《ダンジョン・ザ・チョイス》788.報のパズル
「三十分が経過したね」
小型コンソールで確認している限り、落者はまだ三名。
誰が死んだかは分からないけれど、死んだ人數くらいは判るらしい。
「コトリ姉、私ならいつでも參加オーケーだよ!」
やる気満々のクレーレだけど、どうしたもんかな。
「何を迷ってるんだい、コトリ?」
シューラさんに訊かれる。
「クエスト開始後、新しい機能が解されちゃってさ。転移先を、チームメンバーが契約した店に選べるようになったんだよね」
「三人、同じ場所に送れるのか?」
今度はレリーフェさん。
「人數や回數の制限は無いみたい。ただ、このクエストは今のところ、長期戦になりそうなんだよね~」
できるだけ攻め側になる人に負擔を掛けないように、それでいて効果的に運用しないと。
今はまだ、こっちから行を起こさせられるのはたった三人。
「事態にきが無い限り、このまま三十分待つ。その後は四人か五人を送り込んで、やって貰いたい事があるの」
クレーレに視線を送る。
「へ? もしかして、私を選んでくれるの!」
「クレーレの能力は、今回の私の作戦にピッタリだからね♪」
無・駄・骨・に・な・る・か・も・し・れ・な・い・け・れ・ど・、早めに確認しておいた方が良さそうだし。
「コトリ、その作戦に私も參加して良いですか?」
ケルフェも、コセさんの役に立ちたいって顔してるなー。
「ケルフェは待った。機力のある面子は、いざというときに臨機応変にかしたいから」
例えば、この屋敷が狙われた時。
「現在の屋敷の結界の耐久度は、990/1000」
「さっき攻撃してきた奴が居たが、その時より10回復してるな」
レリーフェさん、皆に聞こえるようによく通る聲で……。
「結界は時間で回復する。破壊されたあと復活可能なのかは判んないけど、0になる前に機力のあるメンバーを送り込んで救援に駆け付けてしい。てのが私の考え」
レリーフェさんが副指揮みたいになってるけれど、弓使いのレリーフェさんとシューラさんは元々屋敷から出す気は無い。
「というわけで、ケルフェ、マリナ、タマ、スゥーシャは遊撃に回って貰うから、いつでもけるようにしてて」
「あの、モモカちゃん達の傍に今タマちゃんとスゥーシャちゃんがいるから、二人は外して貰えませんか?」
ノゾミからの、不安げに出されたお願い。
モモカとバニラは今、地下のシェルターで遊んで貰っている。
「……うん、ノゾミさんもモモカ達の傍に居てあげて。ただし、三人のうちの一人は三十分ごとに顔を出して、その都度狀況を確認するように。いざという時は戦闘に參加して貰うから」
「は、はい、分かりました!」
さて、クレーレ以外の面子はどうするかな。
「コトリちゃん、このクエストは長期戦になりそうなのよね?」
サトミさんに尋ねられる。
「はい、そうですけど……」
「じゃあ、今のうちにお料理を作り置きしておかなくちゃ♪ メグミちゃん、リンピョンちゃん、手伝ってくれる?」
「了解です、サトミ様!」
「私、あんまり料理は得意じゃないんだが……」
「やっぱりこういう時は、おにぎりと漬に、お味噌よね~♪」
……サトミさんて凄え。絶対大だよ。
●●●
「寶箱……発見」
祭壇裏辺りで、クエストが始まってから出現した寶箱、二つ目を見付ける。
「……罠解除」
九本の槍が寶箱から正面に高速で生えてきて、消えた。
○“鞍替えの$金貨”を手にれました。
「なにこれ?」
周囲に意識を巡らせながら、ライブラリで確認。
「別のチームの人間に投げ付けると、その人間だけ別のチーム所屬になれるんだ」
一つにつき、寢返られるのは一人だけか。
「クエスト限定アイテム……所持してると、終了時に1000$に換金される……なんかイマイチ」
一人殺せば數千$は手にるであろうこのクエストで、1000$程度にしかならないとか。
「――“絡め取り”!!」
「――撃剣」
纏わり付こうとした鞭を打刀、“切毒の紫花により縁切られ”で発した“刀剣”で、打ち止める。
「チ! しくった」
コイツ、開店準備帰りに聲を掛けてきた金髪男。
「……なに?」
「よく見たら、黒髪人の後ろ歩いてたガキじゃねぇか。おい、ヤらせろよ。最近は同じばかりで飽きてんだよ」
直球なド下ネタ……下品すぎてキツい。
「お前みたいなガキは好みじゃねぇが、顔立ちはまあまあ良い。経験富な俺が相手してやっから」
「キモい、死ね」
「お前さ、俺はもう八年もこの世界で生きてんだぜ? ――オメーみたいなガキが勝てるわけねぇだろうが!!」
瞼の落ちるタイミングに合わせて一気に踏み込み――首を刎ねた。
「……へ? ……は? うそ……だろ…………」
下品な行為しかできない奴に興味ない。
「だと狙われやすいのか……“男化”」
がたいが良くなり、ちょっといつもと違うバランスに。
何度か剣を振って、微妙なズレをさっさと修正。
「……さっきのキモ男、弱いくせになんで一人で……」
殺した相手から手にれた裝備を確認。
「ああ……指や腕で召喚するタイプか」
どうりで、序盤から自信タップリに襲ってくるわけだ。
「“明化”」
再び姿を消し、街に潛む。
●●●
「クソ!」
「……ふむ」
何度かプレーヤーと遭遇したが、警戒しながら離れていくばかりだな。
「まあ、この狀況なら仲間との合流を優先するか」
むしろ、合流をはからない私達の方がおかしい。
「襲いに來てくれれば、気兼ねなく返り討ちにできるのに」
面識のない相手をこちらから殺しに行くのは、さすがに気が引ける。
子供の、男の子のNPCを発見。
「どうした、こんなところで?」
「騎士の姉ちゃん、もうすぐ群れが來るんだ! あんたかあんたのチームメンバーが陣地を手にれたら、俺の家族を陣地に避難させてくれよ! 外にいたら殺されちまう!」
群れに、外にいたら……か。
○男の子とその家族を、奪った陣地に避難させてあげますか?
YES NO
「陣地はまだ奪ってないはずだが……もうすぐ群れが來る……か」
察するに、モンスターが大挙してやってくるから、安全な場所を提供しろと。
「ルイーサさん?」
現れたのは、チトセ。
YESを選択したのち、彼に向き直る。
「もしかして、ルイーサさんもNPCを?」
「ああ、チトセもか? 群れが來るから、陣地に避難させてしいと頼まれたんだが」
「私も似たような事を言われました。群れではなく、黒いのが黃昏時にと言っていましたが」
黃昏時……つまり、夕方頃に黒い群れがやって來るのか?
「私とチトセが摑んだ報が同一のモンスターを指しているのなら……外に居るのは危険かもしれない」
「どうしますか?」
「……コセの判斷に逆らう事になるが、どこかの屋敷に攻め込んで、“地球儀”を破壊しよう」
いつもは居ないNPCの配置と、陣地を手にれるように促すメッセージ。
「幸い、チトセのSSランクと私の錬剣があれば、攻めも守りもこなせる。どうだろう?」
人數がないため、負擔は大きいが。
「私も、このまま當てもなく彷徨うより良いと思います。ただ……どこに攻め込みます?」
「――実を言うと、この前チトセを拘束しようとした奴等の拠點は摑んでいる」
「そうなんですか!?」
敵の所在を摑むため、フェルナンダとアオイが追跡して確かめていた。
「敵はレギオン、《子羊たちをでよう》の連中だ」
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