《じゃあ俺、死霊《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。》32-4
32-4
ソウルレゾナンスが解け、俺は元のに戻った。だが、いつもの激痛は襲ってこない。それに、疲れもほとんどない。だぶん……エラゼムの土産のおかげ、だな。メアリーの魔力が、俺を守ってくれたんだ。
「助かったぜ、メアリー。あんたの騎士を遣わせてくれて」
俺は小聲でつぶやく。きっと、空の向こうには聞こえているだろう。この戦いが終わったら改めて、彼の墓參りに行かせてもらおう……でもその前に、まだ仕事が殘っている。
「くっ……そがぁ……この……オレが……」
発によってめちゃめちゃに砕かれた地面にうずくまっているのは、セカンドだった。最大火力の黒炎弾が暴発した影響は、者本人に最も多く跳ね返ったわけだ。だがそれでも、奴はまだ倒れちゃいない。さすがに、相當のダメージを負ってはいるようだが。
「殺す……テメェら一人殘らず、全員殺してやる……!」
セカンドは地面をかきむしりながら、憎悪の目で俺を睨む。フランが駆け寄ってくると、俺を守るように前に立った。だがその肩をそっと押さえる。
「フラン。ちょっとだけ、いいか」
フランは顔を半分だけこちらに向けた。骸骨となってしまった彼からは、表を伺うことはできない。前ならきっと、「正気なの?」とでも言われていたんだろうが。
「しだけ、あいつと話がしたいんだ。大丈夫、油斷はしないよ」
フランは顔を戻すと、半歩橫にずれた。了解ってことで、いいんだよな。
「さて……セカンドさんよ」
俺はその場からかないまま、セカンドに聲を掛ける。近づいたら、何されるか分かんないからな。結果的に俺は、奴を見下ろす形になる。
「クソが……カスごときが、オレを見くだすんじゃねえ……!」
ほら、これだ。俺は首の後ろをポリポリ掻いた。
「別に、見くだしてるわけじゃないって。それに、あんた自のこともな」
「なんだと……?」
意外か?まあ、そうだよな。
「確かに、あんたとは仲良くなれそうにねーよ。でもま、多は共できるんだ」
フランがバッとこちらに振り向く。おわ、びっくりした。
「なんだよ、前に言わなかったか?俺とあいつは、似てるって。本質的な部分では、理解できるところも多いんだ。だからだよ」
そう。リーダーシップをいかんなく発揮し、誰からも英雄と湛えられたファーストや、靜かで、徹底的に黒子に徹することができたサードとも違う。俺が一番似ているのは、セカンドだろう。
「セカンド。こういうのは、まあなんというか、月並みだけど。あんたが言いたかったこと、何となく分かる気がするんだ」
「なん……だと?」
「あんたが今までやって來たこと。善い事も悪いことも、全部みんなさ。突き詰めれば、このためだろ?」
ファーストやサードのようになれなかったセカンド。奴はきっと、
「寂しかったんだろ?」
「……」
セカンドは茫然と、俺を見ている。ひょっとしたら、呆れているのかもしれない。
「あんたは、寂しかったんだ。違うか?」
「……なんなんだ、テメェは。さっきから、知った風なことばかり言いやがる。何のつもりだ?」
「おっと、他意があるわけじゃねーよ。単純さ。俺もそうだから、そうじゃないかと思ったんだ」
「テメェも……?」
「ああ。初めてクラークと戦った時、俺はあいつが怖かった。勇者の力は凄まじかったよ。あんなのと正面切って戦うなんて、俺ならごめんだ」
「……」
「だから、あんたが勇者の力を恐れたって言うのも、なにもおかしくないと思う。もし俺がそっちの立場だったら、やっぱりあらゆる罠なりを総員しただろうと思うよ。けど、一つ分からないことがある。ならどうしてあんたは、自分から戦爭を吹っかけたんだ?」
そうまでして勇者を恐れておきながら、なぜ自ら火のを呼び込むのか。
「最初はわけ分かんなかったよ。どうして魔王が、こんなことをするんだろうってな。でもあんたが、一人の人間がやったことだって分かったら、全部繋がった」
「それが……その理由が、寂しいからだって?」
「そう思ったよ。俺だけじゃない、誰だって寂しいさ。知らない世界に突然連れてこられちゃ」
セカンドがこうなる前のことを、俺は知っている。宿屋のジルは、“彼”が普通の年に見えたと語った。きっと俺と“彼”には、大きな違いはなかったんだ。
「あんた、人しかったんだ」
魔から人間を作り出そうとした。自分のを引いた子どもたちをかき集めた。全部、人しさゆえの行だ。
圧倒的な力を手にれながら。最強の勇者を退け、魔王の座を手にれながら。それでも結局、誰かと一緒にいるっていう、ちっぽけな願い事は葉わなかったんだ。ほんとうに、どこまでも……
「……俺もな。自由が、しかったんだ。けど結局、自分一人じゃなにもできなくて……それで失敗してきた。もしかしたら、俺もあんたと同じ道をたどっていたかもしれないな」
「……で?だったとして、お前は何がしてーんだ。いまさらオレの理解者ヅラして、取りろうって魂膽か?」
俺は首を橫に振る。それこそ、いまさらだ。これだけ毆り合っておいて。
「俺がむのは、一つだ。あんた、負けを認めちゃくれねぇか」
「は……?」
セカンドはぽかんと口を開けた後、ケタケタと笑い出した。
「カカカカ!何を言い出すかと思えば。オレがいつ負けた?言っておくが、これで勝ったと……」
「分かってるよ。だから、認めてしいんだ。まだあんたは戦えるだろうが、このくらいで、もうやめにしないかって言ってんだよ」
セカンドは這いつくばってはいるが、奴の黒い鎧はまだ消えていない。エラゼムとの必殺技を喰らってなお、奴は力を殘している。つくづく恐ろしいな、まったく。
「これ以上しんどい目にあったって、お互い得もないだろ。俺個人としては、あんたを裁くだとか、討ち滅ぼすとかには興味ないし」
「ハッ!それで、大人しくこうべを垂れろってか?この偽善者が!殺し合い以外に、決著はねーんだよ!」
「だから、それじゃ困るんだってば。それだと主義に反する」
「主義だぁ?」
セカンドは今度こそ呆れたようだ。ふん、どいつもこいつも。ポリシーの重要さを分かってないな。
「俺は殺しはしたくない。だから、あんたには引っ込んでもらいたいんだ」
つづく
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