《【コミカライズ配信中】アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~》第301話 我がまま上司とお節介部下
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コミック6巻、いよいよ明日発売です。
すでに店頭に並んでいるという報もけております。
書店にお立ち寄りの際、是非よろしくお願いします。
「レミ……ニア…………」
レミニアのの中で、ハシリーが冷たくなっていく。
傷は深く、レミニアの服にはべったりとの痕がはり付いていた。
そのレミニアが見ていたのは、4つの愚者の石(アンチ・エクサリー)。
し離れたところには、なりそこないが立っている。
レミニアに與えられた選択肢は2つに1つ。
1つは4つ愚者の石(アンチ・エクサリー)を、賢者の石(エクサリー)に変換し、リヴァラスと一化して、ストラバールを延命させるか。
2つめは1つの愚者の石(アンチ・エクサリー)を使い、自分の魔力を回復させて、ハシリーの傷を癒やすか。しかし、1つ愚者の石(アンチ・エクサリー)が使用されれば、リヴァラスを救うことはできない。
1人の命か……。世界の命運か……。
【大勇者(レジェンド)】と呼ばれる彼の前に、大きな岐路が示された。
レミニアは知らないが、ヴォルフもまた似たような選択肢を迫られたことがある。レイルから出された愚者の石(アンチ・エクサリー)を、瀕死の人工天上族エラルダに與えた時だ。
ヴォルフは純粋にエラルダを救うために選んだが、彼は暴走してしまった。
結果、ストラバールに深い爪痕を殘すことになる。
レミニアは迷わなかった。
あの時のヴォルフのように。
落ちた愚者の石(アンチ・エクサリー)を拾い上げると、その1つ口の中に飲み込む。
膨大な魔力が一気にレミニアのに流れ込む。まるで管を無理やり広げられたような痛みが走り、レミニアは一瞬意識を失いそうになった。
だが、効果は絶大だ。ついにレミニアのに魔力が戻ると、すかさず魔法を唱えた。
「運命の神シノルよ。その撚り糸の歯車を回せ。不滅の絆、永遠の縁。斷ち切られし刻の糸を繋ぎ直せ」
【運命回帰《デスティニア・リヴェルテ》】!
レミニアだけが使える第10階梯の回復魔法。致命傷の者ですら完全回復させてしまう高位の回復魔法は、一瞬にしてハシリーの傷を治した。
苦悶の表を浮かべていたハシリーの表が安らぐ。やがて瞼が持ち上がると、その瞳は自信ありげに微笑む元上司の姿を捉えた。
「レミニア……。あなたという人は……」
「言ったでしょ。わたしはこの世界が嫌いだって。ハシリーもどうしようもないくらい、いじわるで嫌いだけど、世界を救うよりはずっといいわ」
「ふふ……。【大勇者(レジェンド)】の稱號を與えたレクセニル王國のムラド陛下、その他の貴族たちが聞いたら、きっと呆れるでしょうね」
「もういない人のことはどうでもいいわ。わたしが気にするのは、さっきから余裕の笑みをかましてる、そこのなりそこないよ」
レミニアは振り返り、なりそこないを睨む。ハシリーもまた、不意に現れた異形の方を向いた。
そのなりそこないもまた愚者の石(アンチ・エクサリー)を摑んでいた。石は真っ黒なの中に沈んで行く。すると、赤黒くを帯び始めた。
それまで不定形だったなり損ないのが徐々に人間らしい姿になり、固まる。
「一何が始まるんですか、レミニア」
「あれはさなぎよ」
「さなぎ?」
「多分、愚者の石(アンチ・エクサリー)を使って、何者かが復活しようとしている」
「そんなことができるんですか?」
「わたしができたんだから、できるんじゃない?」
以前、レミニアはルネットを生き返らせたことがある。あの時は魂魄石という石にルネット自が自分の記憶と意志を閉じ込めたおかげで、復活を果たすことができた。
それと同じことが愚者の石(アンチ・エクサリー)を使って行われようとしていると、レミニアは推測する。
なりそこないは人間の姿をとってから、かなくなる。すると、卵のように外殻が剝がれ、魔力が溢れ出す。ともに見えたのは、人の姿だった。
男だ。
短い銀髪に、褐の。
黃金の瞳は鋭く、細く見えるはたくましい筋の鎧に覆われていた。
2人のの前でを曬した男は、手に魔力を込めると、濃い緑と白のローブにを包む。
男の顔には見覚えがなかったが、裝備にはレミニアにもハシリーにも覚えがあった。
「まさか……、ガダルフ……」
ラーム、ハッサルに継ぐ三大賢者の1人。
そして愚者の石(アンチ・エクサリー)の研究者にして、作製者。
この世の衰退をみ、唯一無二の神を目指す元天上族。
元兇ガダルフがそこに立っていた。
「久しいというわけではないか、ハシリー・ウォート。裏切り者め」
「ぼくは最初からあなたの仲間になったつもりはないんですけどね。話を合わせていただけです」
「お前は何もわかっていない」
「なんですか? 會って早々に説教ですか、賢者様(ヽヽヽ)」
「お前のせいで世界を救う選択肢はなくなった。それがわかっていないのか?」
「ハシリーのせいじゃない!」
一瞬、聲につまったハシリーを、レミニアが救う。
「選んだのはわたしよ」
「まあいい。々計畫は狂ったが、概ね予定通りになった。……これでこのリヴァラスが朽ちれば、お前たちは終わりだ」
4つあった愚者の石(アンチ・エクサリー)は、レミニアとガダルフが1個ずつ使い、殘り2つしかない。
「2つでは弱ったリヴァラスを救うことは不可能だ」
「それはどうかしら。世界は広いわ。まだ賢者の石(エクサリー)に耐えうる素はいるかもしれない。たとえば、ハッサルとかね」
「あいつは死んだぞ」
「どうかしら? 生きているかもしれない。そして、當然今目の前にいるあなたも候補よ、ガダルフ。あなたを素として賢者の石(エクサリー)に再変換すれば可能なはず。ほら、あっさり2個戻ったでしょ?」
「世迷い言を……。お前が人間を素にして、賢者の石(エクサリー)を作るとは思えない」
「ガダルフの言う通りですね。……レミニア、見かされてますよ」
ハシリーが肩を竦めると、レミニアは口を尖らせた。
「言ってみただけよ。でも、世界を救う方法なんていくらでもある。たった1つなんてあり得ない。そうでしょ、ハシリー」
「そうですね、とは言い難いですが、あなたが言うならそうなのでしょうね」
「目下のところ、わたしたちにとって最大の障害はあなたよ、ガダルフ」
レミニアは手をかざした
虛空に現れたのは、聖剣だ。以前、ヴォルフに送ったものである。
「覚悟なさい、ガダルフ。完全回復した【大勇者(レジェンド)】の力を見せてあげるわ」
「どうしますか、ガダルフ。今回ばかりは相手が悪そうですよ。同はしますが、ぼくはこっちに付かせてもらいます」
レミニアに寄り添い、ハシリーもまた構えをとる。
レクセニル王國の研究所で、切磋琢磨した小さな上司とお節介部下のコンビは、ここに完全復活したのだった。
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