囮役の梨に扮した花音とを潛めていると同じ作をするリノアが『シャングリ・ラの鍾』の前に赴く。

量戦で攻め來るのか。

それとも、強力な魔を使役して、花音達を脅かしてくるのか。

周囲を窺う達に張が走る。

これからの戦いを想起させるような狀況に有は祈るような聲で告げた。

「、リノア、妹よ、頼むぞ」

「潛が功したら、次は報収集だな。『レギオン』と『カーラ』からあの部屋についての報を聞き出す手段。いろいろと試してみるしかないよな」

『レギオン』と『カーラ』から報を得るのは容易ではない。

だからこそ、徹は敢えてそう結論づける。

あらゆる可能を拾い集めるしかないと。

「いろいろと試すか。君はどんな手段を用いて『レギオン』と『カーラ』から報を得るつもりだ」

奏良は腕を組み、しだけ考えた様子をみせる。

「そもそも、吉乃信也の時も、君が挙げた手段は一つも果をもたらさなかったじゃないか」

「それはおまえもだろう」

徹と奏良の間に険呑な空気が広がった。

その時、吹き抜けた風の音とともに、がさりと雪を踏みしめる音が揺れる。

「この辺りに、本當に椎音梨がいるのか？」

やがて、達は闇の向こうから何者かがやってくるのを察した。

達が目を向けると、姿を現したのは『レギオン』と思われる者達、そして白いフードをに纏った『カーラ』と思われる者達だった。

「あいつらは……」

「あの時……梨を狙ってきた……」

見覚えのある男達の姿は、徹と奏良の記憶を刺激する。

彼らは現実世界で梨を捕らえようとしていた者達だったからだ。

「あの人達が椎音梨さんを狙ってきたんだな」

その言葉を聞き留めた勇太はに當てた手を強く握り、決意に瞳を開いた。

「何とか、上手く作戦に嵌まってくれたらいいんだけどな」

懸念を示した勇太は盛大にため息をついた。

今回、達は罠にはめたり、地の利を生かしたりとアドバンテージを取れる狀況下である。

だが、『レギオン』と『カーラ』の者達を捕縛することが容易ではないことは現実世界で目の當たりにしている。

「あの時、『レギオン』と『カーラ』の者達の逃亡手段の確保は的確だった。今回も目的を果たせなかった場合、即座に離するかもしれないな」

とはいえ、こちらの心境を相手側に悟られるわけにはいかない。

徹は冷靜を裝って、花音とリノアの様子を視認する。

「……っ」

花音が発した発はの出方を確かめるような言いだった。

雪が舞い落ちる。これから始まる騒をより激しくするかのように。

彼らをこの場から逃せば、達のきを捕捉される。

最悪、『サンクチュアリの天空牢』での探索が困難を極めるだろう。

それだけは避けなくてはならない。

綱渡りだが、んだ未來を守るためには渡らなければならない綱だった。