《【10萬PV!】磁界の王はキョンシーへ撲滅を告げる》② 主任會議

最上階の會議室にり、京香と恭介が席に座ってしして水瀬が會議室にってきた。

「すまん。し遅くなった」

「いえ時間ピッタリです。気にせんでええですよ」

第一課主任、桑原の言う通り、水瀬が現れたのは當初予定していた會議の開始時刻ピッタリだった。ここ最近水瀬は多忙を極めている。朝一のこの會議の前にも別件の打ち合わせがあった様だ。

「良し。では始めよう。黒木、資料を出してくれ」

「はい」

水瀬が席に座り、本日の司會進行役の第三課主任の黒木へとバトンを渡す。

既に黒木のパソコンは會議室のプロジェクターと繋がっていて會議室の壁に資料が投影される。

・ココミのテレパシーの解析結果について

・モーバ対策會議の対応について

そこには本日の會議の議題が書かれていた。

前者の議題は京香も知っていたが、後者の方は初耳だった

――モーバ対策會議?

疑問符は頭に殘るが、元々予定していた前者についてである。

「早速ですが、アリシアさん、ココミのテレパシーの解析結果について進捗はどうですか」

「申し訳ないですけど、完了はまだまだ先にりそうです。タルタロスの正確な居場所も分かっていないというのが現狀ですね。ただ、一つてがかりが分かりましたよ」

そう言ってアリシアはパソコンを作し、黒木のから彼が用意した資料へと投影畫面を切り替えた。

そこにあったのは數枚の畫像データである。

何処かの町だろうか、やや薄暗く、通りには多くのキョンシーが歩いていて、人間の姿は數える程しかない。

「これは何だアリシア?」

「今から説明するよミナト。……こほん、こちらはココミがテレパスしたクロガネの記録データを復元したです。まだ確証はありませんが、おそらくここがモーバの本拠地タルタロスの中だと第二課は考えています」

「タルタロスは巨大な潛水艦だったと言ってましたね。そんな作れるんですか?」

長谷川が眉を顰めた問いにアリシアが技者として見解を出した。

「普通なら無理です。深さにもよりますが、この畫像で見られる範囲だけでも相當な大きさです。こんな巨大な構造が深海の水圧に耐えられるはずがありません」

一拍置いて、「ただ」とアリシアは続けた。

「キョンシーを使えば可能です。し醜いですが、この畫像を見てください」

アリシアがポインターで指したのは右下の畫像、どうやら十數のキョンシーが等間隔で壁際に並び、何かをしているようだ。

「ココミに、いえ、正確にはキョウスケですね。キョウスケに聞かせたところ、このキョンシー達はテレキネシスト、代でタルタロスの外壁をテレキネシスで補強しているらしいですよ」

「スケールが大きすぎる話やね」

桑原がはー、っと呆れた様に聲を出した。

通常ならば圧壊してしかるべき大きさの巨大な潛水艦。その構造を保つのにキョンシーのPSIを使っているというのだ。

聞いたことが無い話で、だが、モーバという狂った組織ならばやりかねないとも思えた。

「見てもらいたいのはこちらの隣の畫像です」

そうしてアリシアが指したのは、タルタロスのキョンシー達が集まって何かをしている畫像だ。中央部にはケーキだろうか、何かの菓子が置いてあり、それを囲む様に立ったキョンシー達が笑いながら手を繋いでいる。

「パーティーっぽいわね」

「ええ、キョンシーにはこんな催し不要なんでけどね。まあ、良いです。この機にスイーツやら包み紙が々と置かれていますね」

アリシアが拡大した畫像には確かにとりどりで大きさも形も様々な包み紙があった。

包裝紙に書かれている文字は幾らか判別できたが、京香には意味が分からなかった。

「英語だけじゃないわね。これ何語?」

「スペイン語、ポルトガル語、後、よくよく見るとカンガルーやコアラのマークがある包みも見えませんか?」

拡大された畫像。飴玉の包みだろうか、確かにカンガルーやコアラ等が印刷されたがいくつかあった。

「調べたところ、この畫像にある菓子類は基本的にはオーストラリア、ポルトガル、チリ、エクアドルなどの南半球諸國のです」

「それじゃあモーバは南半球の何処かに居るってこと?」

単純な帰結を呟いた後、京香は水瀬と黒木が顔を顰めていることに気付いた。

「確証があるわけではありません。ただ、第二課で調べたところ、モーバはかなりの消耗品を南半球連合から購している様です」

そこで黒木が手を挙げた。

「アリシアさん、つまり第二課の見解として、モーバのバックに南半球連合が居ると?」

「そこまでの確証はありません。ですが、もしも、南半球の海にタルタロスがあるのなら、その可能は否定できなくりますね。半徑五百キロメートルの効果範囲のハイドロキネシスを持つというニコラオスが気付かないはずが無いですから」

アリシアの発言は聞き逃せないだった。

もしも仮にモーバが本當に南半球連合と手を組んでいたのなら、それこそハカモリでは対処できない程の一大事だ。

ヨーロッパ連合、アメリカ合衆國、それぞれが既にモーバによってA級キョンシーの負傷と破壊という被害をけている。下手をすれば本格的な國同士の衝突にさえ発展し得る程である。

故にアリシアも慎重なのだろう。

一拍の間を置いて、アリシアがココミを見た。

「第二課として正式に要求します。カツノリ局長、キョウカ、ココミの脳の詳細な調査をさせてください。開頭し、モーバの更なる報を得ます」

バキィ! 瞬間、ホムラの足が會議室の床を踏み割った。

「絶対に許さないわ。燃やしてやる」

ココミを守る様にホムラが前に立つ。隻眼はアリシアを貫かんばかりに睨んでいて、もしも首をしていなかったのならこの部屋は火の海と化していたかもしれない。

「アタシの大事な後輩のキョンシー達に手を出す気?」

京香もまたアリシアを睨む。彼の言い分は分かる。確かに第二課の技ならばココミの脳の詳細な検査は出來るだろうし、それによってモーバの更なる詳細な報は得られるだろう。

「狀況は迫しています。ココミを渡してください」

會議室に張が走り、僅かに部屋の外で音がした。

――キョンシー、囲まれてる。

壁の外にキョンシーが居ると京香は理解する。が僅かに出る磁場はセンサーとして働いていたからだ。

ココミも、そして、ホムラも外のキョンシーのことを知っているだろう。

京香は手足に意識を向け、いつでもける様に準備した。

「アリシア主任、僕から聞きたいことが有ります」

恭介が立ち上がって聲を上げる。意識的か無意識的か、そのはホムラとココミを隠す様にしていた。

「仮にココミの頭を開けて、電極を刺したとしてモーバの本拠地が分かる確証はありますか?」

この場にはココミが居る。彼が居る場では真実しか言葉は意味を持たない。

アリシアは必要とあらば噓を付くだ。その噓が通じない。

一秒か二秒閉口した後、アリシアが回答する。

「モーバの本拠地の報を得られる確証はありません。タルタロスは海遊都市です。今この時でも居場所を変えているでしょう」

「なら、開頭した後、ココミを元の狀態に戻せますか?」

「いいえ、それは難しいです。今回、私達第二課がしたいのは海馬の採取です。必ず記録と記憶領域にダメージは殘るでしょう。最小限には押さえますが」

素直な言葉だ。誠実さという訳では無いだろう。

部屋の主任達全員の視線が恭介へと集中し、彼は冷や汗を流しながらもはっきりと口を開いた。

「なら、僕は所有者として許可できません。ココミはまだ僕達ハカモリに必要です。代わりにココミのより詳細なテレパシーでの協力を約束します」

ダァン! ホムラの拳が恭介を叩く。恭介は顔を顰めているが、発言を撤回する様子は無かった。

「……なら、しょうがないです。それで一先ず我慢しましょう」

殘念な様にアリシアがため息を吐き、それと同時に部屋の外に居たキョンシー達の気配が去っていく。どうやら、恭介のこの言葉を引き出すことが目的でもあった様だ。

水瀬がアリシアに続いて京香達へ要求をした

「ゴルデッドシティでのココミの全力のPSI発についてだが、あれについての調査はどうなっている?」

これについて第六課は再三ハカモリからの説明要求をけていた。

だが、京香達にも分からないことである。あの時現れたテレパシーの量はあまりにも膨大だった。一本一本の出力は確かに最低クラスなのだろう。だが、仮にあれを束ねてしまえば、どれ程のことができるのか。

「すいません。これについてはまだ調査中です。マイケルが必死に論文やらを當たってくれてますが、もうしばらく説明は待ってください」

「……良いだろう。詳細が分かり次第、早急に連絡しろ」

京香の脳裏にマイケルの姿が過る。第六課の頭脳である彼が分からなければ分かるはずがない。

それこそ、ココミに無理矢理でも説明させるのが一つであるが、最終手段としておきたかった。

――ココミには何があるか分からない。

ゴルデッドシティで見せた今まで最大級のテレパシー。あれを使えるキョンシーが果たして反撃をしてこないのか、してきたとして防ぎ切れるのかの確信が無いからだ。

やっと一つの議題が終わり、京香達は黒木へと視線を戻した。

「それでは続けての議題です。二週間後、モーバ対策會議がこのシカバネ町で行われます。參加國は日本、中國、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ連合、南半球連合の各國です」

「ほう。とうとう重い腰を上げて世界みんなで考えることにったんですな」

「第百回キョンシーサミットを潰されたのが余程答えたのだろうな」

桑原へ水瀬が苦笑しながら同意する。

これは朗報だった。やっとハカモリが言い続けてきたモーバの危険を世界が認識したのだ。

そのための急の対策會議なのだろう。確かに護衛や警備としてハカモリの力が必要である。

そう京香は納得していたが、続く黒木の言葉にギョッと眼を開いた。

「清金京香二級捜査と木下恭介五級捜査にはこの會議で重要參考人として出席してもらいます」

「……えぇ?」

まさかの言葉に京香は聞き返し、恭介は絶句したまま口を開いていた。

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