《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》57

しばらくリーフィアがリーヴォをでていると、クーリアが口を開いた。

「で、用件は?」

「………會いたかったから?」

「疑問になってる時點で違うでしょうが……勉強?」

「…うん。悪いんだけど、また教えて貰ってもいい?」

実は、クーリアはたまにリーフィアの勉強を手伝っていた。近な人として兄2人がいるのだからそちらに聞けばいいものだが、ある理由から、リーフィアはクーリアに教えて貰っているのだ。

「それくらい何回でも大丈夫だよ。じゃあわたしの部屋に行こっか」

クーリアとリーフィアは、ともに2階のクーリアの部屋へとっていった。

そして狹い部屋に2人隣同士で座り、狹いテーブルの上に教科書とノートを広げる。

「ここなんだけど……」

「んー?あぁ、これはね……」

勉強の方法としては、リーフィアが分からないところを尋ねて、それをクーリアが教えるといういたって単純なもの。だが、リーフィアはそれだけで十分だった。クーリアの教え方が上手いというのもあるが、リーフィアの頭の回転が速いためだ。そのためすぐに理解する。

「ふぅ…なるほど。ありがとう。お姉ちゃん」

「いいよこれくらい。でも、毎回お兄ちゃんに聞いた方が早くない?」

「そうだけど……わたしがやってるの、これだし」

リーフィアがテーブルの上に広がっていた教科書を持ち上げ、その表紙をクーリアへと向ける。そこには、確かに高(・)等(・)部(・)2(・)年(・)と書いてあった。

今リーフィアが通っているのは、中(・)等(・)部(・)3(・)年(・)。つまり、かなり先の容なのだ。

「それくらい気にしないと思うけどねぇ」

「だって…お姉ちゃんだって隠してるじゃない」

それを言われると、クーリアは反論出來なかった。もう既に全ての學習を、獨學で理解していることを隠しているからだ。

「まぁ、リーフがいいなら、いいけど」

「やった!」

実の所、リーフィアはクーリアに會う口実を作るために隠していたりするのだが……それをクーリアが知ることは無かった。

「ゴホッゴホッ!」

「お、お姉ちゃん、大丈夫?」

突然ハンカチを口に當ててクーリアが咳き込む。それをリーフィアが心配そうに見つめた。

「……うん、大丈夫」

クーリアはそう言い、ハ(・)ン(・)カ(・)チ(・)の(・)表(・)面(・)が(・)見(・)え(・)な(・)い(・)よ(・)う(・)ポケットへとしまった。

「なら、いいけど……あ、そうだ」

ゴソゴソとリーフィアが持ってきていた鞄をあさる。

「あ、あった。これ、使って?」

リーフィアが手渡してきたのは、1本の茶い小瓶だった。中には何かしらのらしきものがっている。

「これは?」

「咳止め。前來た時も咳き込んでたでしょ?だから持ってきたの」

「……ありがとう。大事に使うね」

クーリアは小瓶をけ取り、部屋のタンスへとしまった。

「寢る前にスプーン1杯分を目安に飲んでね」

「うん。ありがとう」

「いいよ、これくらい。あ、じゃあもう行くね」

時計をみて、リーフィアが帰る支度を始める。

「またね」

「うん……といっても、またすぐ會えそうだけど」

「うん?」

「なんでもないよ。じゃあね!」

そう言って、リーフィアは帰って行った。

リーフィアのことを外まで見送ったクーリアは、その後ろ姿が見えなくなるまで眺めた後、自の部屋へと戻り、タンスから、リーフィアから貰った小瓶を取り出した。

「咳止め、ねぇ…」

クーリアはその小瓶をしばらく眺めた後(のち)……その中を捨てた。

「これはけ取れないや……ごめんね」

まるで思わずといった様子で口から出た小さな謝罪は、靜かな部屋に消え去っていった……

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