《チート能力を持った高校生の生き殘りをかけた長く短い七日間》第十九話 新たな関係
ローザスが読んでいた書類をハーコムレイに渡した。
ハーコムレイもじっくりと読んでいるのがわかる。視線のきからの判斷だが、しっかりと読み込んでいるのだろう。ゆっくりとしたきで、視線を上から下にかして、また上に戻る。複雑な書類なのだろうか?ハーコムレイの額に深い皺がきざまれていく。
「ローザス」
「ふぅ・・・。従兄殿も諦めればいいのに・・・」
「諦めきれないのだろう。そもそも、あの愚が元兇なのだ。なぜ、生かしておく必要がある!」
ん?
元兇?生かしておく必要?
「なぁ俺が聞いてもいい話なのか?」
「ごめん。ごめん。リン君にも関係する話だけど・・・」
ローザスの歯切れが悪い。
今までになく、何かを言い澱んでいる。
「リン=フリークス。この書類は、今日の話には関係がないだ。証拠固めが終わっていないことや、神殿勢力・・・。リン=フリークスとの関係を悪化させる可能があるために、事がわかってリン=フリークス・・・。人柄の判斷ができてから話をする予定だったものだ」
「え?そこまで”説明した”ってことは・・・。”見せない”というつもりがないのだな?」
ローザスは、”にっこり”と笑ったが、ハーコムレイは眉間の皺を増やしてから、書類をテーブルの上をらせた。
書類を読んで良いのだろうか?
持ち上げて、容を・・・。
おいおい。
「ローザス?」
「そうだよね。リン君への説明は、ハーレイではないよね」
ハーコムレイを見れば、ローザスに視線を固定している。
書類の容を考えれば、ハーコムレイでも説明はできるのだろう。しかし、ローザスが説明をしてくれたほうが、納得ができる。
「頼む」
一言だけローザスに告げる。
書類の容をなぞるようにローザスが語り始める。
サビニ・・・。母親のサビナーニが、王家から抜け出した。當時の話は聞いていた。
経緯も大まかには把握していた。話されていたのは、表の事だけだったようだ。実際には、裏の事の表側。おおやけになっても、王家や貴族社會に大きなダメージがない容だ。サビナーニとニノサが悪いという印象を植え付けられる容だ。
「・・・」
貴族クズの考えそうな容だ。
「リン君?」
ローザスが窺うようなそぶりを見せる。
至って冷靜だ。サビナーニとニノサの話として客観的に考えられる。しかし・・・
「大丈夫。聞いているよ。それで?そのクズは?生きているのか?」
「・・・。あぁ」
処罰ができなかったのか?
「王家が庇ったのか?」
「リン=フリークス!」
ハーコムレイが立ち上がる。
「なんだ?ミヤナック家も関係しているのか?」
テーブルをたたいて抗議の意思を見せるが、今までの流れから、本気でミヤナック家が関係しているとは考えていない。
どちらかというと、正面に座って、苦蟲を噛み潰したような表をしているローザスの・・・。王家が関係しているのだろうか?
もしかしたら、庇ったのは、國王か?
「違う。王家は、やつを罰しようとした」
予測は正鵠を得ている。ハーコムレイの言葉で、確信した。
「それなら?なぜ、生きている?」
王家が処罰したのなら、生きているのが不思議だ。
確実に、醜聞につながる。それだけではなく、生かしておくメリットがないだろう。幽閉して、時期が來たら”自殺”する流れだろう。
「それは・・・」
ハーコムレイも自分で言っていて、王家のやり方に納得ができていないのだろう。
自分で納得ができていない事柄で、他人を・・・。當事者に近い人間を説得できるわけがない。わかっているのだろう。被害者の家族に、加害者に近い者たちが、いかに言葉を並べても無意味なことが・・・。
それが、真実だったとしても、事実として認識ができないように追い込んだのは、加害者や加害者を擁護した者たちだ。被害者側が求める真実は、加害者の言葉ではない。被害者が納得のできる報を提示して、被害者の疑問に、被害者にわかる言葉で説明ができる者が必要だ。そして・・・。そんな人は存在しない。
「ハーレイ。いいよ。従兄殿は、教會に逃げ込んだ」
黙ってハーコムレイとのやり取りを聞いていたローザスが、ハーコムレイの肩に手をおいて座らせてから、まっすぐに俺を見て、隠さずに報を提示した。
「リン=フリークス。王家は、やつをとらえようと・・・」
ハーコムレイが、王家を擁護しようとしたが、ローザスが手を上げてハーコムレイの発言を遮る。
「ん?教會にいるのか?宗教都市ドムフライホーフか?」
王國の中に存在するが、王國の権力が及ばない場所だ。
逃げ込むには最良の場所だ。そして、神の代弁者を語る者たちにとっても、王家の筋は利用価値が高い。
教會の保護下で、子供を作らせて・・・。その子供は王家の筋だ。教會と強いつながりがある新しい統治者として擔ぎだすことができてしまう。
「そうだ。やつは、宗教都市ドムフライホーフでされていたはずだ」
ローザスも、教會を信じていないようだ。そして、王家でも、教會の機報は簡単には盜めないのだろう。
「そうか・・・。教會も敵なのか?」
一部の貴族だけではなく、教會が敵になるのか?
神殿が公開されれば、絡むことができない貴族・・・。アゾレムに関係する者たちから敵視されるのはわかっている。同時に、教會とも微妙な関係になるのは最初からわかっている。
「・・・」
「それは・・・。一部の者たちが・・・」
ローザスは、黙って頷いているが、ハーコムレイは何か気にしているのか?
それとも、この件を追いかけると、何か問題があるのは、王家ではなく、ミヤナック家なのか?
「それは、俺には関係がない。王家や貴族・・・。ミヤナック家は、教會の一部勢力と結託するのか?」
俺の問いかけに、ハーコムレイは苦蟲を噛み潰したような表をさらに厳しくしている。
ローザスは、ハーコムレイを見てから、俺をまっすぐに見る。
「リン君。王家の中にも、貴族の中にも、教會に協力する者たちはいる」
正直に答えてくれるとは思わなかった。
國の考えでは、公爵家は王家ではない(はずだ)そうなると、ローザスの近にも教會に協力する者がいるのか?
ハーコムレイはローザスを見てから、下を向いてしまった。
辺境伯家は、王家ではない。
ローザスが第一王子で、跡継ぎのはずだ。
第一王と第二王は、嫁いでいるから、話の流れからは、王家とは言わないだろう。
第三王は、神殿に匿っている。ローザスにも近いから教會勢力とつながっているとは思えない。
俺が考え込んでいると、ハーコムレイが資料の中にあった答えにつながる名前を指さした。
「そうか・・・」
前國王の側室の子供。
俺たちの二つ年上になり、現在まだ継承権を放棄していない。
宰相の縁者だ。
「リン=フリークス。誓って言うが、ルナは、ルアリーナは、教會とは関係がない。ルナは、教會に近づいたこともない」
資料から視線を離したタイミングで、ハーコムレイがミヤナック家ではなく、ルアリーナが教會勢力とのつながりはないと斷言した。
あまり、意味があるとは思えないが、ハーコムレイの心としては、自分やミヤナック家は自らが守ればいいとしても、神殿にを置いているルアリーナが心配なのだろう。
「ハーレイ。神殿にいる連中を疑ったりはしない。そもそも、教會に報を流す意味がない。そうだ、教えてほしい」
「なんだ?」
「コンラートは、教會の・・・。樞機卿だよな?」
「・・・。そうだ」
「今回の件に絡んでいるのか?」
「・・・」
ローザスが、ハーコムレイを黙らせている。
「リン君が、なぜ”コンラート”の名前を出したのか気になるけど、今は聞かない」
「それで?」
「コンラート家が率いている派閥は、王家とは適度な距離での付き合いに留めて、教會の・・・」
「ん?」
「教會を本來の姿に戻すことを考えている」
「本來の姿?」
「あぁ・・・。それに関しては、僕から説明するよ。ハーレイもいいよね?」
よくわからないが、教會の中にも派閥が存在するようだ。
敵の敵は味方なのか、それとも、敵の敵もやっぱり敵なのか?
ローザスの説明を聞いてみなければ、判斷はできない。
新しい関係を教會とも築けるのか?
新しい関係が、友好的なでなかったとしても、神殿という新しいファクターを咥えた関係になっているのだろう。
大好きだった幼馴染みに彼氏が出來た~俺にも春が來た話
ずっと一緒だと思っていた。 そんな願いは呆気なく崩れた。 幼馴染みが選んだアイツは格好よくって、人気者で... 未練を絶ち切る為に凌平は前を向く。 彼を想い続ける彼女と歩む為に。 ようやく結ばれた二人の戀。 しかし半年後、幸せな二人の前に幼馴染みの姿が... 『ありがとう』 凌平は幼馴染みに言った。 その意味とは? 全3話+閑話2話+エピローグ
8 57現実でレベル上げてどうすんだremix
ごく一部の人間が“人を殺すとゲームのようにレベルが上がる”ようになってしまった以外はおおむね普通な世界で、目的も持たず、信念も持たず、愉悅も覚えず、葛藤もせず、ただなんとなく人を殺してレベルを上げ、ついでにひょんなことからクラスメイトのイケてる(死語?)グループに仲良くされたりもする主人公の、ひとつの顛末。 ※以前(2016/07/15~2016/12/23)投稿していた“現実でレベル上げてどうすんだ”のリメイクです。 いちから書き直していますが、おおまかな流れは大體同じです。
8 183【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金術師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-
書籍版4巻は、2022年7月8日発売です! イラストはかぼちゃ先生に擔當していただいております。 活動報告でキャラクターデザインを公開していますので、ぜひ、見てみてください! コミック版は「ヤングエースUP」さまで連載中です! 作畫は姫乃タカ先生が擔當してくださっています。 2021.03.01:書籍化に合わせてタイトルを変更しました。 舊タイトル「弱者と呼ばれて帝國を追放されたら、マジックアイテム作り放題の「創造錬金術師(オーバーアルケミスト)」に覚醒しました -魔王のお抱え錬金術師として、領土を文明大國に進化させます-」 帝國に住む少年トール・リーガスは、公爵である父の手によって魔王領へと追放される。 理由は、彼が使えるのが「錬金術」だけで、戦闘用のスキルを一切持っていないからだった。 彼の住む帝國は軍事大國で、戦闘スキルを持たない者は差別されていた。 だから帝國は彼を、魔王領への人質・いけにえにすることにしたのだ。 しかし魔王領に入った瞬間、トールの「錬金術」スキルは超覚醒する。 「光・闇・地・水・火・風」……あらゆる屬性を操ることができる、究極の「創造錬金術(オーバー・アルケミー)」というスキルになったのだ。 「創造錬金術」は寫真や説明を読んだだけで、そのアイテムをコピーすることができるのだ。 そうしてエルフ少女や魔王の信頼を得て、魔王領のおかかえ錬金術師となったトールだったが── 「あれ? なんだこの本……異世界の勇者が持ち込んだ『通販カタログ』?」 ──異世界の本を手に入れてしまったことで、文明的アイテムも作れるようになる。 さらにそれが思いもよらない超絶性能を発揮して……? これは追放された少年が、帝國と勇者を超えて、魔王領を文明大國に変えていく物語。 ・カクヨムにも投稿しています。
8 159クラス転移で俺だけずば抜けチート!?
毎日學校でも家でもいじめを受けていた主人公柊 竜斗。今日もまたいじめを受けそうになった瞬間、眩い光に教室中を覆い、気付いたら神と呼ばれる人の前に経っていた。そして、異世界へと転移される。その異世界には、クラスメイトたちもいたがステータスを見ると俺だけチートすぎたステータスだった!? カクヨムで「許嫁が幼女とかさすがに無理があります」を投稿しています。是非見てみてください!
8 53手違いダンジョンマスター~虐げられた魔物達の楽園を作りたいと思います~
神がくしゃみで手元が滑り、手違い、と言うか完全なミスによって転移させられ、ダンジョンマスターとなってしまう。 手違いだというのにアフターケア無しの放置プレイ、使命も何もない死と隣り合わせのダンジョン運営の末、導き出された答えとは!? 「DPないなら外からもってこれば良いのでは? あれ? 魔物の楽園? 何言ってるんだお前ら!?」
8 182虐められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手に入れたので復讐することにした
高校二年の桜木 優希はクラス中で虐められていた。 誰の助けも得られず、ひたすら耐える日々を送っていた。 そんなとき、突然現れた神エンスベルによって、クラスごと異世界に転生されてしまった。 他の生徒に比べて地味な恩恵を授かってしまった優希は、クラスメイトに見捨てられ命の危機にさらされる。気が付くと広がる純白の世界。そこで出會ったのはパンドラと言われる元女神だった。元の世界へ帰るため、彼女と契約を結ぶ。 「元の世界に帰るのは僕だけで十分だ!」 感情や感覚の一部を代償に、最強の力を手に入れた優希は、虐めてきたクラスメイトに復讐を決意するのだった。 *この物語の主人公は正義の味方のような善人ではありません。 クズで最低でサイコパスな主人公を書くつもりです。 小説家になろう、アルファポリスでも連載しています。
8 134