《異世界でもプログラム》第十一話 共和國の闇
「殿下?」
「ん?」
「それで、調べるのですか?」
「命令だからな・・・。そんな顔をするな。私としても、調べないほうがいいような気がしている」
ユリウスは、燃え殘った紙片を見つめている。
重要な文面は殘されていない。しかし、ユリウスやハンスたちの頭には命令の形で書かれていた”共和國の闇”が殘っている。
確認しないほうがいいのは、自分たちというよりも、ライムバッハ家のためだ。
「殿下。ご命令を・・・」
ユリウスは、天幕の中でもっとも信頼できる者を探した。しかし、ユリウスが求める者は、”約束”を守るために、王國に帰還している。
天幕の中にいる者たちをしっかりと見つめてから、大きく息を吸い込んだ。
「共和國には協定違反の疑いがある。ハンス。5000を率いて、西門を閉鎖せよ」
「はっ」
「ギード。おまえは、ギルベルトと一緒に、東門からデュ・コロワの首都にり、行政を抑えろ。援軍で來ている3000を預ける」
「殿下!それでは、殿下を守る兵がなすぎます」
「大丈夫だ。俺は、ここから西にある平原までさがる。そして・・・。街道を抑える」
「・・・」
「本當に、大丈夫だ。街道の分岐は抑えたい。違うか?」
ユリウスの案は、大きくは間違ってはいない。
自分自を囮に使おうとしているのが気にらないだけだ。
「心配なら、さっさと制圧して証拠を押さえて戻ってこい」
「「意」」
ハンスとギードの言葉が重なった。
二人は、深々と頭を下げてユリウスの指示を的な戦に落とし込むためにはなしはじめる。
「ユリウス」
「ギル。悪いな。面倒な役割を押し付けてしまって・・・」
「かまわない。それよりも、本當に無理はするなよ?おまえに何かあったら、俺がアルに殺されてしまう」
「大丈夫だ。さすがに、俺もわかっている。無茶はしない約束する」
「本當に・・・。アルが居ればと思ったことは、何度も有ったけど・・・。今回は・・・」
「そうだな。アルが居れば、俺の代わりに街道を抑える役目か、ギードの代わりに突部隊を任せて・・・」
二人は、居ない者を考えても仕方がないと思っていても、二人が信頼している獨りの男を思い出して考えてしまった。
ライムバッハ領を任されるようになってから、誰も口に出しては言わないが、皆が同じ思いを持っていた。
「ギル。頼む」
「任せろ。ん?國としては、見つかったほうがいいよな?」
「そうだな。ライムバッハ家としては・・・。微妙だな」
「微妙?」
「正確には”間違いであってほしい”だな」
「え?領土が増えるのだろう?」
「あぁ最低でも、デュ・コロワ國は、ライムバッハ領になるだろう・・・。ギル。考えてみろ、國境が変わる。共和國は、國境が複雑になっている。それらの渉をしなければならない。そして、問題は外だけではない」
「ん?」
「問題は、國だ」
「え?」
「ギル。考えてみろ。もし、デュ・コロワ國だけを割譲できたとして・・・。今のライムバッハ家なら運営は大丈夫だろう。し・・・。本當にしだけ、文が負擔を強いられるだけだ」
「それはそうだが・・・。領地が増えるのだから、役職も増えるからいいのでは?」
「そうだな。ライムバッハ家としては、問題はない」
「なんだよ?何が問題になる」
「ギル。デュ・コロワ國の國境はライムバッハ家だけが接している」
「そうだな。辺境伯の名前は伊達じゃない」
「あぁそうなると、共和國を傘下に加えても、増えるのはライムバッハ家の領土だ。あとは、王家の直轄領とするかだが・・・」
「・・・。王國の貴族がうるさい?」
「そうだな。それは、王家が黙らせればいいのだが・・・。デュ・コロワだけが協定違反をしていると思うか?」
ギルベルトは、首を橫に振る。
「ギル!」
天幕の外から、ギルベルトを呼ぶ聲が聞こえる。
準備が出來たようだ。
「行ってくる」
「頼む。無理はしないでくれ」
「大丈夫だ。俺は、ユリウスやアルとは違う」
笑いながら、ギルベルトが差し出した手をユリウスは握った。
天幕を出ていくギルベルトを見送ってから、ユリウスは殘っている兵に指示を出した。
---
共和國は、”民衆による政治”を謳っている。
過去には、”抑圧された民衆を解放する”という理由で、王國に攻め込んだ。その時に、共和國軍を撃退したのが、2代前のライムバッハ辺境伯だ。ライムバッハ家の意向をけて、領土の割譲をまなかった。領土が増えても、當時のライムバッハ家では領地の運営ができなかった。
王國がんだのは、”奴隷制度の撤廃”と”共和國外への食料輸出の止”を突き付けた。
特にライムバッハ家がんだのは、奴隷制度の撤廃だ。
民衆を考えてのことではない。王國と共和國と帝國の関係は絶妙なバランスでり立っていた。
帝國は、王國にちょっかいを出すときに、主に”奴隷兵”を壁にして攻め込んできた。その奴隷兵の提供元が、共和國だ。共和國は、自國や近隣諸國から民衆を攫ってきて、”奴隷”として帝國に売っていた。帝國は、”奴隷”を隷屬狀態にして戦わせていた。ライムバッハ家は帝國とは國境を接していない。しかし、共和國とは國境を接している。共和國の”商人”を裝った者たちが、ウーレンフートなどのライムバッハ領からも民衆を攫って、奴隷として売っていた。
そして、帝國は自給率が低い。王國で食料の買い付けを行っているが、戦爭狀態になればもちろん食料の買い付けは不可能になる。そのために、帝國は共和國から食料の買い付けを行っている。
王國は、共和國に二つの約定を呑ませた。
共和國にもメリットが存在した。食料の輸出がじられたことで、共和國の人口が徐々にではあるが増えた。増えた人口が、今回は足枷になってしまっている。
そして、増えた人口を有効に使おうと、第三國を通じて帝國に國民を売っていた。
隠れ蓑を用意して、”奴隷制度”を復活させていた。
ユリウスによってもたらされた報だ。
ユリウスたちが捕らえた共和國の要人を人質として王國に護送した。
ライムバッハ家で一時預かりになり、その後、王都に送られることになっていた。ライムバッハ家で調書を作していた時に、自分が助かりたい一で、”奴隷売買”に手を染めている議員がいる事をほのめかした。また、それらの報と合わせて、商人からも似たような証言を得ていた。
”奴隷制度”を復活させていれば、まだマシだったかもしれない。
しかし、共和國は”拉致した者たちを奴隷として販売”していた。増えた自國民だけではない。ダンジョンを訪れた王國民もターゲットになっていた。
ユリウスたちが”見つかってほしくない証拠”と言っているのは、”王國民”を奴隷として帝國に違法に売っている証拠だ。かなり期待は薄いと思っている。共和國は商人たちが牛耳っている國だとしても、”奴隷売買”を一般商人が行える狀況ではない。國家に関連している商人が主導しているのは間違いない。
約定を取りわすきっかけになったのが、”ライムバッハ”だ。
メンツを保つ意味でも、約定が守られていなかった場合の対処が必要になる。最低でも、當時に割譲が可能だった領土を奪い取る必要がでてくる。そのうえで、共和國に賠償を求める必要がある。
賠償を拒否された場合には、當時に戻って戦爭の継続が必要になってしまう。
王國のメンツを守るためにも、そしてユリウスの面メンツのためにも必要なことだ。
ギルベルトとギードがデュ・コロワ國の首都に突してから、3日後。
ユリウスの下に、ギルベルトからの書狀が屆く。
んではいなかったが、証拠が見つかったという知らせだ。
ユリウスが考えていた”最悪”をこえる方向に狀況が進んだ。教會所屬のシスターを含めたと児が、奴隷紋を押された狀態で見つかった。それも、暴行され殺された狀態で・・・。シスターのに著けていた類から、王國所轄の教會所屬だと判明した。
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