《【10萬PV!】磁界の王はキョンシーへ撲滅を告げる》① 期の記憶 2

土屋をホテルに屆け、あおいはシカバネ町北區に居た。シカバネ町の歓楽街たるここには考えられる限りの娯楽が軒を連ねている。

日はま夕焼けにすらなっていない。ホテルで休んだ土屋が回復するのに數時間としてもまだまだ時間はあった。

「懐かし」

つい呟く。前回シカバネ町に來た時は京香との再會に心を奪われ、まともにかつて暮らしたこの町の風景を見れないでいた。

かつての自分と同じように制服を著て友と歩く學生達、外回り帰りの會社員、恐いもの見たさで來たであろう観客。

知っている景で、郷愁の念が湧き上がる。

「あー、でも知ってる店は無いか」

けれど、あおいが知っている店は見る限りでは一つも殘っていなかった。

シカバネ町は素神との健康を何よりも優先する。故に歓楽街の店並びは激戦區だった。今流行りの、住民達が楽しめる様な娯楽へと日々店は更新されていく。

あおいが京香と良く言っていたカラオケも験型VR施設にっていたし、クレープ屋は百味のソフトクリーム屋にっていた。

し殘念である。懐かしの店というのに多のあこがれがあったのだが、どうやら葉わないらしい。

あおいは眉を上げて笑った。思い出と同じ景は無いが、思い出通りの空気がここにはある。

それで満足することにした。

「とりあえず、有楽天にでも行こうかな」

あおいが見たのは北區のランドマークたる統合型娯楽施設、有楽天。これだけは昔と変わらなかった。

八階建ての有楽天をあおいはゆっくりと歩いて行く。

本屋やスイーツ點を軽く回り、エレベーターを昇って行く。館を見ると五階には雑貨屋があるそうだ。

――暇つぶしには丁度良いか。

ウィンドウショッピングは昔から好きだった。雑貨屋やならば尚のことだ。

「「ようこそ! 虹村兄弟の極彩ファニチャーへ!」」

「え、あ、はい、どうも」

雑貨屋、極彩ファニチャーにてあおいは虹のアフロヘアをした大男二人に出迎えられ、面を喰らっていた。

「兄貴、レディのご來店だ! さあ! 可い小を持って來るんだ!」

「任せろ弟よ! 綺麗な小をありったけ持って來てやる!」

あおいの來店が余程嬉しいのか、虹村兄弟はモッサモッサとアフロを揺らし、ピョコピョコという靴音を立てながら狹い店き回っている。

極彩ファニチャーに置かれている商品はどれもこれも奇抜でヘンテコなデザインをしたものばかりだった。初め、あおいは現代アート館なのかと間違えてしまった程である。

「あのご構いなく。適當に見て回るので」

「おっとすまない! この店にが來るのは珍しくてな!」

「こんなでかいアフロ二人が居るときがやかましいな! 前に來たメイドさんにも言われてしまったよ!」

ハハハハハ! やたら元気な笑い聲を出し、に『店長!』と書かれたバッチをしたアフロ二人があおいの前の機に小とやらを並べていった。

櫛らしき、手鏡らしき、チェス盤らしき、などなど。どれもこれもが形がおかしく、あおいには何が何だか確信を持てなかった。

――何だか懐かしいね。

しあおいは笑った。京香と過ごした青春の日々、京香は何故かこの様な変な店を引き當てるセンスがあった。

値段を見てもそう高くない。あおいはこのヘンテコな小を一つくらい思い出に買ってみることにした。

「面白いじにくものはありますか? サイズは小さめで」

「「!」」

あおいが興味を持ったことに虹村はアフロを膨らませ、次々と商品の説明をする。

あおいは昔を思い出して笑いながらそれらを聞いた。

「「ありがとうございましたー!」」

カランコロン! 店主達の言葉を背にあおいは店を出る。その手の紙袋には千変オルゴールなる商品がっていた。店主達が言うには聞かせた音楽やメロディーを記録し、好きな様に音らせるらしい。

「帰ったら試してみようかな」

京香への土産話にもる。

そう、久しぶりの再會を心待ちにしているとあおいの背後から聲が掛かった。

「あおいちゃん?」

とても聞き慣れた聲で、あおいの脳裏に期の記憶が鮮やかに蘇った。

「……珠華(ジュカ)先生」

振り返るとそこに居たのは記憶よりも皺が増え、髪が白くなった

その顔をあおいは覚えている。

かつて、あおいがあかねと幸太郎と共に居たシカバネ町の孤児施設『ヒガンバナ』の院長が幾人の子供を連れてそこに立っていた。

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