《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》14話 本當に賢い人達の會話
「それでクラーク史、次の手はどう打たれますかな。もし、貴が私の立場なら」
「ハッ。よしてくれ、ワタシに政治家としての知見はない。付け焼刃の知識で行う政ほど危ういものはないよ」
「知識や知恵を極めた者はそつないものです、貴の學者、そして探索者として得た知見はこの國難を乗り越えるに必須と考えています」
「……まあ、アレタの指示だ、ワタシでよければキミのブレインストーミングの壁打ちくらいには突き合わせてもらうさ」
ぱちっ。
ぱちっ。
よどみなく、固くてひらべったものが鳴る。
「貴に聞きたいのはこれからのきです。まず我々とアレフチームのきを同調させたい」
「ふむ……そうだね、喫の課題は多賀総理。キミの手帳に書かれていたXデーへの準備を粛々と進めるべきだろう」
ぱち、ぱち。
將棋盤を挾み、向かい合う2人。
ひょうひょうとした小男、赤髪の。
どこかちぐはぐな様子の二人、靜かな部屋で二人だけ、
「國會ではお見事、これで政治屋の連中に必要以上足を引っ張られる事もなくなるかな」
「あれは君達アレフチームのおかげに過ぎませんよ。素晴らしいパフォーマンスでした。まあ、しばらく國會には怪の香りが染み付いて取れない。掃除業者の方たちへの支払いをし多めにしませんとね」
「おや、そんなな対応が出來るものかい? ああいうのは札で契約が決まってるだろう?」
「その為の権力です。數十年かけて私はこの國をある程度私の思うままに出來る所まで來ている。ある意味、國會の野黨議員達の敵意は正しい。権力の一本化、獨裁者の誕生を防ぐ、それこそが彼らの仕事でしょう」
「……ふむ、どこの國も似たようなものだね。さて、問題はここからだ。多賀総理、手帳の容、これで一つを潰せたね」
「……そうですね」
【3月、國會議事堂、國會參加中の議員9割死亡】
「國家を相手取り、國家を殺す。その為に必要な戦の中で子どもでも思いつく必殺の一撃、神種にとって、それはバカ話ではなく、現実的に容易にとれる戦略となる……」
「……探索者が現れた時代を思い出しますな。指定探索者制度もまた、表向きは探索者の最高位の設定による職業的地位の向上を謳ったものですが……」
「実態は各國による武力の公表の確保。超常のを持った超人による個人戦力による権力転覆を防ぐための首のようなもの、かな。まあ、規格外の中の規格外たるワタシのアレタには関係ないけどね」
「指定探索者自がおっしゃられると重さが違いますな」
「おっと嫌味に聞こえたかな? 指定探索者による他國への首切り戦については同等の存在足る指定探索者により阻止する。核抑止力ならず抑止力とは言うべきかな」
「神種に対してはその抑止力を用意できなかった、それが味山の話にあった”最悪の未來”の原因だろう、人類はただ神種と比べて弱すぎた」
「……ですが、今は違う、我々には貴達、アレフチームがいる」
「ああ、だがまだ足りない。――八島作戦の遂行にはね」
「耳が痛いですな。……サキモリでは足りない、アカデミーの育も間に合わない」
「ニホン中から異能者を集め、戦力化する、良いアイデアだ。Ver2.0の世界の影響で現れた新たな異能の力の子供を集め、國家で保護、育する、いいアイデアだ。だが、足りない」
ぱちっ。
よどみなくいていた両者の打ち合い。
ソフィの一手により、多賀の手が止まる。
「――普通過ぎる、多賀総理、君は賢く、優秀で、正しい。だが、足りなかったのさ」
「……その為の荒療治でしたな、その、アレタ・アシュフィールド殿は……」
「安心しなよ、彼は星だ。サキモリのような特別な連中とは相が良いだろうね。特別な者は本能的に己よりもさらに輝く特別に魅せられるものさ」
「……そう、ですか……」
「サキモリの育とアカデミーの育はアレタがこなす。サキモリさえ強くなれば、ニホンが神種との爭いに生き殘る可能は大幅に上がる」
「それは……何か策が?」
「君も考えている事さ、多賀総理。自衛軍。彼らの主要任務を、怪種、および、神種との戦闘から、國家、國民の防衛、および災害派遣と言った”自衛”という彼らが最も得意とする分野に絞れる……」
「それは……驚きましたな、ソレは考えなかったといえばウソになりますが」
「多賀総理。神種との戦闘は 現代戦の様相とは違う、大兵力と大兵力、軍隊と軍隊の戦いではない。卓越した個と個の爭い。ある意味古い時代の一騎打ちといった呼ぶべきかな」
「そこに自衛軍としてのドクトリンは通用しないと?」
「というより人的資源の無駄使い、かな。自衛軍は舊自衛隊の時代から世界で唯一、殺した人間より救った人間の數のほうが多い戦力だろう?」
「――……」
多賀がぽかんと口を開ける。
「神種との戦闘は國家にとって恐らく災害に等しいだろう。我々はそれを最大限に抑える努力はする、だが、アレタ、そしてアジヤマ。この2人が本気で市街地で戦闘を行った場合、都市の壊滅は免れない、ああ、対策は考えているけどね」
ソフィが盤面を見つめたまま、熱い緑茶を音もなく啜る。
「それに、あとはDMAT(災害派遣醫療チーム)かな? 全國の災害拠點病院に配置された全國での活を前提にした醫療チーム、あれの數を、4月、いや最低でも8月には倍近くに増やせないかい? ローカルDMATの資格を特例で試験なしでニホンDMATに変更したりは出來ないだろうか? 厄介だね、事実を公表すれば社會の混は免れない、だが、公表しなければ社會全としてのマンパワーをかした対策は出來ない……くくく、政治家なんてなるものじゃないよ、まったく」
「……ずいぶん、わが國の実にお詳しい、ですね、ニホンで暮らした事がおありで?」
「いいや? まったく。アレタはずっとアメリカにいたしね」
「ならば、なぜこんなにも我が國の実に……」
「うん? 當然だろう?」
多賀の言葉にソフィが首を傾げて。
「――アジヤマタダヒトの故郷だ。仲間の故郷、文化背景、國家事。探索者として。多國籍チームを運営するのそれを頭にいれるのは當然の事じゃないか」
「……今、心の底から貴が存命してニホンにいらっしゃる事に謝しております」
「ははは、よしてくれよ。だが、そうだね。その謝意ならやはりあのバカに伝えてやってくれ」
「ああ、バカ……はは、彼は彼で貴に言えといいそうですが」
「くく、違いないね」
ぱち。ぱち。
將棋盤に小気味いい音が響き続ける。
「そういえば、そのバカ殿は今どちらに?」
「ああ、あのバカなら今。ア(・)レ(・)タ(・)と(・)一(・)緒(・)に(・)サキモリ達のアグレッサーとして――」
ソフィが、をぺろりと舐め、駒を運んで。
「――た、多賀総理っ!! 失禮します! ご、ご報告です!!」
勢いよく開かれる扉。
青い顔をして息を切らす多賀の書が聲を引きつらして。
「アカデミーに正不明の怪種、襲來!! アカデミー警護の戦力は壊滅!!」
「「っ」」
ソフィが、多賀が息をのんで――。
「怪種の特徴は!? 必要ならワタシとグレンが――」
「耳です!!」
「えっ」
「記録畫によると、IQ3000を名乗る耳の化けがアカデミー敷地に侵!! 総理、至急! サキモリの出を!!」
報告を聞いた瞬間、ソフィと多賀が顔を見合わせて。
「「あちゃ~」
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