梨のもとに向かう手筈だったのだがーー。

『お兄ちゃん、ごめんなさい。もうし時間がかかりそうだよ』

『妹よ、分かった』

有は攜帯端末に屆いた花音のメッセージに返信する。

花音は學校関係の行事が長引いてしまったことで、待ち合わせ場所である校門に行くことができないようだった。

「ふむ。今から向かうと、梨達が住む街に著くのは夜になってしまうな。仕方ない。俺達が著くまで、奏良に梨の護衛を任せるしかないな」

有はそう結論づけると、今度は奏良にメッセージを送信する。

そんな不なやり取りを得て、奏良は『キャスケット』の代表として一人、梨の護衛に當たっていた。

「何故、こういう嫌な予だけは當たるんだ……」

今朝、じた言い知れない予はもはや確信に近い。

帰宅途中の奏良は梨達と一定の距離を保ちつつも、不安を形にするように空を仰ぎ見た。

雲に占拠された空に雨の帳が降りる。

辺りはただ、重い沈黙だけが橫たわっていた。

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