《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》368話
アリアが門番の手足を魔法でくっつけるのをセリナが手伝っている景を何となしに見ていたら、ふと思考の靄が晴れるような覚がした。
そこで気づいたんだが、どうやら俺は自分で思っていた以上に影響をけていたようだ。
靄が晴れた代わりにドス黒いで満たされそうになったが、急に驚いたような顔をして振り向いたセリナと目が合ったことで、意識的に気を沈めた。
正直いえば納得しているわけではないが、一度許すといったにも関わらず怒りを向けるのはなんか違う気がするしな。
違和に気づけたからいい経験だなんて思っていたが、神攻撃はそんな優しいもんじゃねぇわ。存在するだけで敵に敵意を向けさせないとかヤバいだろ。そのうえあいつはMPさえあれば忌魔法も使えるっていうんだから、確かに個人で國の切り札になる存在だわな。
前にローウィンスがケモーナ最強の戦士のおっさんをの巫と同列に語ってたことがあったが、あのおっさんはあのレベルの化けなのか。おっさんの本気を見たことないからそこまでとは思っていなかったが、國で最強なんていわれるだけはあるってことか。
そう考えるとジャンヌがSSランクの中で劣っているとか悩んでたっぽい理由もわからなくねぇな。
他のSSランクのやつはの巫と同レベルらしいケモーナ最強の戦士。
そのケモーナ最強の戦士の心を折るほど強いらしい人類最強。
脅威とされたダンジョン攻略の依頼中に俺たちに戦い方を見せてくれる余裕のあったクラン。
あとは俺らが複數人で相手しても勝てる可能が微塵もなかったマナドールが所屬するパーティーのリーダーだったか?
ジャンヌも強いには強いが、この前のが本気だったならテンコとアリアの力を借りれば俺でも手が屆きそうな位置にいるくらいの戦闘力っぽいし、他の化け揃いのSSランクと並べられたら悩みもするのかもな。
そんなことを考えていたら門番たちの意識が戻ったらしく、慌てたように俺に向かって土下座をしてきた。まだ手足がくっついていないやつはもがくようにを捻って頭を俺の方に向けてうつ伏せになった。土下寢か?
「「「申し訳ありません!!!」」」
複數人が口々に謝ってきたから聲はハモっていなかったが、聲がデカいからなんていったかはちゃんと聞こえたし、謝罪の気持ちも伝わってきた。だが、今回は仕方ねぇと思うから謝られても困る。
「お前らが悪いわけじゃねぇから気にすんな。」
どう考えてもの巫とかいうやつの能力が異常なだけで、門番のこいつらが悪いわけではないと思ったからかるく応えたんだが、何かを勘違いしたように焦ったやつらが土下座の姿勢のまま勢いよく額を地面に打ちつけたせいで、ゴッという鈍くてでかい音がした。
「っ!?ば、罰はちゃんとけます!せ、神攻撃耐も鍛えるので、も、もう一度だけ機會をください!お、お願いします!!」
「いや、なんか勘違いしてるみたいだが、気にするなってのは言葉そのままの意味だからな?失したわけでもねぇし、解雇するつもりもねぇよ。神攻撃耐は鍛えられるんなら鍛えた方がいいが、俺自あのの能力にかかっていたのにお前らを罰する気はねぇし、土下座も土下寢も必要ねぇからアリアに治されるまで大人しくしてろ。」
その後も謝ってきたり謝してきたりする門番たちをてきとうに宥めているうちにアリアが全員の手足をくっつけ終えた。
土下座をやめても謝り続けてくる門番をめつつ門を離れ、アリアとセリナとともに屋敷へと向かっているところでアリアが立ち止まった。
どうしたのかと俺も止まって顔を向けると、アリアが申し訳なさそうな顔をしていた。
「どうした?」
「…リキ様が考えがあって門番を殺さなかったにもかかわらず、短絡的に裏切り者を処分しようとしてごめんなさい。魅了されている可能は考えていましたが、だとしても門番でありながら簡単に魅了されて害をなすなら処分するべきだと決めつけてしまっていました。存在するだけで神攻撃耐の加護では防げない魅了をしてくる人間がいることを知らなかったとはいえ、リキ様が処分を優先しなかったときに気づくべきでした。さらにリキ様の対応に不満を向けるようなことまでしてしまいました。……ごめんなさい。」
べつに考えがあって門番を殺さなかったわけではないんだがな。
アリアが裏切り者に対して殺意が高いのは俺を見て育ったせいだろうし、俺がアリアに文句なんかいえるわけがねぇよ。とはいえ、このままだとアリアの今後を考えたらマズいよな…。
「気にするな。俺だってし前だったら理由も確認せずに真っ先に裏切り者を殺していただろうから、アリアの行が間違いだとは思ってねぇよ。ただ、今回は村人が裏切ることに違和がありすぎて殺意が湧かなかったから放置しただけだし。」
アリアは俺が気を使っていると勘違いしたのか、何かを確認するような視線を俺に向けてから目を伏せた。
「とはいってもだ。殺しちまったら取り返しがつかなくなる場合もあるから、今後は理由くらいは確認した方がいいかもな。今の俺らだったらそのくらいの時間を相手に與えても殺そうと思えば大抵のやつは殺せるくらいの力はあるんだし。」
言葉選びを間違えた気がしなくもないが、俺が道徳を説いても説得力が皆無だし、そもそもこの世界に道徳を持ち込んだところでなにいってんだ?って思われそうだからこっちの方が納得しやすいだろう。
「…ごめんなさい。わたしの短絡的な行のせいでリキ様の名に傷をつけてしまうことにまで頭が回っていませんでした。」
ん?…そんな話はしてないんだが、殺す以外の選択肢も持つようになるならいいのか?
というか今思い出したんだが、アリアの面倒を任せるつもりでセリナを買ったのにセリナは何やってんだ?とセリナを見たら、不思議そうな顔で見返された。
いやまぁアリアの世話を任せるような命令はしてねぇし、完全なる八つ當たりだから視線だけで伝わるわけねぇよな。
アリアは頭がいいからと面倒をみるどころか々任せて放置してたのが良くなかったのかもしれない。今さらだが俺の悪い部分の影響をけっこうけてそうな気がする。むしろ余裕が出てきた今だからこそ気になったのかもしれないがな。
気になったのなら、今後のアリアのためにも一般的な人の心についてを教えた方がいいだろう。まぁ俺が教えられる容じゃねぇから、基本はセリナに任せるつもりだけど。
「べつに俺の名なんて傷つこうがかまわないんだが……まぁいい。それよりドルーゴのところに戻る前にアリアに確認しておきたいことがあるんだが。」
「…なんでしょうか?」
「ドルーゴに傘下にならないかっていっていたが、最終的にはどういった條件でまとめる予定かを教えてくれ。」
「…?……あの場でお話しした條件で傘下に加える予定だったのですが、もっと條件をつけた方がよかったでしょうか?」
どうやらアリアは斷らせるつもりだったり、渉を有利に進めるためだったりでふっかけたんじゃなく、真面目に渉してるつもりだったのか。
その結果が支店をいくつも持つ商會に対して冒険者グループの傘下になれっていうんだから意味不明だわ。
アリアにとっては『一條の』は最高のグループなのかもしれないが、既に功している商會が実績も何もないグループの傘下にるわけがないだろ。
「條件を増やす必要はないが、契約するつもりだったとしたら、今のままだとたぶん斷られると思うぞ。」
「…どうしてでしょうか?彼は調べた限りでは商人として一流です。それほどの商人が今回の話を斷るとは思えないのですが。」
「俺は商人のことはよく知らんけど、自分の商會が順調に運営出來てるのに別のところの傘下になんてらないと思うんだが……セリナはどう思う?」
「え?私に聞くの!?私はその話し合いを知らにゃいから、聞かれても困るんだけど…。それって盜賊の件で渉にくるかもってアリアが前に話してたやつだよね?けっきょくどういう條件で渉することにしたのかを聞いてにゃいから、そこから教えてもらえにゃいとわからにゃいよ。」
どうやら俺には何の報告もなかったがセリナには予想を話してはいたらしい。でも渉容をセリナが知らないってことはアリア1人で決めたのかもな。
「…今回の渉についてですが……。」
アリアが今回の商人との渉について詳しくセリナに説明を始めた。
今回も話し合いはアリアに全部任せていたのにいきなりセリナに手伝わせるようなことをいったから、多は嫌がるか落ち込むかと思ってアリアの表を見ていたが、表に変化はなかった。どうやらセリナだったら急遽手伝わせてもアリア的には大丈夫みたいだな。
それならあとはセリナに任せよう。
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【講談社ラノベ文庫より8/2刊行予定】 権力者の孫娘にして超人気聲優アイドル・瑠亜の下僕みたいな立場に甘んじていた俺。 「アタシと幼なじみなこと、光栄に思いなさい! ッシャッシャ!」 しかし、しかし……。 彼女がやった「あること」がきっかけで、俺はぶち切れた。 お前とはこれまでだ、さらばブタ女。 これまでずっと陰に徹して、ブタの引き立て役だった俺。 ようやく普通に生きられると思っていたが、「普通」はなかなか難しい。 天才が集うS級學園の特待生美少女たちに、何故か次々とモテてしまって――。 これは、隠れハイスペックの主人公がヒロインとの「絶縁」をきっかけにモテまくり、本人の意志と関係なく「さすがお前だ」「さすおま」されてしまう物語。 ※ジャンル別日間・週間・月間・四半期1位獲得 ※カクヨムにも投稿
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