《【窟王】からはじめる楽園ライフ~萬能の採掘スキルで最強に!?~》二百四十三話 兵糧攻めにしました!!

レオールに亜人が集結した翌朝。

俺たちはラングスの東に來ていた。

今は小さな林にを潛めている。

「あれだ。あそこに食料が蓄えられている」

レムリクはそう言って丘の上に立つ城塞を指差して言った。

平原の中で目立つように立つ城砦はさながら絶海の孤島のよう。周囲にを隠す木々や建は見當たらない。

「さすが王子様の蓄えだね。いや、あの強な総督のか。警備が厳重」

フーレは遠鏡を覗き込みながら言った。

俺たちはレムリクの提案──総督らが溜め込んだ食料と資を奪取する計畫を実行することにした。

すでにバリスの指揮のもと、シェオールの部隊が各地の倉庫と貯蔵庫へと向かっている。

しかしそれらはどれも小規模で、レムリク曰く警備もいないような隠し倉庫。

危険かつ一番資が詰め込まれている場所は、俺たちとレムリクで直接向かうことにしたのだ。

それが目の前の丘に立つラングスの西にある城塞。レムリクによると、周囲の亜人の村々から徴収されたものだけでなく、大量の武や総督の私的な蓄えもこの城塞にあるという。

レムリクは地図を見ながら続ける。

「一見、防衛用の砦にしか見えないけど、地下に広大な貯蔵庫が造られているんだ。そしてラングスへ繋がる地下道もね」

リエナが答える。

「ラングスに何かあった時の逃亡先というわけですか。ここを襲われれば、総督も気が気でないでしょうね」

「分かる。食料とか武以上に自分の金が大事そうだもんね」

フーレもそう呟くと、レムリクは深く頷く。

「総督が乗り気でなくなれば、兄上もシルフィウムへの侵攻を考え直さざるを得なくなる……だろう」

「あの強面王子に逆らえるようなやつじゃなさそうだけど……」

フーレの言う通り、総督のアーダーがルダに真っ向から逆らえるとは思えない。

とはいえ、レムリクが言うにはルダは無謀な男ではない。

この収奪は確実に侵攻計畫の妨害につながるはずだ。

「ともかく、食料や武を奪おう。このじだと、やはり俺が地下を掘り進めて城塞の下に行くのがいいと思うが……レムリクを助ける時、俺たちが地下から來たのをルダたちも知っているだろうな」

俺が言うと、レムリクは小さく頷く。

「兄上の負傷や僕の走は公にされていないと思うけど、それでも総督が地下に警備を置いている可能はあるね。まあ、あの城塞に食料や資が貯蔵されているのを知っているのは、総督と一部の人間。僕が知っているとは思ってもいないだろう。心配しなくても簡単に不意を突けるはずだ」

レムリクは俺たちを安心させたかったのかもしれない。

しかしレオール山での不測の事態を考えると、不安は拭えない。レムリクは結構抜けている。

フーレが言う。

「皆、慎重に行こうね!」

「僕、そんなに信用できないかい……」

「うん」

即答するフーレに、レムリクは肩を落とした。

とはいえ敵の最高戦力であるルダが不在である以上、最悪の事態になるとは思えない。

「……いずれにせよどんな狀況でも対応できるように準備してきた。皆、作戦の確認をするぞ」

俺は後ろに振り返って言った。

そこにはシェオールからやってきたコボルト、ゴーレムたちがいる。総勢五十名の大部隊だ。

皆が真剣な顔をこちらに向ける中、俺は作戦を説明する。

「俺が倉庫への地下道を掘って、城塞の真下に來たらこの林へ伝令を出す。そうしたら飛行部隊に狼煙を送るんだ。城塞の上空を飛行してくれる」

ドラゴン型のゴーレムを砦の上空で飛行させ、地下から空へ注意を向けさせる。地下の警備を地上へとき出すのだ。

「その後、地下道を開通させ、俺とゴーレム部隊は貯蔵庫の食料と資をこの林へと運び出す。リエナとレムリクは俺たち回収部隊の護衛を。フーレは十五號とこの林で地下道口の防衛を頼む」

皆、即座に首を縦に振った。

「よし、作戦開始だ!」

そう言って俺はいつものようにピッケルを振り始めた。

ルダの復活が思いの外早くなる可能もある。また地下に突撃されてもいいよう、常に上空の魔力に注意を払いつつ掘り進めた。

また、迅速に資を運び出せるよう床をなだらかにしている。荷車を走らせてもしも揺れないほど平坦な道になっているはずだ。

そうして掘り進めたのだが……心配していた事態は起こらなかった。

特に何事もなく、城塞の真下あたりへと到達する。

周囲を探ると、無數の魔力の反応があった。

しかしどれも地上のほうに集中している。察するに地上の出り口だけを警備しているのだろう。

「ラングスでのレムリクの件が周知されていれば、地下に多數の警備を置いていてもおかしくないが……」

「私たちをつり出すための罠、という可能もありそうですね。例えば、地下倉庫を崩落させ、私たちを一網打盡にしようとしているとか」

リエナもそう言うが、レムリクは首を橫に振る。

「たとえ兄上が健在だったとしても、有効な罠は張れないだろう。それに君たちの魔法なら」

急に黙り込むレムリク。

焦っているわけではなく、何か考しているようだった。

「どうしたレムリク? 何か不安か?」

「いや……大丈夫だ。兄上がいない以上、君たちを止めるはない」

「そうか。じゃあ、飛行部隊のが始まったら、このまま地下通路を開くぞ」

こくりと頷くレムリク。

それから俺はドラゴン型のゴーレムに砦の上空で飛行するよう伝令を出した。

まもなくして上の魔力の反応が騒がしくなる。地下への警戒は緩むはずだ。

壁が崩れると、広大な貯蔵庫が見えてくる。

天井までの高さは、二階建ての家ぐらい。規則正しく、いくつもの棚が並べられている。

中にって歩くと、大量の木箱や樽、武、そして煌びやかな黃金寶石が所狹しと置かれているのが見えた。

近くにあった木箱の中を空けると、そこには塩漬けがぎっしりと詰まっていた。毒をれられている可能もなくはないが、発したりすることはなさそうだ。

特に問題もないと判斷した俺は、資を外へ運ばせようゴーレムたちに命じる。

一方で鉄鉱の類などは、俺のインベントリにれていく。

「すごい蓄えだな……これなら、食料は當分問題なさそうだ」

「そうだね。だけど金銀寶石がこんなにあるのに、まったく見向きもしないんだね」

レムリクは箱いっぱいに注がれた寶石を手で掬いながら言った。

シェオールで々掘ってきた俺たちからすれば、食料ほどの価値はない。

しかし普通なら、食料よりも金銀寶石に皆目を輝かす。

レムリクからすれば奇異に見えただろう。

「いや……もちろん俺らだって金銀寶石は嫌いじゃない。ただこれは」

「ああ。総督が亜人から奪い取ってきたものだろうね」

「とりあえずは持ち帰ろう。対立が長引けば、外國から食料や資を買う資金にすればいい。ともかく総督にとっては確実に痛手になるはずだ」

そう言って俺は金銀寶石を回収していった。

ゴーレムたちも緻な計畫を練っていたのか、次々と資を外へと運び出していく。マッパが作った巨大な荷車に資を載せて。

結果として、三十分もしないに貯蔵庫は綺麗さっぱり何もなくなってしまった。

レムリクは唖然とした様子で倉庫を見ていた。

「もう君たちを見て何も驚かないだろうと思っていたが……君たちの正は、人間界屈指の大泥棒なんじゃないか?」

「失禮なことを言うんじゃない。俺は盜みなんてしたことない」

まあ、あれだけの金銀寶石を見て落ち著いていればそうも見えるか。

リエナは天井に顔を向けながら言う。

「地上のほうも特に変わったきはありませんでした。が上手くいっているのか、地下への巡回も全く來ませんでしたね」

「やはりし上手くいきすぎている気もするが」

俺が言うと、レムリクは首を橫に振る。

「単純に気付いていない可能が高い。総督も兄上の負傷で混しているだろうし、警戒を失念しているのかもしれない。そもそもベーダー人は常に攻める側のことが多くて、何かを守ることは不得意。食料に困った経験もないし、龍になれれば武もそこまで必要ないからね」

そう話すレムリクの顔に不安は見えない。

「そう、か」

俺が呟くと、レムリクは深く頷いた。

先程の沈黙はただの杞憂か。

ともかく取るものは取った。

長居は無用だ。

「よし、撤収しよう」

俺は貯蔵庫のと地下道を巖で塞ぎ、この貯蔵庫を後にした。

その後は他の資が眠る場所を回った。

俺たち以外の部隊も損害もなく円に作戦を功させる。

食料や資に毒や罠が仕掛けられているわけでもなく、またベーダー軍が追跡してきたり取り返しに來るということもなかった。

加えて、偵察隊からは総督含めベーダー側は大混に陥っているという報告も。

レムリクも不安を口にすることはなかった。

こうして総督の食料と資を奪うという、レムリクの提案は大功に終わるのだった。

    人が読んでいる<【洞窟王】からはじめる楽園ライフ~萬能の採掘スキルで最強に!?~>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください