《【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~》第96話 (父上視點)遊びたくてコッソリ地上に出たら大変な相手と出くわした

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メルキス達がカストルと合流した頃。

「おのれえぇ……いつまでこの俺をこんな所に閉じ込めておく気だ……!」

ザッハークは、魔族の拠點の中でいらだっていた。

「この街に來てから、ずっとこんな地下に閉じ込めっぱなし! 魔族には苦にならんのかもしれんが、俺には我慢ならん! 時間覚が狂う! 息が詰まりそうだ!」

ザッハークがいる魔族の拠點は、暗い地下である。魔族は、街の下に地下通路を掘ってそこを拠點としていた。

細い道が曲がりくねり、絡みあいながら果てしなくびている。

明かりはロウソクの火のみ。暗闇に適応している魔族には快適だが、人間のザッハークにとってはとにかく過ごしづらい環境だった。

「フフフ。太しいですか、伯爵。しかし、しばらくのあいだどうか辛抱を。私はともかく、他の魔族はまだあまり伯爵のことを信用しておりません。地上に連れて行った途端に逃げ出して、メルキス達に我々の企みやこの拠點を伝えるのではないかと疑っているのです」

「そんな事を今更俺がするわけがないだろうが……。ぐぬぬぬぬ」

「まぁまぁ。たまには差しれを持ってきますので。しばらくの辛抱を」

ザッハークの長い地下生活は続く。

しかし。

「もう限界だ! ジメジメしているし暗いし狹いし魔族の酒はまずいし! 何としても地上に抜け出してハメを外してやる!」

ザッハークはそう決意した。

思い立ってからのザッハークの行は早かった。

王國騎士団副団長に相応しい隠能力と調査能力をフルに発揮し、見回りをしている魔族達の視線を掻い潛って、地上へ遊びに行くための準備を始めた。

「こっそりと、こっそりと……」

魔族にバレれば、最悪裏切り者と思われて処分される。それでもザッハークは地上に遊びに出たかった。

「よし、この道は10分おきに魔族が見回りにくる、と」

手元のメモに、魔族の拠點の地図と見張の位置などを細かく書き込んでいく。時間をかけてザッハークはしづつ、魔族に見つからずにける範囲を広げていった。

「ふふ、俺の勘だともうすぐ地上に繋がる道が見つかるはずだ」

その時。

「誰だ! 誰かそこにいるのか!?」

ザッハークが慌てて振り返ると、そこには牢屋があった。そしてその中には、ザッハークの知っている人間が閉じ込められていた。

ルスカン・アンドレオーニ伯爵。

この街の領主であり、ザッハークの友人でもある。

ルスカン伯爵は魔族にとらえられ幽閉され、地上では魔族がルスカン伯爵になりすまして街を実質的に支配している。

そして本のルスカン伯爵は今、ザッハークの姿を見て

「ザッハーク! なぜ貴様がここにいる! まさか貴様、魔族に寢返って――むぐっ」

牢屋の隙間に腕を差し込み、素早くザッハークがルスカン伯爵の口をふさぐ。

(ここでルスカン伯爵に大聲を出されては、俺が走を企てているのが魔族にバレてしまう! なんとしてもルスカン伯爵に靜かにしてもらわなければ……! そうだ!)

ザッハークは、頭をフル回転させてこの場を乗り切るための作戦を編み出す。

「靜かにするのだルスカン伯爵。俺は今、魔族の仲間になったフリをして潛調査をしているのだ」

「潛調査だって……?」

ルスカン伯爵が落ち著いたのを確認して、ザッハークはルスカン伯爵の口を押えていた手を放す。

「そう。潛調査だ。魔族に寢返ったフリをして拠點にもぐりこんでいる。この拠點のことを調べ上げたら地上にいる対魔族特殊部隊(大噓、そんなものはいない)に報を渡して、一瞬で魔族どもを叩き潰してやる。もちろん、おまえのことも助け出してやる」

「そうだったのか、ザッハーク。すまない、一度でも友であるお前のことを疑ってしまった俺を、どうか許してくれ」

ルスカン伯爵伯爵の頬を、涙が伝う。

「はっはっは。気にするな、俺とお前の仲ではないか。ここから無事出できたら、一杯おごってくれればそれでいいさ」

ザッハークはでおろしながらそう言った。

「ということで、もうしばらくここで待っていてくれ。必ず俺がお前を助け出してやる」

「頼んだぞ、ザッハーク」

二人は牢屋の格子をはさんで、こぶしを軽くぶつける。

そしてザッハークは、再び地上への道を探し始めるのだった。

(すまんなルスカン。俺にはお前を助け出せるだけの力はない。俺だけでも生き延びさせてもらうぞ)

そんなことを考えながら、ザッハークは地上への道を探し続ける。

そしてついに。

「見つけたぞ、地上へ繋がる道だ!」

吹き込んでくるわずかな風。間違いない、この道が地上へ繋がっている。

ザッハークはそう確信して道をひた走る。そして、突き當りの扉を喜び勇んで開ける。

「地上だ……!」

ザッハークが開けたのは、狹い路地の突き當りにある小さな扉。知らなければ、誰も地下通路につながっているとは思いもしないようボロく汚く偽裝されている。この街には魔族の拠點に繋がる出口がいくつかあるが、その中でも特に小さい出口である。

「ああ、日のありがたみをじるぞ!」

ザッハークは両腕を開いてを全で浴びる。

「余り長く地上にいると魔族どもに怪しまれるからな。さっさとうまい酒を一杯飲んで、地下に戻らねば」

そういってザッハークは近くの飲食店街へと向かう。

「むむ、どの店で一杯やるか迷うな……」

ザッハークは真剣に店を選ぶ。

「よし決めた! 前にルスカンとったこの店にしよう! あの時飲んだ酒は本當に味かった!」

舌なめずりをしながらザッハークが店にろうとしたとき。

「父上……!?」

後ろから、この世で一番聞きたくない聲を聞いた。

”ギギギ……”という音が聞こえそうなほどゆっくり振り返ると、そこにはメルキスが立っていた。

「ああああああああああああああああああああ!」

悲鳴をあげながら、反的にザッハークは走りだす。

「何故だ! 何故メルキスがこの街にいるのだ!」

パニックになりながらザッハークは走る。そしてなんとかメルキスを振り切って、出てきた魔族の拠點の扉へ素早く

る。

「助かった……殺されるかと思った……!!」

をなでおろすザッハーク。

「地上の酒を飲めなかったのは殘念だが、命があっただけありがたく思おう」

そういってザッハークは何の気なしにポケットに手をれる。しかし。

「ない、ないぞ! 俺が頑張って作った魔族の拠點の地図が無い! さっき走った時に落としたか……! ぐぬぬぬぬぬ」

ザッハークは歯を食いしばる。

「いかん、そろそろ戻らないと魔族どもに怪しまれる。酒を飲むのは今度にするか。地図のことは殘念だったが、ある程度頭にっているし、無くても問題はあるまい」

そう言ってザッハークは、元居た部屋へとぼとぼと戻っていった。

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