《ダンジョン・ザ・チョイス》787.突発クエスト・上級國民戦爭
★クエスト中、SSランクの使用は止。
★各屋敷に一つ、“SSランク解の首” EXランクを用意。
★各屋敷より、屋敷の契約者を含む五人だけが各々の初期陣地から出られる。屋敷の外に出ると自分達の初期陣地にはれない。
★初期陣地の外に出る場合、基本的には外のランダムな場所へと転移される。
★三十分ごとに追加で三人、新たに転移できるようになる。
★“地球儀”を破壊された陣地は、破壊したチームの第二、第三拠點になる。
★陣地を五つ以上所持したチームは、クエストからいち早く抜けられる。抜けたチームの総數が五百人を超えた場合、取り殘されたチームは全員、奴隷墮ちとする。
「これが、観測者が語らなかったクエストルールか」
地味に厄介なのがチラホラ。
「最初の五人は、特に負擔が大きいね」
ジュリーの言葉。
「陣地の取り合い……奪った陣地の“地球儀”を破壊された場合はどうなるんだ?」
「これを見る限りだと判らないけれど、最悪を想定しておいた方が良いだろうな」
ルイーサの考え。
「奴隷を不參加にしたのも、俺達がメルシュから正確な報を得られないようにするためかもしれない」
「それでどうします? 最初の五人のうち、コセ君は決まりみたいですけれど」
チトセが皆に尋ねる。
「――私、最初に出たいです」
名乗り出たのは、尋ねた側のチトセ!?
……昨日の恐怖を、正面から払拭したいんだろうな。
「チトセさんは、裝備も重いし長期戦に向かないのでは?」
同じパーティーのイチカが心配する。
「それは……」
「チトセ、參加を認めてしいならこれを使ってくれ」
俺が渡したのは、銀の首。
「これ……もしかして、“SSランク解の首”ですか?」
「正解」
SSランクの“アトリエ・コンポジション”を使えれば、チトセの継戦能力は大幅に上昇する。
「良いんですか?」
「俺はただでさえTPとMPが多いし、もし今回のクエストのルールが大規模突発クエストの最深部と同じなら、“メタモルコピーウェポン”が使える」
一昨日に購した“ディグレイド・リップオフ”だってあるし。
「私も出たい。その“SSランク解の首”、今回のクエスト限定アイテムでなければ、今後の役に立ちそうだし」
ジュリーも參加と。
「私も出るぞ。偽レギもあるし」
ルイーサも參加。
「殘り一人は……」
「……私、行く」
意外な參加者は、ユイ。
「良いのか?」
「うん、“明人間”あるし」
このバトルサバイバルにおいて、姿を消せるアドバンテージは大きいだろう。
「一応、“偽レギ”を持ってけ」
この前のモンスターエレベーターの報酬、自由に選べる十の枠は全て、“ディグレイド・リップオフ”を選択していた。
「ジュリーには“贋作者”を」
ユニークを表す赤いメダルを渡す。
様々な武を扱える“贋作者”は、このゲームを知り盡くしているジュリーが適任だろう。
「コセ、私には?」
「え? 無いけど?」
ルイーサはもう“偽レギ”を持ってるし、そもそもめちゃくちゃ武多いし。
「……本當に無いのか?」
「じゃあ、使えるか判んないけど」
実化して渡したのは、アルファ・ドラコニアンを倒して手にれた“メダライズ・ブレイド”。
「噂のメダライズって奴か!」
「セットするサブ職業は、屬が一つは共通じゃないといけないからな。気を付けろよ」
そのため、メダライズシリーズによる最上級武は、最大でも三屬にしかならない。
「コトリ、拠點での指揮は任せる」
「私で良いんですか、コセさん!?」
「難しい判斷が求められるだろうからな。レリーフェ、サポートしてやってくれ」
「任せろ」
手持ちの“偽レギ”のほとんどを実化し、テーブルに並べておく。
結果的に、メルシュに渡していなくて良かった。
さて、後は……。
「ギオジィ!」
クレーレが食い気味で聲を掛けてき……。
「その姿……」
蠢く黒い鎧、“雄大なりし悪魔神の夢”をに纏っているクレーレ。
「どうやら私のユニークSSランクは、今回の制限に引っ掛からないみたいだよ」
ユニークスキルでありSSランクという、唯一無二のチート能力。さすが。
「三十分経ったら、私も外に出て良い?」
「うーん……コトリの判斷に従ってくれ。クレーレの能力は、攻めにも守りにも強いから」
攻める數を増やせば、今度は屋敷の防衛戦力が減ってしまう。
攻撃が最大の防になるかは狀況次第……何人を、誰を攻めに回すのか、慎重で繊細な狀況判斷が必要とされるだろう。
モモカ達をチラ見。
「できれば、二人を守ってしい」
「判ったよ、ギオジィ!」
笑顔で返事をしてくれた……良かった。
「でも――クエストが終わったら、ご褒ちょうだいね」
耳打ちしたあと、クレーレが逃げるように離れていく……どんどんませていくな、アイツ。
「皆、観測者が“SSランク解の首”なんて者を用意した以上、この街にSSランク持ちが最低でも一名は居るのは確実。自分達がSSランク持ちと當たる可能を忘れないように!」
「「「おう!」」」
やれるだけの事はやった。後は、狀況に臨機応変に対応するしかない。
★
『か、開始時刻だ! これより、突発クエスト・上級國民戦爭を開始する!』
あらかじめ小型コンソールで設定しておいた俺、ジュリー、ルイーサ、ユイ、チトセの五人がに包まれる。
「――ここは……」
だだっ広い道に、この【上級平和街】の中でも大きな建の並び……南の祭壇の反対側、教會區と住宅區の境……それも端の方か。
「なら、ここから住宅區に近付くプレーヤーを狙うかな」
俺達は“地球儀”による陣地取りのリスクを考えて狙わない方針だけれど、生き殘る気満々の奴らは、仲間と合流しつつ住宅區を目指すはず。
「それにしても……」
生き殘れるのは、基本的に五百人以下。
七百人を有する《ジャスティス教》は、全員が生き殘るためには陣地を五つ確保していち早く抜けるしかない。
逆に、他の連中は教會を狙うかもしれない。
あそこを落とせば全の三分の一のプレーヤーを始末できるうえに、住宅區と違って様々な勢力がりれる可能も低い。
「――夜鷹」
黒い鷹を指で呼び出す。
「プレーヤーか仲間を探してくれ」
『クォ!』
後は、余計な力を使わないように待機しておくか。
住宅區が騒がしくなって來たら、向こうに移する事も念頭に置いておこう。
「……ん?」
あの角に不安そうに立っている老婆、NPCか。
「珍しいな。突発クエストの時、NPCはだいたい消えるのに」
聲を掛けてみよう。
「どうしました?」
「直に、奴等が來る。お前さんかお前さんのチームメンバーが陣地を手にれたら、わしを陣地に避難させてくれんか?」
○老婆を、奪った陣地に避難させてあげますか?
YES NO
クエストのルール説明に無い要素が出て來たな。
「……まあ、良いか」
「ありがたや」
YESを選択すると、老婆がになって消える。
「陣地取りの要素に、想定外のメリットがありそうだな」
それにしても、奴等ってプレーヤーを差してるって考えて良いのか?
これまで通り、今回のクエストも何か裏がありそうだ。
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