メルローズ様よりレビューをいただきました！　ありがとうございます！

「お、お前はっ！？」

盜賊の男は突然目の前に現れた〝白い〟に混する。

このが配下である山賊たちを殺したのか。この行為に何の意味があるのか？

は真っ白な髪をしていたが、まだ若く人したばかりのようにしか見えない。著ているも上質なもので、一見しただけならどこか良いところのお嬢様にしか見えなかっただろう。

こんな細い小娘に人など殺せるはずがない。

だが、その白い髪や白いを穢すように飛び散った赤いと、その白魚のような繊手が塗れであることが、男の思いを裏切る。

それ以上に……。

塗れで、それが日常であるかのように笑うが、自分たちとは本的に違う存在だと知らしめた。

ヒュッ――

「ひっ」

脅えていたせいか、男が微かな気配にを竦めた瞬間、その顔すれすれを何かが通り過ぎ、何か濡れたものを頬にじた。

「……外れたわ」

男はの言葉と、れてもいないはずなのにべっとりと頬についたが、それをの攻撃だったのだと気づいて、転がるように距離を取る。

「お、お前ら！　敵だっ！　こいつを殺せ！！」

ここまで來てようやく〝敵〟だと認識した盜賊の男が騒ぎ立てると、唐突に仲間が死んで狀況さえも理解できなかった山賊たちは、ようやく仲間を殺したのがこの白いだと分かり、怒りの形相でき始めた。

そのが〝何者〟かも知らず。

その行為がどのような結果をもたらすとも知らずに……。

「では始めましょうか」

その中で白いだけがまるで花をでるように笑っていた

＊＊＊

まだ慣れていないせいか手刀を外してしまったわ。

せっかく私の都合に付きあってもらうのだから、せめて一撃で死なせてあげようと思っていたのに……希に親切にしようとしても、上手くいかないものね。

まあ、いいわ……。

簡単に死なせたせいで仲間がどうやって死んだのかも理解できず、せっかくやる気になってくれたのだから、ありがたく使わせてもらいましょう。

「ぁあああ！」

一人の男が武も構えず飛びかかってくる。まあ、下品な顔……。

本當に理解できていないのね。

「――かひゅ」

わずかに下がりながらでるように手刀でを掻き切ると、その男は私の橫をすり抜けるように進んで頭から森の大地に倒れ込む。

「おい、なにやってんだ！」

「俺がやってやらぁ！」

まだ理解もできずに倒れた仲間に文句を言う男たち。私は次々と襲いかかってくる男たちを、強化の思考加速で緩やかに躱しながら、彼らの目に見えない速さでを裂き、首を折り、その命を刈り取っていく。

「な、なんだぁああああ！？」

そこでようやく自分たちが狩られる側だと理解できた男たちに、私はニコリと微笑んだ。

「大丈夫よ(・・・・)」

サマンサが私へ教えた延命手段。簡単に言うと彼が今も実踐している長生きの訣は、ある意味単純なものだった。

それは普通の魔師が行わない強化を鍛えること。

思考加速に必要だから私も強化は使えるわ。そのために得意ではないも魔相手に練習したから。

でも私の《スキル》はレベル３が一杯。それでも三割は思考を速くできるし、魔の補助とするにはそれで充分だった。

でもお婆ちゃんは違ったわ。彼はレベル４のを使いながら、それより１レベル上の思考加速ができていた。

それを可能にしたのが魔力制だった。

魔を効率よく使い、消費を抑え、効果を高めるには必須の技だけど、それで強化を制して、手足の筋だけでなく臓まで強化するみたい。

「な、なんだ、この！？」

「く、來るなぁ！」

私は逃げう山賊たちの倍の速さで追いかけ、追い越し、回り込み、すれ違うように殺していく。

別に強化だけで殺してあげているわけじゃない。今の私ではどれだけ魔力制で強化しても限度がある。

でもお婆ちゃんはそれを効率よく鍛えるを知っていた。

それは、生活魔法を使うこと。

心臓に魔石が生されない微弱な魔力を使う生活魔法。それをに扱うことで強化の制鍛錬となり、それ自が立派な〝武〟となる。

「ぎゃぁああああああ！？」

「た、助け……」

手袋のように風を纏わせて防力を増し、大気の塵から鋭い土の爪を作り、微細な水がと闇の霧で私の姿を霞ませる。

でも、〝火〟は使わないの。

アリアとの約束だから……。

最後に私の一撃を躱した、脅える運の良い男に、この世の最期に優しい言葉をかけてあげる。大丈夫よ……安心して。

「死ぬのって、そんなに怖くないわ」

＊＊＊

山賊を退治して、私たちは冒険者ギルドから幾ばくかの報酬を得た。

いくらランク５が全滅させたと言っても、ギルドか兵士が確認しないとすぐに報酬が出ることはないのだけど、アリアの名前を聞いた領主がすぐに了承したらしいわ。

街の広場では、その領主様と奧方の若夫婦が、山賊騒ぎは収束したと大々的に宣言して、住民は歓喜の聲をあげていた。

ふぅ～ん……。

やっぱりあなたたちは、その位の地位のほうが幸せそうね……。

「それじゃ、儂は帰るぞ！！」

「……は？」

事が済んでたらふく蜂酒を呑んだサマンサの唐突な発言に、私も思わず聞き返してしまったわ……。

「修行は？　授業はしないの？」

思わずお人好し闇エルフのセレジュラを思い出して問い返すと、逆に不思議そうな顔をされた。

「白い小娘！！　お主は実踐で學べ！　儂が使っておるのはあくまで自己流じゃ！　これから研鑽して自分の技とするが良い！！　では、さらばじゃ！！　儂は早く玄孫と遊ぶんじゃ！！」

まるで通りの向こう側にいるような大聲でそう言うと、お婆ちゃんは私が止める間もなく、砂煙を上げてあっと言う間に見えなくなった。

思わず眉間に皺を寄せてアリアを見ると、彼は気にしたふうもなく自分の荷を纏め始める。

「蜂酒も呑めて満足したのでしょ？」

「好き放題ね……私たちが言えたことではないけど」

思わず溜息を吐く私に、アリアの肩のネコちゃんが呆れたように欠をしていた。

いつも通りですね……。

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