《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第71話 決定事項
暫く歩きながら神眼でお母様達の様子をジッと見ていたら突然ローゼさんが何か考えこみ、そのあとすぐにバッと音が出そうなほどの勢いで立ち上がる。
そしてあろう事かこちらに凄い勢いで走ってくる。
(ヤバイヤバイ!と、とにかく隠れないと)
と、なんか険悪な雰囲気をじ、なんとなく逃げ隠れる。
だがその後すぐにお母様が後を追い、レベル差だろう速さで追いついた。
俺は、近くの曲がり角でを潛めながら話を聞く。
すると、お母様が大きい聲を出しながら、
「何をするつもりなの!?」
と言っているのが聞こえた。
何をそんな怒っているのだろうか?
すると、ローゼさんがそれほど大きくもないのによく通る聲で、
「いる。英雄級の才能を持つ人が。彼なら…」
と言っているのが聞こえた。
(え?誰の事だ?あ、いや俺か。
俺だよな?)
と思っていたらすぐにお母様が答えを教えてくれた。
「ダメよ!!レインは絶対に戦爭にはいかせないわ!!もうあの子はこの戦爭に関らせないと決めたの!」
(やっぱり俺か……。というか戦爭なんてもう行かないよ?もうコリゴリです。當分の間は遠慮させていただきたい)
というかもう一生なくていい、と心の中で追加していたら、
「彼でないとこの狀況は打開できない。なら頼むべき」
「ダメよ。もうあの子が子供のうちに戦爭に関らせることはさせない!」
と聞こえてきて、そのすぐ後間髪れずにローゼさんが今までに見た事がないような顔で、
「離して。私にはいかなければならないところがある」
と警告した。だがお母様も負けないくらい真剣に、
「離さない。あなたをレインのところに行かせるわけにはいかない」
と、斷言した。
(お母様……、よくわからんが取り敢えずローゼさんが俺を戦爭に行かせたがっているというのはわかった。父親でも戦爭に參加したのかな?
うーん、どうしようか……。
ローゼさんとお母様には今後も仲良くやって頂きたい。だからと言って俺にだって出來ることと出來ないことがあるぜ)
と俺が思いにふけっている最中も神眼で見続けていたら、シビレを切らしたローゼさんが魔法を詠唱しようとし出した。
(いやいやいや待て待て待て!それはいかんぞ!!)
と慌ててそれを止めにる。
「待ってください!」
という、べたなことしか言えなかった。
ローゼさんが興しているみたいなのでゆっくり歩きながら、お母様達の方に向かう。
何時でも防魔法を放てるように魔力を準備しておく。
「ローゼさん、何があったか知りませんが魔法はいけませんよ」
と諭す様に言う。
ローゼさんは俺の突然の出現に驚き、そのすぐ後、自分のした事に気付き手を下げた。
「レイン……」
とお母様が俺の名を呼ぶ。
「お母様、大丈夫ですか?出産して間も無いのですからそんなに興するのはによくありませんよ?」
予想以上に落ち著いていた。
冷靜に対処しているように見える?
いえ、足ガクブルです。
喧嘩の仲裁を子供にやらせないでしい。
「私は大丈夫よ。貴方は自分の部屋に戻っていなさい」
と、お母様に言われる。
戻るわけがない。
「戻りませんよ。今の狀況を見てしまうと特に」
「いいから戻りなさい!!」
とお母様は突然怒鳴り聲を上げて俺を部屋に戻そうとする。
チビりそうになりながらも、はっきりと言う。
「戻りません!戻りませんよ。僕はこの狀況に納得するまでは帰りません」
するとお母様も落ち著いたようで、
「怒鳴ってごめんなさいね。
そうね。貴方はそういう子よね。だけどこれは私達大人の問題よ。
子供が関わるような話ではないの。
わかるでしょ?わかったのなら部屋に戻りなさい」
と優しく言ってきた。
それでもここではいそうですね、とはならない。
ローゼさんのあの焦りようを無視する訳にはいかない。
取り敢えず話を聞いてからじゃないと戻れない。
「お母様、普段はあまり話さないローゼさんがあれ程真剣になっているのですよ?それを蔑ろには出來ませんよ。
僕はローゼさんがあんな真剣に話すのなんてお父様の、こと、くらいの……!!??」
と、バッとお母様の方を見る。
すると、悲しそうな顔で目を伏せる。
俺は當然混している。
「え?!いや、え?!な、なんでですか?
ルドガー將軍は?それにピノルド將軍という人が次に名前が上がるはずですよ?
苦戦しているのですか?
プリタリア様がいるのに?
それに、そもそもこの國の法律でお父様は行かなくても良いことになっているはずですよ?」
と思いついた限りの質問が口から出る。
聞いても、お母様は沈黙している。
「お母様!答えてください!お父様が戦爭に行くのですか!?」
なおも沈黙しているお母様に詰め寄ると代わりに口を開いたのはローゼさんだった。
「そう。ロンドが戦爭に行くことになった」
「ローゼ!やめなさい!」
とぶお母様にローゼさんは落ち著いた様子で、
「ここまで來たのならもう話すべき」
と言って俺の方に向き直り、
「先陣は壊走した。ルドガー將軍は戦死して、プリタリア様も重傷。
戦時復帰は無理。もうロンド以外に將軍は務まらない」
と、矢継ぎ早に短文を述べてくる。
それでも要所は言っているので理解はした。
「それで僕が行く理由は?」
と、単刀直に聞く。
それに対してローゼは淡々と答えてくる。
「帝國の準英雄は貴方じゃないと止められない」
なるほど……。
なら、前言撤回だな。
俺が行かない訳にはいか……。
「もうやめて!!」
戦爭に行く決意をしようとした俺の言葉を遮ったのはお母様の悲痛なびだった。
そして俺を抱きしめて
「いいの!貴方は戦爭に行かなくていいのよ!」
といった。
「でも、でも、お母様、お父様が……」
「いいのよ!ロンドならなんとかしてくれるわ」
と言うお母様に対してローゼは
「ロンドの能力ではレベル8魔法使いに対抗できない」
「貴方に彼の何がわかるっていうのよ!!教室にずっと閉じこもって本を読んでいた貴に!」
「知ってる!ずっと…ずっと見てたから。彼の強さは私も知っている。
だから、わかる。彼では準英雄には勝てないって」
と過去を持ち出すお母様にローゼさんはいつもより大きな聲でハッキリと言い切った。
「彼ならなんとかなるかもしれないじゃない!」
「それでもしロンドが死んだらどうするの!」
「そうならないようにするのが私達大人の役目でしょう?!それをこの子に押し付けないで頂戴!」
「私がなんとかできるならそうする!だけど、だけど…私じゃロンドを助けられない。
レインじゃないと…」
ローゼさんは最後は泣きそうな顔でそう告げた。聲は掠れ、は何かを堪える様に震えている。
もうレインを戦爭に行かせたくないソフィアとプリタリアが負傷した今、準英雄級のレベル8魔法使いに唯一対抗できるレインにロンドを守ってしいローゼ。
(どちらも間違っちゃいない。
お母様の意見もローゼさんの意見もわかる。
だけど…)
例えこの話し合いがどの様になろうとも、
「お母様、僕は戦爭に行きます」
と斷言する。
すると、ソフィアはレインを更に抱き締めて、
「駄目よレイン。貴方を行かせられないわ」
と引き留めようとする。
レインもソフィアを抱き締め返し、
「お父様のスキルは僕も知っています。ですがお父様では最強の個に対抗できません。だから、僕が行く必要があるのです。
お父様にもし何かあれば僕は一生悔やみ、やりきれない思いで一杯になってしまうでしょう。
だから行くのです。大切な家族を守る為に」
そう決意を話す。
するとソフィアはハッとした表になり、そしてすぐ悲しい顔を更に歪めてしまう。そして、
「そう…」
とだけ呟き、そのすぐ後、
「し、考えさせてちょうだい」
と言って自分の部屋の方向に虛ろな足取りで帰っていった。
俺は手をばし、そして、
「あっ……」
とけない聲しか出せずばした手を下ろしてしまう。
大丈夫ですか。
その言葉が口から出てこなかった。
ただでさえお母様には迷を、いや、心配をかけてばっかりだ。
お母様に対する申し訳ない気持ち。
それでもやっぱり行かなければならない決意に似た何か。
そして事あるごとに爭い事を持ち込んでくるこの狀況に対するぶつけようのない怒り。
そんな複雑な気持ちが俺の心に渦巻いていた。
そんな俺の心を知ってか知らずかローゼさんが、
「レイン君、ごめんなさい……」
と頭を下げて謝ってきた。
「ローゼさん、謝らないでください。むしろ謝していますよ。
もしこのまま何も知らずにお父様が戦爭に行って、もし何かあれば僕は悔やんでも悔やみきれなかったでしょうから」
とめる。
ローゼさんが頼もうが頼まないがお父様が戦爭に行く時點で俺が行く事は決定しているのだ。
この戦爭が始まった時に俺自がそう決めたのだ。
「それでも、私は私に都合のいい事を言った。ソフィーちゃんは何も間違ってない。
親が子を戦爭に行かせたくないのは當然。
10歳にも満たないレイン君を戦爭に引っ張りだそうとしている私の方が明らかに間違っている。
本當に、ごめんなさい」
と再度今度は更に深く頭を下げて謝ってきた。
「いえ、それは本當に構いませんよ。
あ、そういえば、お母様は何故あのタイミングでお話を止めたのでしょうか?正直、もうし話し合いが続くと予想していたのですが……」
いつまでも頭を下げ続けるので、話を変えてみた。
すると、ローゼは頭を上げ、
「レイン君はロンドのお父様がどうだったか知ってる?」
ローゼさんの切り出しは本當に唐突だ。
だがもう慣れたので、慌てず、
「はい。もちろん。攻め込まれていたリュミオンに將軍として參戦、その後そこで戦死してしまわれたとお聞きしております」
と答える。
「そう。
だけど一つそれには問題があった」
「問題、ですか?」
と俺が聞くとローゼさんはコクリと頷き、
「ロンドは自分の父が戦爭に參戦していた事を知らなかった」
そう告げた。
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