《地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇は殺そうとしてきた兄への復讐のため、來訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝國を手にれるべく暗躍する! 〜》第42話―2 休戦終了
休戦終了のカウントダウンが始まる中、ゲート方面でもきがあった。
「敵艦隊きます! 陣形を維持したまま距離を詰めてきます」
オペレーターがアセナ大佐に報告すると、ジブリールが顔を真っ青にした。
「そっちでくるか……突撃系で一気に突破してゲートを抑えるかと思ったけど、じわじわと押し込んでこっちをせん滅する気ね」
アセナ大佐はモニターの艦隊は位置をジッと見つめた。
一點集中で來られればポリーナ大佐と低下力の重巡洋艦三隻しか真っ當な機戦力の無い異世界派遣軍はゲートの支配権を失いかねなかったが、こうして來てくれるのならば時間は稼げる。
(時間だけはね……問題は完全に包囲されてはワーヒドから退避してきた艦隊が包囲網を突破するためにもう一戦する必要がある……軌道上の戦闘で損耗したダグラス達にそれが……)
アセナ大佐の出した結論は”不可能”だった。
つまりはこのまま敵のゆっくりとした進撃と包囲網構築に付き合う選択肢は無い。
この劣勢な戦力で積極的な攻勢に出て、ゲート周辺の制宙権を握り続ける必要があった。
「空荷の輸送船を前に出して壁にしなさい! 本艦とアズラエルはその後方に陣取ってカタパルトによる簡易電磁撃を実地!」
ジブリールがいよいよ泣き出した。
軌道空母と軌道コントロール艦は基本的には數の対空裝備しか攻撃兵の無い艦だが、自前の巨大な電磁式カタパルトを簡易的なレールガンとして用いる非常用攻撃手段を持っている。
これの威力は中々のもので、本職の戦列艦には及ばないものの命中すれば重巡洋艦クラスの艦船を撃破するだけの威力があった。
ただしあくまでも命中すれば、の話だが。
この二種の艦はとにかく小回りが利かず、つまりは照準を修正する能力に難があった。
超遠距離戦闘や靜止狀態のならともかく、戦闘中の艦艇に命中弾を出すとなるとかなり厳しいものがあった。
「復唱!」
「りょ、了解……」
ジブリールが小聲で復唱する。
この任務の真意は囮だ。
敵が一定距離に來るか損傷をけた段階でジブリールとアセナ大佐は後方の艦に避難する。
とはいえ、下手をすれば死ぬような危険な行であることに変わりは無い。
希な艦としてチヤホヤされてきたジブリールは不安なのだ。
「……もう避難しません? アセナ大佐も危ないですよ」
ジブリールが退避したい一心で幾度目かの言葉をまた吐いた。
アセナ大佐は一瞥もせずに戦況図を睨みながらつっけんどんに答える。
「しでも砲撃の度を上げたいからSA無しの運用はしない……それに私が退避するところを見せれば、退避先の艦をもう一度旗艦として囮に使える……危険だけどこのまま殘るわよ」
アセナ大佐の悲壯な決意をけていよいよジブリールも黙り込んだ。
「休戦終了二十秒前」
報告と共にモニターにカウントダウンが表示される。
眼前を覆う敵艦隊の群れを睨み、沈黙が訪れる中アセナ大佐はいよいよ指示を出すべくの発生を震わせ……。
「大佐、ポリーナ機が!!!」
カウントダウンが殘っている狀況で突如として沈黙が破られた。
オペレーターが悲鳴の様な聲を上げたのだ。
「どうした? ポリーナはまだ待機の筈……」
アセナ大佐も困してオペレーターに続きを促した。
しかし、その必要は無かった。
メインモニターに単敵艦隊の真正面に突撃するポリーナ大佐が映し出されたからだ。
「ポリーナ、何のつもりだ!?」
アセナ大佐が怒聲を上げた。
ポリーナ大佐はゲート守備隊の切り札だ。
的確な運用をしなければ作戦目的の達は不可能。このような獨斷行は許されない。
しかし、ポリーナ大佐の返事よりも先にオペレーターが新たな報告を上げた。
「アセナ大佐! 敵艦隊制をかけてます……敵全艦隊停止!」
「なに!?」
「あ、いえ……一隻……いえ、一機突っ込んできます! 敵の小型機が一機だけ突っ込んできます」
理解できないと言った表でアセナ大佐がメインモニターを見ると、サイボーグ用の小型機兵が単で突っ込んでくるのが映っていた。
「何のつもりだ?」
『私と戦いに來たんですよ』
ポリーナ大佐がようやく通信をれた。
その聲に思わずアセナ大佐はぞっとした。
ジブリールも同様で、へたり込んでアセナ大佐の太ももに顔をうずめて震え出した。
『向こうの艦隊も私が健在なのを知ってるから、アレが私を倒すまで一度足を止めたんでしょう……あっはあ♡』
おぞましい程の愉悅に染まった聲だった。
アセナ大佐は知る由も無いが、ポリーナ大佐にとっては今の狀況は喜びだったのだ。
人間が、脆弱でおしい人間が。
自分と殺し合いをするために突っ込んで來てくれているのだ。
人を殺せる。
失態を挽回できる。
地球連邦の役に立てる。
戦いは、楽しい。
それらのがポリーナ大佐という歪なアンドロイドの神を凄まじい程に高揚させていた。
「おい、ポリー……」
「駄目です大佐、ポリーナ機回線を切りました」
オペレーターの言葉と共にポリーナ機との通信は不可能になった。
その景はさながら試合観戦のようだった。
リングは宇宙空間。
観客は火星宇宙軍と異世界派遣軍の艦艇。
観客たちはリングを取り囲むように球狀に二機の選手を取り囲み、歓聲の代わりに索敵と照準のための電波やレーザー、赤外線を照する。
『システム、起……ハストゥールより許可……準最終兵裝、起……ですわー』
『スラスター及び兵裝リミッター解除……反質兵裝オールグリーン……ははは……』
二機の機兵は舞う様に宇宙のリングを駆けていく。
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困と期待と興を向ける艦隊をよそに、それぞれ右側のアームにプラズマブレードと高周波ブレードを展開し、徐々に近づいていく。
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『私があなたを倒すまで艦隊には停止するように言ってあります……よろしいですわね?』
『……來い、人間』
両者がアームを振りかぶる。
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プラズマブレードと高周波ブレードがぶつかり合い、反発する斥力がプラズマを激しく弾かせひと際大きく輝く。
この瞬間、ワーヒド全域で戦闘が再開された。
次回更新は1月11日の予定です。
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