《地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇は殺そうとしてきた兄への復讐のため、來訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝國を手にれるべく暗躍する! 〜》第43話―1 決著その四 一木弘和と神來華子
『あああああああああああああああああ!』
『きぃえああああああああああああああ!』
スピーカーの音が割れるほどの絶がオープン回線でゲート周辺の空域に流れる。
ポリーナ大佐とエリザベットが激しく鍔迫り合いしながら絶しているのだ。
「ええい、やかましい」
火星宇宙軍ゲート方面派遣分艦隊司令のクワベナ將は顔をしかめながら呟いた。
彼のいる旗艦ウメタロウの中樞にある艦隊司令部には三十名ほどの司令部要員が勤めていたが、ほぼ全員が同じように顔をしかめていた。
だがなにもこれは絶がやかましいから、というだけではない。
そもそもだが彼らは當初、ゲートの制圧を自分たちだけで行う腹積もりだった。
彼らはポリーナ大佐によるゲリラ戦に翻弄され、月基地制圧も自により失敗した上大損害をけると散々な目にあってはいたが、それでも新鋭艦を扱う火星宇宙軍最鋭という自負があった。
それだけに開けた場所で劣勢かつ固定施設を抱え込んだ異世界派遣軍のゲート守備隊を相手取るこの戦闘に対する意気込みには並々ならぬものがあった。
そんな意気込みをぶち壊しにしたのが、今眼前で人間離れした絶を上げるエリザベットだった。
「私がまずお単でいきますわ。おフリートの皆さま方はその後で……私があの航宙アンドロイドを撃破した後でいらっしゃってくださいまし」
アニメから飛び出してきたような青みがかった髪におおよそ軍人らしからぬ長く複雑な縦ロール。
人間同様の形式のボディに裝備を著込んだ他のRONINNとは違い、競泳水著の様なボディから生える手足はごつごつとして重厚な全金屬製。
RONINN三番隊隊長”魔王”エリザベット・リシュリュー尉は帰還するなり戦闘用サイボーグの極致と呼ばれた重厚なを惜しげもなく曬しながら將も所に直談判しに來たのだ。
もちろんたとえRONINNであろうと階級は絶対である。
このあまりにも非常識で無禮な行為に將と司令部要員たちは激怒したが、エリザベットは涼しい顔で言ってのけたのだった。
そもそもの話、エリザベットが本気になれば艦の人間に押しとどめる事などできはしなかったのだが……。
「あなた方……いえ將閣下は先の苦戦をアステロイドベルトでのゲリラ戦にあるとお考えの様ですが……それは違いますわ。もしゲート攻略ならばいけるなんてお思いですのなら、また大損害をおけになりましてよ?」
あまりの言いに激昂しかけた將だったが、寸前で思いとどまった。
標準艦は火星宇宙軍機の新鋭艦だ。
従來の単獨機能を備えた小型艦を統制艦で従えて大艦隊でしかけない宇宙軍から卻するための、重要な存在だ。
それが初陣で戦果も上げられずに大損害……非常にマズイ事態だった。
だからこそ挽回のためのゲート攻略だったが、同時にポリーナ大佐という強力な個が懸案事項として殘っている、これも事実だった。
事態は既にゲート攻略は出來て當たり前、という狀態にある。
この上さらに被害を積み増す事は、なんとしても避けなければならない。
「……いいだろう」
司令部要員たちから一斉に司令!? という聲が上がる。
しかしそれを手で制する。
押し黙る司令部要員をよそに、エリザベットはニコニコ笑顔で高笑いを上げた。
「おーほっほっほ! ありがとうございますわー♪ それではごめんあそばせー……あ、そうそう……皆様方は決して敵を倒すまで私が設定した範囲にらないようにお願いいたしますわー! られてしまっては……ご無事は保証できませんわー!」
最後までやかましい聲を上げてエリザベットは去っていった。
當然エリザベットがいなくなれば將へは司令部要員達からの疑問の聲が上がるが、將は何事も無かったようにとぼけた表を浮かべた。
「なにか、したかね? 私は何も聞いていないが……ああそうそう。戦闘開始後私が指示したら一時停止するように艦隊に伝えておいてくれたまえよ?」
將はエリザベットからの要請を無かったことにした。
つまり、彼が行うポリーナ大佐との一騎打ちを、あくまで獨斷専行の無斷行という事にする気なのだ。
首尾よくポリーナ大佐を撃破出來ればよし。
萬が一負けたのならば、それこそ好都合。
一連のゴタゴタをRONINNに押し付けるつもりなのだ。
サイボーグのエリザベットがある程度の報を記録したり送信している可能は高いが、新鋭艦部隊の指揮である將はそんなものは政治力で握りつぶせる自信があった。
だから、今眼前で繰り広げられる両者の激しい戦闘を見るにとどまる現狀にはそもそも不満があり、さらに言うならばポリーナ大佐を撃破することもあっさりとやられる事もせずに互角、というのは最も面倒で嫌な展開だったのだ。
「どっちにしろとっとと終われば我々の出番が來たものを……」
將が苦々しく言うと、司令部要員の一人が口を開いた。
「閣下、いっそ支(・)援(・)なされては?」
嫌な笑みでの発言だった。
「……そう、だな。苦戦しているようだし、獨斷行とはいえ友軍だ。助けてやるか」
將も悪い笑みをかべた。
やっと更新できました。
明日も更新しますので、よろしくお願いします。
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