《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1830話 妖魔召士シギンの最後の抵抗
殿鬼のを乗っ取っていた煌阿だが、その殿鬼のはシギンとの戦闘で々に砕け散ってしまい、再び神の姿となった後、改めてこの場で神斗のを奪ってみせるのだった。
「やれやれ……。前の鬼人とは違い、神斗の奴は『魔』に理解を示していたけあって々厄介だな」
神斗ののままでそう獨り言ちた煌阿は、苦蟲を噛み潰したような表を浮かべた。
どうやら煌阿に乗っ取られる前の神斗は、煌阿の『呪いまじな』で『魔』の概念を封じられた上にけなくさせられていたが為に、抵抗が出來なかったようだが、煌阿に乗っ取られる事で『呪い』が解けたようで、その瞬間を見計らって『魔力』干渉領域の『過』を用いて、強引に神意識だけを失わせずに煌阿の神の裏側で同居するように滯在させる事を可能としたようであった。
つまり今の神斗のの支配権は間違いなく煌阿であるが、同時に自分のに何が行われているかを神斗自も認識が出來ている狀態にあるのだった。
神斗はまだ何が起きているかを正確に理解出來てはいないだろう。
あくまでいちかばちか自分が一番頼りにしている『過』を乗っ取られる寸前に無意識に発させただけに過ぎないと思われる。
しかし今の神斗の狀態こそが、先程の煌阿や七耶咫に乗り移ったシギンの時のような『神』と呼ばれる神を維持したままでを剝離させる『魔』の効力を持った狀態なのであった。
つまり本人が今の狀態がどのようなものなのかを自覚した時、この『魔』の技法に限っては煌阿やシギンの居る領域に到達したといえるだろう(もちろん今の神となっている神斗が、再び煌阿からを取り戻せた時に今の神となっている覚をしっかりと覚えていた時に限る話だが)。
「ふふっ、どうやらお前は他者から『魔』の技法を奪う事には優れているようだが、奪った後の扱い方は非常に雑なようだな。そうやって他者の力を奪う事に長けていても、の丈に合っていないお前自の末な『魔』の理解力では、いずれ扱いに困って手に負えなくなるだろう。大きすぎる力に呑まれて後悔するお前が今から楽しみだ」
神斗のを乗っ取った煌阿は、背後から聞こえてくるシギンの言葉に振り返ると薄く笑みを浮かべた。
「ククッ……、言ってろよ? お前がどんな言葉を吐こうが、俺には哀れな敗北者の戯言にしか聞こえぬわ」
「そうか? では遠慮をせずにもっと言わせてもらおうか。かつて俺はお前の『魔力』をじ取った時、その膨大な量にどれだけの『魔』の概念に対する理解が深いのかと恐れと呼べると関心を抱いたが、こうしてその側を知った今では、何も恐れる必要などなかったのだと斷言が出來るようになった。煌阿よ、お前に一つだけ忠告しておこう。今、この山にはお前如きではどうにも出來ない『存在』が最低でも三程存在している。その神斗のを乗っ取った事でお前はこの山を支配した気になっているのかもしれぬが、その存在達が居なくなるまでは気付かれぬようにで怯えて過ごしている事だな。萬が一にも見つかればお前はあっさりと消されてしまうぞ?」
――そのシギンの言葉は、當然に煌阿を心配しての発言ではない。
その忠告の言葉の真意と呼べるものは、煌阿という妖魔の格をある程度理解した上で、今シギンが出來る最大限の煌阿に対する抵抗する意志が孕んでいたのであった。
「ハッ! 何を言うかと思えば。馬鹿が……。負け惜しみもそこまでいけば大層なものだな人間。まぁ、確かに天狗共の縄張り付近にり込んできた連中の事は俺もある程度は把握している。に『結界』が施されていたせいで、どのような『魔』の力が使われているかなどは曖昧にしか伝わってこなかったが、それでもあの程度ならば何も問題はないな。俺に懸念を持たせようと一杯考えて口にしたのだろうが、それも無駄な事だぞ? 殘念だったな、卜部の筋の者よ」
(馬鹿はお前だ、煌阿。お前は彼らの力を把握したつもりかもしれぬが、それはあくまでの中でじた『魔力』程度の事に過ぎぬ。あの場には実際に近くに立って、その目で見てみなければ中の様子が分からない程の『結界』が張り巡らされていたのだ。あの中で黒羽を生やしていた青年が行った『魔』の技法や『魔』の概念領域を知れば、今のように余裕を見せてはいられなかった筈だ)
この時にシギンが考えた通り、九尾の『王琳』や七尾の『七耶咫』も実際に現場に來た時にようやく、山の頂に居た頃とはあまりにも違いすぎる『魔』の力に気付く事が出來ていた。
あの場所にはシギンや卜部が用いる『理』とは違うが、それでも明らかにこの世界のものとは違う『理』と『結界』が用いられていた。それもシギン程の『魔』の理解者が、決して侮れないとじられる程の『魔』の概念の力が用いられていたのである。
それは天上界の中でも最上位とされている『力の魔神』が張った『聖域結界』なのだが、確かにその魔神の結界を外側からしっかりと中の魔力そのものを知出來た點については、煌阿もとても優れているといえるが、それでもあの大魔王ソフィの『魔』の力が結界外に齎したものは、所詮末流と呼べるものに過ぎない。
あの『帝楽智ていらくち』を倒した直後、結界の側からこの山全域に放たれた天狗族を絶滅させるだけの『魔力』をしっかりと見ていたならば、今のシギンの言葉に対して、平然と言葉を返すことなど出來よう筈がない。
――だからこそ、シギンは更なる言葉を煌阿に放つ。
「煌阿よ。別に信じなくても構わないが、よく覚えておけよ。彼らに刃向かえばそお前は今度こそ『封印』などという生易しいものではなく、この世から消滅させられるだろうさ。それは卜部兵衛を祖先に持つ俺が、実際に直接お前と手を合わせた俺だからこそ、斷言が出來る言葉だという事をな」
ぴしゃりと言い放ったシギンの目を見た煌阿は、先程まで浮かべていた笑みを掻き消すのだった。
その目は冗談や負け惜しみで言っているのではなく、本當に本音でそう口にしていると理解した為であった。
「面白いじゃないか、卜部の筋よ。その挑発にあえて乗ってやろう。お前には俺に近くで結末を見せてやるから、その時を楽しみに待っているがいい」
その言葉を最後に煌阿は『空間魔法』を展開し始める。どうやら、あのに『結界』ごとシギンを転送させた様子であった。
その場に神斗のを乗っ取った煌阿だけになると、彼は何かを考え始めるのだった。
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