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一瞬だけ屋上を包み込み、京香達のを炙った炎柱はプスプスと京香の頭から煙を出す結果だけを殘した。

京香が放った鉄球がパイロキネシストの全へと撃ち込まれ、そのの一つが額の蘇生符を捉え、その表面に罅をれたのだ。

蘇生符の破壊には至らなかった。手加減をした訳ではない。その筈だと京香は思っている。

ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン！

パイロキネシストがフェンスへと叩き付けられた。フェンスはのの形に凹み、そのからダランと力を抜ける。

妹を守ろうとしたのだろう。パイロキネシストは鉄球が當たる直前テレパシストのを押し飛ばした。鉄球は全て彼のへ吸い込まれ、全の骨が砕けるという結果を殘したのだ。

人の構造上運に必要な骨を必要以上に砕いた手応えが京香にはあった。

罅のった蘇生符は能を歪め、パイロキネシストのがキョンシーと死の二つを行き來する。

「ぐっ……がっ」

瞬きの意識の中でパイロキネシストはまだ戦おうとしていた。

「おねえちゃん」

未だ外的損傷の無いテレパシストが立ち上がり、姉へと駆け寄る。

姉妹のキョンシーの距離は再び零とり、妹の手が姉の頬にれた。

その景を京香は黙って見つめ、自の下へ戻って來た鉄球を発臺たる右ピストルの周囲で回す。

京香達の勝ちだった。何をどうやっても前方の姉妹のキョンシー達に勝ち目は無い。

彼達の敗北は決定し、撲滅は約束されていた。

「……ねえ、テレパシスト、聞きたい事があるの」

質問にテレパシストは首だけを向けた。ずっと聞きたかった事が京香にはあった。

京香はほとんど無意識に霊幻へを寄らせた。

――それは駄目ね。

すぐに京香は霊幻とのの距離を元に戻す。

今のは甘えだ。この場では唾棄すべきだ。

京香は質問を口にする。

「何で誰(・)も(・)殺(・)さ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)の(・)？」

この二がシカバネ町に來て決して短くない時間が経ち、なくない戦闘があった。

にも関わらず、ただの一人でさえ、このキョンシー達は殺してなかった。

それは驚異的な事だった。意識しなければ不可能で、意識していても難しい。パイロキネシスを発現しているなら尚更だ。

テレパシストはすぐには答えなかった。

言葉を選んでいる様子は無い。瞳は無機質的で、京香では何のも読み取れない。

ゆっくりとテレパシストは言葉を紡いだ。

「おねえちゃんが、駄目だって、思っていたから」

「それだけ？」

テレパシストは首を戻し、パイロキネシストを見つめた。

「私は、どうでも良い。おねえちゃんさえ居れば、他の全部がどうでも良い」

「そう」

「殺しても、壊しても、構わなかった」

「……そう」

京香は眼を細めた。テレパシストの言葉は本當だろう。耳馴染みの良い言葉では無い。

――アンタの執著は、それ、か。

このキョンシー達は二人きりの世界をんでいた。

ただ、妹のしいと姉が與えたいがほんのしズレていたのだ。

「ねえ、最後に、本當に最後に言うわ」

返答が分かっている問いを京香は聞く。

「投降しなさい。壊れないようにしてあげるから」

テレパシストはゆっくりと首を橫に振った。

「……あなたは、キョンシーが、好きな人」

「ええ。きっとアタシが聞く事もあんたには分かっていたんでしょうね」

テレパシストは姉のを抱き締めた。

「おねえちゃん、行こう」

直後、パイロキネシストがガァン！　とフェンスへ折れた腕を叩きつけた。

戦闘の余波で歪んでいたフェンスの金はパイロキネシストが與えた最後の衝撃で外れ、グラリとフェンスが屋上の外へと倒れる。

「待っ――」

京香は手をばした。だが、遅い。

姉妹のキョンシー達は屋上より落下した！

その時、京香のの中で〝何か〟が撲滅した。

「追いかけろ霊幻！」

「ああ！」

バチバチバチバチバチバチ！　京香は紫電を纏った霊幻と共に全力で姉妹の下へと跳ぶ！

「ごめん邪魔！」

シャルロットを捨て、京香は砂鉄と鉄球だけを周囲に纏わせた。

そして、倒れたフェンスから躊躇う事無く京香はダイブする！

下方、三メートル先に、落下し、抱き締め合う姉妹の姿が見えた。

自由落下同士では追い付けない！

「アクティブマグネットォ！」

ＰＳＩ名を告げ、京香は世界へと命令する。

「アタシを撃ち落とせ！」

ドド、ドドドドドド！

京香はでき得る限りの磁力を用いて、落下する自分の背へ鉄球を撃ち落としていく！

バキ、ボキ、バキボキバキ！　肋骨が砕ける。肩が砕ける。背骨以外の全ての部分へ京香は鉄球を衝突させた。

「ッア！」

グン、グングングン！　鉄球がぶつかる度、京香のが加速し、姉妹のキョンシー達との距離がまっていく。

二メートル、一メートル！

地面への落下まで後十メートル！

「捕まえろォ！」

京香は無我夢中で砂鉄へ命じる。

ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン！　京香の左腕から放線狀の砂鉄の網が広がり、姉妹へとびる！

「摑め！」

砂鉄の網が姉妹達を摑んだ。

「引っ張れ！」

ギュン！　鉄の網へ一気に磁力を流し、京香は姉妹達を引っ張り上げた。

ガキッ！　京香の左肩が外れた。

たが、そのが姉妹のキョンシー達に屆く！

落下まで後八メートル！

「止めろォ！」

次に京香に求められるのは減速だ。

網全で自とキョンシー達の三人分を包み、鉄球も全部使ってを研究棟外壁へと押し付ける。外壁へ磁場をり付ける余裕は無い。と空気抵抗だけが減速力だ。

ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジ！

火花が舞う！　首に頬に火花が落ちて、痛みが京香の意識を保たせた。

重力との力比べは、ギリギリで減速という解を出した！

だが、勢いは未だ強い。

京香の蘇生符が銀に輝く！

「止まれええええええええええええええええええええええええええええええええええええ！」

砂鉄の溫度がで急速に上昇し、酸化鉄へと変わっていく！

ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ！

背中が焼ける音を京香は無視した。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！」

相棒の笑い聲が上方より響く。離れない様に勅令したからだろう。霊幻も京香を追って落下したのだ！

――ギリギリで追いつけないか！

紫電を使って霊幻も加速して落下している。だが、このままでは京香達の落下が先だ。

「アタシ達を助けろォ！」

知った事か。京香は相棒に限界を超えるよう命令を出した。

「任せろ！　ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！」

ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジ！

バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ！

火花と紫電の音が京香の鼓を痛めつける。

霊幻との距離は四メートル！

落下まで後六メートル！

「止まれ止まれ止まれ止まれ！」

霊幻との距離は二メートル！

落下まで後三メートル！

――！

京香の頭に稲妻の如き一瞬の閃きが落ちた。

ギリギリで京香は右手を上に向け、砂鉄の一部を霊幻へとばす！

「スポット！」

「了解！」

瞬間、霊幻の紫電が京香のばした避雷針へと落ちる。

ビリビリビリビリビリビビリビリビリビビリビリビリビビリビリ！

磁場を制し、ほとんどの電流を電気伝導度の高い鉄へと流した。

京香のへ通る電流量は微量だ。それでもの自由は消失する。京香は脳だけをギリギリでかしてマグネトロキネシスを制する。

砂鉄の避雷針はスポットとなり、クーロン引力によって霊幻のが更に加速した！

「ハハハハハハハ！　吾輩はお前達を助けよう！」

減速する京香達。加速する霊幻。迫り來る地面。

霊幻のが、額の蘇生符が一際強く発する！

「止まれええええええええええええええええええええええ！」

京香の蘇生符も更に強く輝いた！

「何でかって!?」

紫と銀のが差する！

落下まで後一メートル！

「スーパーヒーローだからさ！」

霊幻の大きな腕が京香達を抱き締めたのと、彼達が地面へと落下したのは同時だった。