《兄と妹とVRMMOゲームと》第四百四十ニ話 異なる正義を盾に⑤

「母さん、行ってくる」

「行ってきます、お母さん!」

「みんな、気をつけてね」

目的地が定まった有達は再びログインした有の母親にギルドを託して、まずは『シャングリ・ラの鍾』へと向かった。

『レギオン』と『カーラ』の者達をき出して捕らえた後、彼らに扮して潛し、その報源から信也が指揮を執っていた部屋の場所を特定するためだ。

そんな勢を背景に、奏良は確かな不満を言葉に乗せる。

「何故、誰もあの行に対して指摘しないんだ……」

ーーどうして。

その問いに込められた思いは複雑怪奇なのだろう。

奏良は視界の先に広がった景に目を疑った。

「うわっ、寒いね!」

遠く離れた場所で梨と思われるがぴょんぴょんと跳ね回るという彼らしからぬ行を繰り返していた。

「やっぱり、寒いじがするよ」

その人ーー梨の格好に扮した花音は、まるで極寒の地へと訪れたように震いしている。

花音の視界の先には凜烈さをはらむ済んだ青空と、雪化粧を施した氷の窟があった。

だが、『創世のアクリア』のプロトタイプ版には、的に寒いとじるようなシステムはない。

「この辺り一帯は冬景だからな。でも、ゲームの中だから、実際は寒くないだろう」

「この辺り一帯は冬景だからね。でも、ゲームの中だから、実際は寒くないよ」

花音の言い分に、を隠していたし逡巡してから言った。

目を見張るの前で、姿を見せているリノアもまた、不思議そうに同じ作を繰り返す。

その指摘に、花音は信じられないと言わんばかりに両手を広げる。

溫度、リアルに設定したら凍えるよ」

「確かにな」

花音の訴えに、上空を見上げた徹は同意した。

『シャングリ・ラの鍾』の上空には、今回の目的の場所である『サンクチュアリの天空牢』がある。

今回、有の母親が掲示板に書き込んだ容は、『シャングリ・ラの鍾』付近で梨らしき人を目撃したというものだ。

達はそれぞれの場所に配置し、その誤報に釣られて、『レギオン』と『カーラ』の者達が現れるのを待ち構えている。

「マスター。この周辺では、電磁波の発生はじられません」

達が作戦の準備を整えている間、プラネットは目を閉じて、『レギオン』と『カーラ』による電磁波の妨害がないかを探っていた。

「そうなんだな。作戦が上手くいけば、いいんだけどな」

「そうなんだね。作戦が上手くいけば、いいんだけど」

インターフェースで表示した時刻を確認しながら、とリノアは顎に手を當てて、真剣な表で思案する。

「ねえ、くん、リノアちゃん。私と同じ作をしてみて」

「俺が花音の言を真似る必要があるのか」

「私が花音の言を真似る必要があるのね」

花音の懇願に、とリノアは同じ想いを呈した。

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