《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》ローカルカレンシー
ヘスティアはコウに話したのと同じ容を三人に伝え終えた。
「地殻津波、ブラックホールによって覚醒したヘスティア。そしてストーンズの侵攻をけている現狀に気付き、パイロクロア大陸の慘狀、孤児や避難民保護のためお金(ミナ)が必要だったということかな」
「三星そのものがこんな非常事態になっていると思わず。正直な話リュビアに関しては関わりたくないですね」
アシアのエメはヘスティアの説明を反芻した。
彼の狙いは理解する。しかし、その手法はあまりにも遠回りではないか、と。
「地獄の沙汰も金次第。人間が生活水準を落とす時。それは強制的な環境変化に伴うもの。それこそ長引く天災や戦爭などでしょうね」
ヘスティアはため息をついた。ビジョンでもため息ぐらいするのだ。
神の名を冠する超AIといえど、爭いを無くすこともできなければ、すべての人類を幸福にすることなどもできないのだ。
超AIの役割はネメシス星系の運営だ。そのためなら邪魔する人間の排除を試みる超AIとているだろう。
「かのギリシャ神話十二神級の超AIならもっととんでもないスケールで何か出來そうな気もするのですが」
フユキが當然の疑問を口にする。
「それはないですよー。超AIは基本、モチーフにしたギリシャ神話の神々に縛られます。その権能もです。とくに逸話がないヘスティアなんて何もできないのですよー」
「相當怒ってらっしゃるようですね。コウには再教育を施します」
「私からも一言いっておくね……」
ヘスティアから延々と恨み言を聞かされた二人が、約束した。言葉にしたのではない。
現在ヘスティアはエメとフユキ基準で會話しているが、その裏では高速通信による怨嗟の聲ともいうべき恨み言を延々聞かされ――信していた二人だった。
「そこはお願いしますね。――オンパロスストーンは知っていてヘスティアを知らないとか偏っているどころじゃありません。ちゃっかりオーディンは知ってるのに!」
ひとしきり怒りを二人にぶつけたあと、ヘスティアは気が済んだのか話題を変える。
「ではI908要塞エリアのオープニングセレモニーの話をしましょう」
「事業計畫の提出ありがとうございます。ざっと拝見させていただきました。――表の闘技場であるアンフィシアター開催。同時に闇試合によるパライストラ決勝リーグ開催。夜にはアンフィシアターでフェアリー・ブルーのコンサートもあり、リゾート宣伝用も兼ねたフェアリー・ブルーグラビア寫真集記念発売一冊1ミナ。よくこれだけのイベントを同時に計畫しましたね」
「ニソスがいなければ不可能でしたね。コウもほいほいとやってきましたし!」
「実質人質だったよね?」
アシアのエメは容赦なく切り込む。
」
「さらに開催期間のスポンサー企業募集と、イベントの合間に新型シルエットの展示。アンフィシアターとパライストラの戦闘データ有償販売まで。どれだけの富を集めたいのですか」
「いやいや。まだ想定段階です。人が來るかはやってみないとわかりません。こういう時エイレネちゃんがくると力になってくれそうなのですが、あの子は費用よりはサプライズを優先しそうで。會ったことはないのですが」
「その通りの格ですよ」
エイレネを姉であるアストライアが斷じる。
「現在I908要塞エリアで提供している兵販売権を、トライレーム及びアルゴナウタイに解放するのですね。――兵関稅は高いですね。そして獨自通貨構想ですか。地域通貨(ローカルカレンシー)の導とは」
「いよいよネメシス星系に稅金の概念が投されるのね」
アシアが遠い目で呟いた。ソピアーが抱いた理想の終焉を見た気がしたのだ。
超AIたちがいわゆる仕事を代行し、需外需を包する無人運行社會。仕事という雑務から解放された人間たちは文化や蕓、そして未知の分野への開拓に専念する。
しかし現実は超AIが由來たるギリシャ神話に抗えず抗爭し、ストーンズという神の恒久化である。カレイドリトスは人間の進化を停止させるものである。
「星間戦爭時代はやむを得ないとはいえソピアーが各勢力に資金供給していましたし。オケアノスはその轍は踏みませんよ。石(あれ)の半神半人が人類かどうかの話はさておき、人類同士の戦闘までは、オケアノスは面倒をみてくれませんからね」
ヘスティアはこの點に関してはとくに意見はないらしい。星間戦爭は一切関與していないからだ。
「私がいた日本でも無稅國家を志す理念はありました。収益分配國家構想ですね。コウ君や私がいた國でも有名な実業家が提唱したのです。遠い未來で実現していたのですね」
「ネメシス星系の住人は無知、いえ無関心が過ぎます。無関心でいられたのです。関稅もそうですが、平和を維持するために支払うべきものがあると知ってもよい頃合いでしょう。経済観念が未すぎるのです。I908要塞エリア以外に獨自通貨を考えている組織はいないでしょう。しかし今後は違います。――だから私はI908要塞エリアの獨自通貨《ローカルカレンシー》の発行を目指します」
「獨自通貨か。思いきったことをするね」
アシアがその発想の可能を探る。
オケアノスが管理しているミナはとくに問題はないはずだ。
「本來通貨とはその価値を國家や機関が保証するもの。金本位制なら、貴金屬の金が。仮想通貨なら発行額に応じた現金を保有する必要があります。ではこの場所はヘスティアが保証するということですか」
「はい。主にアンフィシアター関連の賃貸業や副次産業で徐々に外貨を増やし、獨自通貨を流通させます」
「この都市だけの地下経済用通貨発行なのかな?」
「I908要塞エリア外において価値があるようなものではありません」
「今でも々換の闇市場はありましたが。アンダーグラウンドな取り引きもI908要塞エリアに殺到するかもしれないですね。――いや、それが狙いですか!」
「ご明察!」
フユキの推理にヘスティアはにっこり笑って肯定する。
「あなたがたトライレームもL451防衛ドームに似たようなことは命じたでしょう。資金、流。そして人材。大きな流れを作るためには必須の要素です」
L451防衛ドームを國家にしようと言い出したトライレーム。その運営はサポートするが、やはり資金や経済などの概念は避けて通れない。
「星アシアには経済に関する概念をさらに浸させないと。転移者の皆様はさほど抵抗はないと思いますが、アシア人は違いますから。オケアノスと渉してレート設定。せめてI908要塞エリアは自給自足の社會を目指すのです、私はこれをアゴラと名付けました。古代ギリシャによる、集會と天のための広場を意味します」
「新たな経済制の構築ならぬ概念の普及ですか。概念はアシア人もしっていると思うんですが、アシア人の獨自通貨や市場概念への抵抗は大きいでしょうね」
フユキが苦笑してその意見を肯定する。転移者は地球から。日本のように中負擔中福祉の國もあれば、米國のように福祉は自己責任であり高額な國も。北歐のように高負擔高福祉、様々な國家がある。
UAEにおける一部國家やブルネイのように資源國ならば所得に対する無稅の國家は存在していた。
「ええ。ではまずアゴラの概念をお話ししましょう」
ヘスティアの雰囲気が変わる。
彼の狙い。それが今から語られるということをその場にいる者は察した。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
今回はローカルカレンシー。ソフトカレンシーともいうそうです。ネメシス星系における経済の話に踏み込みました。
東京訪問で々加筆修正を加えました。
以前にも記載しましたが、スタートレックなど冒険活劇系のSFは生産と収益で労働から解放されている収益分配國家である前提が多いのです。
日本の実業家では松下幸之助氏が提唱していましたね。その教えをけた方が消費稅10%とはゲフン…
BIとは違い、あれは現金給付をして自主労働、労力にみあった報酬制度ではあり二種類あります。健康福祉自己責任型(保険が利かない分むしろ國家予算にはプラス)、健康福祉公共型(高負擔高福祉の理想系だけど富めるものは配分側に回ります)とはまた別の話です。
ネメシス星系は管理する側の超AIが通貨を必要としないので富む必要も殘すべき子孫への財産もないので立します。
次回はローカルカレンシーを導するヘスティアの真意が明らかに!
日本だとニコニコ共和國が獨自通貨発行! ヘスティアの恨み言はレ○EやG○Oの背景小文字みたいな6ドットびっしりレポート! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。
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