《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第1841話 大魔王達はシギンの力に興味を抱く
「そのシギン殿とやらは我が天狗共と戦っている時まではまだ近くに居たと言っていたな?」
場の空気がしだけ和らぎ始めたのを見計らい、ソフィは先程説明を行っていたウガマに対して口を開いた。
「ああ……。アンタが天狗族とドンパチやり始めてしの間は、シギン殿も俺達と見ていたんだ。それは間違いないぞ」
「お主、そのシギン殿は人間で間違いないのだろうか?」
「ん? シギン殿は普通の人間で間違いないぞ」
ウガマはソフィの質問の意図がよく分からなかったが、シギンが人間であることは間違いない為に頷いて見せるのだった。
「この妖魔山とやらを実際に登ったとしての想だが、相當に道が悪く整備などもされてはいない。それこそ空でも飛んで行かねば相當に登るのにも時間が掛かるとみたのだ。我達が天狗共の縄張りからここへ移する距離を考えれば、空を飛んでも行かぬ限りは、まだ山の頂には辿り著いていないのではないか?」
ようやくソフィの言いたい事を理解したウガマだった。
「ああ、いや。確かにシギン殿も人間で間違いないし、天狗達のように空を飛べるわけではないのだが、あの方は、えっと、そうだな、何て言ったらいいのだろうな……」
「シギン様はソフィ殿の使う『魔法』のように、その場から一瞬のにとある『魔』の技法を使って、任意に行きたい場所へと移を可能とするらしいのだ」
言葉に窮したウガマの代わりに、それまで黙って話を聞いていたエイジが口を挾んでくるのだった。
「ほう……? この世界で我達の使う『理ことわり』や『魔法』のようなものなどは見たことがないが、シギン殿はそれを使用できるという事なのだろうか」
「ああ。小生の師がサイヨウ様だという事はソフィ殿にも申したと思うが、シギン様はサイヨウ様の『魔』の師でもあるのだがな、小生がサイヨウ様から聞かされた話では、シギン様は『空間魔法』という小生達妖魔召士が使う『捉』とは掛け離れた『魔』の技法を使う事を可能とするのだ。もちろんソフィ殿の言う『理』と同じものが使われているかどうまでは定かではないが」
「オイ、ちょっと待てよエイジ。俺やソフィが『魔法』を使った後、お前は『理』や『魔法』というもんを観た事がないとか言ってなかったか?」
そしてエイジが話を始めると、こちらも今まで黙っていたヌーがエイジに尋ね始めた。
「うむ。小生は間違った事は言っていないぞ。あくまで小生はサイヨウ様から聞いたことがあるだけだ。実際にシギン様が使っているところを近くで見ていたとすれば、ここに居るゲンロクくらいだろう」
そう言ってエイジは、未だに隣で険しい表を浮かべながらシギンの事を考えていたゲンロクの方に視線を向けるのだった。
「まぁ……、確かに直接シギン様の編み出した『空間魔法』を験した者は、もうこのワシくらいしか殘っておらぬじゃろうが、それがどんなものかを説明しろと言われても無理じゃぞ? そもそもシギン様の『魔』の技法は『捉』一つとってもワシら妖魔召士がその捉の効果を知っているからこそ、何が使われたのかと理解に及ぶ事が出來るくらいで、実際に目の前で使われてみると、あまりにも速すぎて何をしたのかは瞬時には分からぬ程なのだ。馴染みある『捉』ですらそうだというのに、シギン様が編み出した『空間魔法』は、実際に説明しろと言われて出來ると思うか?」
どうやらゲンロクの口振りを見るに、シギンという妖魔召士は相當の『魔』の概念の理解者で間違いないようだとソフィやヌーも理解したようである。
「ふむ。つまりサイヨウが『空間魔法』だと言っているだけで、エイジ殿やゲンロク殿はこの世界に『理』や『魔法』があるというのを明確に斷言するわけではないという事か。ではゲンロク殿、実際にそのシギン殿の『魔』の技法とやらを験した時、一どのような結果を齎したのかは覚えているのだろうか?」
「そうじゃな……。ワシがシギン様の『魔』の技法を験した時の事じゃが、その瞬間の事だけは今もよく覚えておる。一どういう原理なのかは説明は出來ぬが、何やらシギン様が小さく呟いたかと思うと、シギン様のを突然『魔力』が覆われてそれが一瞬金に輝いたように見えたんじゃ。そしてあまりの眩さに目を閉じて再び開く頃にはワシら全員が麓にまで戻されていたんじゃ。どうやったのかは分からぬが、妖魔山の調査に赴いた全員が一瞬のにじゃぞ……?」
ゲンロクは先程までとは違ったをわにしながら、興じりにそう説明するのだった。
そのゲンロクの言葉を聞いたソフィとヌーは、互いに視線をわし合うと同時に頷き合った。
「金のオーラか。どうやら、シギン殿は『金の現者』で間違いないな」
「だろうな……。それにオーラより先に『魔力』を覆わせていたのだとしたら、まず間違いなく『発羅列』を飛ばした無詠唱からの発現だろうな。それがこの世界の『理ことわり』なのか、はたまた俺達の世界にあるような『魔力』の纏わせ方なのかまでは分からねぇが、その野郎が理ことわり』から『魔法』を使った事は間違いねぇ」
「うむ。それに効力としては『高等移呪文アポイント』に近いかもしれぬな。ゲンロク殿、何度かお主の里へ飛ぶ時に我は『高等移呪文アポイント』を使ったと思うが、空を飛翔したかどうかは分からぬか? 浮遊する覚や、そういったモノを僅かにでもじられていたかどうかでよいのだが」
「いや、ワシは浮遊などは一切じられなかった。もう気が付けば麓に立っていたんじゃ。他の『四天王』の方々もワシと同様に驚いてはいたが、誰も空を飛んだ等を口にしておらぬし、浮遊がどうとかそういった言葉を誰からも聞いた事がないな……」
再びソフィとヌーは顔を見合わせるのだった。
「世界に干渉する『力』に間違いないと思うが、直接移を行う『時魔法タイム・マジック』の類だろうか」
「馬鹿言ってんじゃねぇぞソフィ。そんな『魔法』はフルーフの野郎が編み出した『概念跳躍アルム・ノーティア』以外に聞いたことがねぇよ!」
「いや、それは我らが知らぬだけではないのか? そもそもエルシスのように無から『理』を自ら生み出せる者であれば、いくらでも『新魔法』を編み出せる可能はあるのだ。それはお主も分かるだろう?」
「ちっ……!」
ソフィの言葉にいくつか反論の言葉が浮かんだが、直ぐにその浮かんだ反論材料が消えていった。
――何故なら大賢者エルシスの事をよく知らないヌーではあるが、彼はミラによって洗脳狀態にある大魔王フルーフからいくつも『新魔法』を編み出させて自分のモノにしてきたからである。
そしてそのいくつかのフルーフが編み出した新魔法の中から更に、ヌー自が作り変えた『新魔法』と呼べる代がある事こそが、反論出來ないかぬ証拠であった。
……
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