《スキルイータ》第三百十九話
久しぶりに忙しい日々を過ごしていた。
シロは、相変わらず調の調整が出來ないようで、邸で休んでいる。エントやドリュアスたちが看病をしている。フラビアとリカルダは、シロの代わりに湖の集落を見てもらっている。二人同時に行く必要が無くなった為に、代で湖の集落に行ってもらっている。
シロが邸に籠っている関係で、クリスティーネには負擔を掛けてしまっている。
俺やルートガーでは、無難に進められない場所には、クリスティーネやヴィマやヴィミやラッヘルやヨナタンが出向いている。特に、が主になっている行商は、からのお願いのほうが、素直に従ってくれる。
俺が行くと、いろいろ問題が発生する。ルートガーが出向くと、クリスティーネが居るのに、目を使ってくる代表が存在するようだ。俺とルートガーで出向くと、雑談を引き延ばそうとする。前は、シロやフラビアやリカルダが出向くか、俺の代理として、シロが名代になって、補佐としてカトリナが著いて行った。
カトリナは、カトリナで忙しそうにいている。
アトフィア教の報も集まってきた。
「それで?」
まとまった報は、ルートガーとクリスティーネがまとめている。
最初は、長老衆に擔當を命じたのだが、長老衆からルートガーとクリスティーネに任せたいと伝えられた。最終的には、俺が許可する形で、アトフィア教に関する報は、ルートガーとクリスティーネが取りまとめることに決まった。
「ツクモ様。まとめた資料は?」
「読んだ。クリス。俺は、お前たちの見解を聞きたい。アトフィア教の奴らが、行った客観的な証拠は、積み重ねた証拠を數字として現せば、誰でもできる。ルートとクリスには、その先を聞いている」
「憶測が混じるぞ?」
ルートガーが苦々しい表で答える。
「むしろ、憶測を聞いている。まとめた數字は、報告書を読めばいい。話を聞いているのは、資料に書かれた報を踏まえて、お前たちが何を考えて、じたのか・・・。説明を聞きたい」
「はぁ・・・」
「ルート。私が、説明していい?」
「わかった」
クリスティーネの宣言で、ルートガーがソファーに背中を預ける。ルートガーが持っていた資料を、クリスティーネがけ取る。
「ツクモ様」
クリスティーネがルートガーを見てから、二人の見解を話し始めた。
「アトフィア大陸の報が、以前よりも集まりやすくなっている狀況を合わせて考えれば・・・」
ルートガーが、クリスティーネの言葉が足りない所を補足しながら、クリスティーネの説明が続いた。
二人の考えの説明なので、資料が作られていない。
資料は、考えを補填する意味しか持たない。資料を探し出して、補填に利用する。証拠と言ってもいい。考えの基盤が資料に則っている。
絶対に必要なことだ。自分たちがまとめた資料にない數字や狀況を語っても、それは憶測ではなく、妄想になってしまう。
時折、ルートガーが表を歪めて俺を見て來る。
早く終わらせたいのだろうけど、クリスティーネが説明を止めない限り、俺が止めることはない。解っているのに、俺に止めさせようとするのはルートガーの悪い所だな。心配なら、正直に言えばいい。
20分近く、クリスティーネが説明を行っている。
「・・・。ツクモ様。アトフィア大陸は、荒廃が始まっていると思います」
最後の言葉なのか、クリスティーネは、冷めた紅茶でを潤してから、座りなおして、ルートガーを見つめた。
「ルート?」
「俺とクリスの考えでは、アトフィア教が何かの実験を行って、偶然なのか、必然なのか、新種が産まれた」
「なんの、実験だと思う?」
「わからない。解らないが、アトフィア教の考える事だ、ろくでもないことなのだろう。そうだな。”神”でも作ろうとしたのではないか?」
ルートガーの言葉に、クリスティーネが同意するように頷いている。
そうか、「人工の神」か・・・。人が傲慢になった時に、作り出すのは、”悪魔”ではなく、”神”だ。
「”神”か・・・。功したと思うか?」
「功していたら、奴らのことだ・・・。もっとアトフィア教の権勢を強めるために使っているだろう?」
「違いない」
それに、功していたら、魔の輸が終わっていても不思議ではない。
資料を捲れば、最近まで魔の素材を輸している。
チアル大陸からアトフィア大陸へは、輸出を止している。食料だけは許可している。
「ルート。クリス。魔由來の食料は?」
「前から変わっていない。クリス」
クリスティーネが資料を探し出して、提示してくれた。
確かに、微減というじだが、変わっていないと捕えられる。
食料も同じように、減っているよな?
食料は、基本が地産地消だ。
アトフィア大陸も同じだが、量だけど輸を行っている。主に、食だけだが、その中には魔由來の食料が含まれている。
「ルート。奴らは、輸した魔由來の素材を、実験に使っていると思うか?」
「増え方を見れば、使っていないと・・・。考えるのは、難しい」
「だよな。止するか?」
「止したら、やつらは、また魔を捕縛しようとする。魔の素材への稅を増やしてみるのはどうだ?」
「あまり、好きなやり方ではないが・・・。しょうがない」
「一度、長老衆に判斷を投げておく」
「頼む」
クリスティーネとルートガーが頷いてから、書類をまとめている。
「そうだ。ルート。お前の所を聞かせてくれ、アトフィア教は、シロかクロか?」
「そうだな。アトフィア教の全がクロだとは思えない」
「なぜだ?」
「そうだな。全で行っているのなら、アトフィア大陸に魔を移させる必要はない。それこそ、中央大陸で、アトフィア教に協力的な都市や街で行えばいい。裡に進めるために、いているように思える」
「ふむ。そうだな。敵の敵が、味方になると思うか?」
「それは無理だ。お前が、チアル大陸が仮想敵國なのだろう」
「クリスも、チアル大陸が、仮想敵國だと思うか?」
「はい。間違いなく、アトフィア教は、チアル大陸を、ツクモ様を妥當したいと考えていると思います。それこそ、”魔”を束ねる”王”として宣言してでも、人類の敵にしたいと思っていると考えています」
「そうおもう理由は?」
「はい。アトフィア教が、魔素材を仕れようと考えれば、チアル大陸から買い付けるのが簡単です。チアル大陸は、アトフィア大陸の商人を完全には締め出してはいません」
「そうだな。制限はしている。教會関係者の大陸への侵は制限しているだけだ」
「はい。しかし、表立って、アトフィア教に関係する商人が出りしないのは不自然です」
「そうか?」
「はい。中央大陸を経由して、他の大陸の商人の資格を持つ者だけがチアル大陸に來ています」
「それは、慎重に取引を行う為なのでは?」
「慎重になっているとは考えられますが、それでも全ての商人に偽裝を命令する必要は皆無です」
そうだよな。
偽裝するには中途半端だけど、チアル大陸を狙っていると考えるには弱すぎる。
「ルート。クリス。整理ができた。しだけ考えてみる。長老衆への説明と稅の話は、任せる」
「わかった。他に、無ければ、下がるけどいいか?」
「あぁ。そうだ。クリス。後で、シロに會いに行ってしい。時間があるときでいい」
「え?わかりました?」
「シロが、クリスに會いたいと言っていただけだ。子會?だけで話がしたいらしい。フリーゼやカトリナや・・・。と言えるか解らないけど、メリエーラもってしいようだ」
「わかりました。シロ様に會って、話を詰めてみます」
「頼む」
ルートガーが、俺を睨んでいた視線を緩めた。
どうやら、本當に、だけの集まりを企畫したいようだと解ってくれたようだ。
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